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2014年6月 6日 (金)

上場会社に社外取締役(複数?)導入を迫る5本の矢

ひさしぶりの企業統治のお話ですが、ついこの間まで「社外取締役の義務付けの是非」といった議論がなされていましたが、最近のニュースなどを読んでいますと、もはや複数導入や活用論、独立性基準の開示、役員研修導入にまで話題が及んでいます。ひょっとすると、このまま取締役会制度の価値観が変わりそうな勢いですね。

最近の調査結果によると、東証1部の6割の会社が既に1名以上の社外取締役を選任済みということですが、まだまだ上場会社に対する社外取締役導入を迫る外圧は続きそうな気配です。上場会社が社外取締役導入に動かざるをえないのは、①会社法改正法案、②コーポレートガバナンスコードの策定(日本再興戦略)、③スチュワードシップコードの策定といったところへの対応だとは思うのですが、本日の日経新聞でも報じられているように、④海外機関投資家の直接要求というのもあるのですね(私は存じ上げませんでした。ちなみに、主要な大会社に対してのみ、ということですが)。社外取締役の複数導入等を進めなければ2017年以降、総会における取締役選任議案について反対票を投じるとのことです。

さて、ここまでのインセンティブは比較的わかりやすいのですが、私はもうひとつ、「5本目の矢」が存在するのでは・・・と推測します。それは、⑤もうすぐ打ち出される政府の「新成長戦略」に盛り込まれる「金融機関のガバナンス改革」です。緊急構造改革プログラムの一環として上場銀行、持株会社には1名以上の独立社外取締役を導入することが求められるようですが、これは単に金融機関のガバナンスを改革することが目的ではなく、金融機関の融資先企業のガバナンスチェックに力を入れるための基礎固めが本来の目的ではないかと。自分のところに社外取締役が存在しないのに、融資先のガバナンスチェックなど偉そうに言えない、ということでしょうか。

前にも当ブログで述べましたが、金融庁が直接監督できるところを活用して、直接手を突っ込めない上場会社のガバナンス改革に影響を及ぼすということの一環です。機関投資家、格付け会社、監査法人と並び、銀行等の金融機関にも(上場会社の)コーポレートガバナンス改革を促進する役割を期待する、ということではないでしょうか。

外国人の株式保有比率が高い企業を中心に、「せめて外見だけでも欧米並みに・・・」といった後ろ向きのアリバイ工作的発想で社外取締役導入論が語られていた時期もありましたが、もはや企業として社外取締役に何を期待しているのか、どう活用するのか、社外取締役はどういった形で自社に貢献しようとしているのか、といった実質論が語られる時代になりつつあります。旬刊商事法務5月合併号(2032号)に、社外取締役の人材紹介で有名なプロネッド社の酒井氏が「社外取締役の役割を踏まえた取締役会の運営実態に関する調査」という論稿を発表されていますが、ご一読をお勧めいたします。アンケート回答企業について、社外取締役が有効に機能した事例や、社外取締役が有効に機能するための工夫などが、かなり具体的に紹介されており、社外取締役を真剣に有効活用しようと悩んでいらっしゃる企業の姿が読み取れます。

「社外取締役を入れると企業不祥事を防止できるか」「社外取締役を入れると企業価値が向上するか」といった漠然とした抽象的な話ではなく、個別の会社の社外取締役さんは、どんな社内情報に関心を向けているのか、非業務執行役員間でどのようなコミュニケーションを図ろうとしているのか、ラインの方々へ「モノ申す」環境作りの工夫はどのようにしているか(たとえばスタッフや任意の委員会の活用等)、管理会計、制度会計上の数値をどのように活用しようと考えているのか、といったあたりが、その会社の社外取締役の「期待価値」になってくるのではないでしょうか。社外取締役としても、やっぱり「お飾り」ではなく、本気で会社に貢献したいですよね。あくまでも個人的な意見ですが。。。

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コメント

社外取締役の活動については、事業報告書に取締役会への出席状況や全般的な発言内容が記載されているだけで、具体的に個別の経営課題について、どのような見解を有しているかについては明らかではありません。
このような中で、社外取締役の役割について明確化している会社として、オムロンがあります。オムロンは監査役設置会社ですが、委員会設置会社と同様の委員会を設置しています。「当社は、取締役会の中に4つの諮問委員会を設置しており、透明性と客観性を高めるために全て社外取締役を委員長とし、会長および社長を除く4名で構成しております。」http://www.omron.co.jp/ir/keiei/pdfs/20140603_governance_j.pdf
但し、委員会設置会社の委員会と違い、諮問委員会に留まらざろう得ないことが、監査役設置会社についての会社法の課題ではないでしょうか。取締役会の権限を一部委員会に委譲、どのような委員会を設置するかについては、会社の課題に応じて任意に設計出来るようにし、その委員会においては社外取締役が主導的役割を果たせるような機関設計が可能となれば、社外取締役の役割が明確となり、ガバナンスについての投資家の判断に資することが出来ると思われます。

投稿: 迷える会計士 | 2014年6月 8日 (日) 16時23分

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