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2014年5月19日 (月)

景表法への課徴金導入と企業の内部統制の整備・運用

昨年のメニュー偽装事件を受けた景表法(不当景品類及び不当表示防止法)等の改正法律案は、現在国会で審理中であり、まもなく改正法が成立する見込みです。消費者の生命、身体、財産の安全を確保するため、そこでは行政(監視体制の権限強化)、消費者(消費者基本法改正により、自己防衛のための商品表示に関するリテラシーを向上させ、自己防衛が困難な者については、情報の非対称性をできるだけ解消する)そして企業(内部統制システムの構築)それぞれに課題が与えられました。

そして、もっとも注目すべき景表法への課徴金制度導入については、とりあえず1年間、検討期間を設けることになっていましたが、消費者委員会(内閣府)における課徴金導入に関する議論が、いま急ピッチで進められています。中間とりまとめ案(「景品表示法上の課徴金制度の導入等の違反行為に対する措置の在り方」に関する中間整理)も4月に公表されており、その後の議論などを議事録等で拝見しておりますと、今後ますます企業の商品やサービスの表示に関する管理体制の構築が、極めて重要になることが窺えるところです。

まだ確定的ではないので、以下はあくまでも今後の景表法への課徴金制度導入の予想からの個人的意見にすぎませんが、景表法違反(有利誤認表示、優良誤認表示など、ただし不実証広告規制に関する表示ついては検討中)によって課徴金処分が発令される主観的要件として、「企業の故意または過失」が求められるようですが、議論の方向性として、この「故意または過失」の立証責任が、企業側に転換される可能性があります。これは企業側にとって極めて重要なポイントでして、もし主観的要件について立証責任が転換される、ということになりますと、企業側が適正な表示に関する管理体制の運用において問題がなかったことを合理的に説明することが求められることになります。

また、これも確定したものではありませんが、企業が被害者に対して任意に返金したことを課徴金制度において考慮する(課徴金算定金額から差し引く)という「自主返金制度」が検討されています。消費者側も、また一部の経済団体側も、この自主返金制度には、かなり歓迎ムードが漂っておりますので、この制度が実現する可能性もありそうですが、そうなりますと、景表法の基準に合わせて自主返金に関する社内ルールの制定などが必要になるはずです。ここまで企業の自律的な行動に配慮した事後規制はあまり聞いたことがありませんので、かなり期待をしております。

そして課徴金の減算・減免措置の導入です。いまの流れから行きますと、課徴金処分は、景表法上の排除措置命令と一連の手続きの中で判断されるそうですが、違法行為の抑止を目的とした行政制裁的な意味合いがありますので、平時における企業努力や、違法行為発見から再発防止まで、自浄能力が発揮されることで「違法行為の悪質性が低い」と判断されるのであれば、減算や減免の対象になることも考えられます(もちろん、今後の消費者庁の考え方など、いろいろと見解を聞いている必要はありますが)。課徴金制度が裁量行為ではなく、羈束行為を原則とするものであったとしても、こういった企業の努力が課徴金算定の判断基準に取り入れられるべきではないでしょうか。

なお、最後に申し上げますが、以上の見解は、課徴金処分が自律的行動に期待ができる「誠実な企業」にも適用されることを前提としています。弱者に迷惑をかけてでも収益獲得を図る「不届き者企業」のような悪質性の高い企業への事後規制手法として課徴金が適用される、という運用であればあてはまりません。そのあたりの、行政当局の運用に向けた方針がどうなるのか、今後の注目点かと思います。景表法は公益通報者保護法上の「通報対象事実」に該当しますし、都道府県の監督権限も強化されますので、今後は景表法違反事実への内部通報や内部告発も増えることは間違いありません。消費者行政と企業の内部統制システムの構築との関連性は、今後ますます強いものになりそうです。

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