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2014年6月 9日 (月)

第三者委員会報告書格付け委員会は、会社も格付けしている?

企業不祥事が発生(発覚)した際に、独立公正な委員によって構成される第三者委員会が設置され、事実調査、原因究明、再発防止策の提言といった役割を、不祥事企業が同委員会に委ねる実務慣行が定着しています。しかし「独立公正」といっても、どうも報告書の内容は会社寄りであり、到底「第三者」によるものとは言えないようなものも散見されます(ちょっと控えめな表現ですが・・・)。そういった中で、第三者委員会報告書の信用性が揺らいできているのではないか、とのことで、このたび有志の方々による「第三者委員会報告書格付け委員会」が設立され、第1弾として、みずほ銀行の(反社会的勢力癒着問題に関する)特別委員会報告書(公表版)が審査対象となりました。

この「みずほ銀行の特別調査委員会報告書」への格付け委員会委員の皆様の評価がとても厳しいこと(合格ラインギリギリというもの)が、一部の話題になっています。こういった格付け委員会自体への批判的意見や、委員会の運営に対する批判など、(もちろん賛同意見もありますが)そういった意見を拝聴していて、やや格付け委員会が誤解されているところもあるのではないかと思いましたので、(格付け委員会とは何の関係もない立場で)若干コメントさせていただきます。

まず、なによりも、この報告書格付け委員会が発足したのは、委員有志の方々の積極的な意思からではなく、ずいぶんと前から、一部のステークホルダーより、「第三者委員会の報告内容はあまりにも玉石混交である。日弁連で格付けできないか?」といった意見が強く出されていた、という経緯によるもの、と思われます(これは、私も以前から、そのような声が強くなっていることは承知していました。だからこそ大阪弁護士会では、日本公認会計士協会近畿会と合同で「独立第三者委員会委員の推薦名簿登録制度」を発足させました-残念ながらあまり機能していませんが・・・)。こういった要請に対して、(当時)この格付け委員会の委員でもある方は、「ご指摘はもっともだが、弁護士が弁護士を評価するというのは難しい・・・、ましてや弁護士会がそのような評価機関を作るというのは困難・・・」といった意見があったことも事実です。

ただ、第三者委員会制度が(任意の機関であるとはいえ)世間的に認知されるに従い、「日弁連作成の第三者委員会ガイドラインに準拠している」と報告書の中で宣言しつつも、その準拠性に首をかしげたくなるような報告書が目立つようになり、このような報告書が、第三者委員会制度自体の信用を低下させるのではないか、といった危惧感を生むようになりました。このような背景から、今回の格付け委員会が発足した、というのが現実ではないかと認識しています(したがいまして、たしかに格付け委員会の委員の方々の顔ぶれは、タレント揃いと言えそうですが、第三者委員会制度への危機感から発足されたというものであり、決して売名行為や人気とり、世間的な話題提供のための委員会ではありません)。

さらに誤解が多いのは「他人が作成した報告書を評価できるほどの能力があるのか、そもそも格付けできるほどの客観的な評価基準はあるのか、自分たちが委員になった報告書を他人に評価してもらってはどうか」といった意見も聞かれるところです。たしかに委員会報告書の巧拙を、この格付け委員会が評価するのであればこのような意見が当たっているかもしれません。しかし、この委員会は「日弁連ガイドラインへの準拠性」を問題にしており、報告内容の巧拙は問題にされていないようです(もし、報告書の巧拙を問題とするのであれば、たとえば監査に携わる監査法人の会計実務家にも委員として加わってもらうはずです)。したがって、まずこの格付け委員会を批判するのであれば、現行の日弁連「企業不祥事発生時における第三者委員会ガイドライン」の内容を十分理解したうえで、ガイドライン自体が第三者委員会の信用性確保のためのベストプラクティスとして適切ではないことの批判を加えること、又は、ベストプラクティスであることを認めるとしても、その「準拠性」とはどういったものであるのか、持論を展開し、そのうえで個別の委員の意見を批判することが筋ではないかと思います。

ちなみに、「本報告書は日弁連のガイドラインに準拠しているものではない、なぜなら・・」として、日弁連ガイドラインに準拠しない合理的な理由を説明しながらも、その報告書の内容は、ステークホルダーにとっても非常に満足のいく第三者委員会報告書も(ときどき)公表されているわけでして、この格付け委員会も、かならずしも日弁連ガイドラインに準拠しているものだけが素晴らしい報告書というわけではない、ということを認めておられるようです。要は、第三者委員会報告書といいつつ、本当に公正独立な立場が堅持され、報告書の信用性が担保されているのかどうか、そこが格付け委員会の最大の関心事ではないかと思われます。

たしかに格付け委員会が「素晴らしい」と評価をする第三者委員会報告書が、今後も登場することへの期待感はあります。ただ、どんなに素晴らしい委員会報告書を書こうとしても、最終的に、その委員会を設置するのは会社側の経営判断です。自分たちに厳しい意見が出されることが予想されれば、もっとユルい報告書を書きそうな委員候補者を探すことになるかもしれません(いわゆるオピニオンショッピング)。そのようなユルい委員会の報告書によって、企業としては、一時の逆風がやむのを待てばよい・・・という考え方もあるかもしれません。つまり、私個人の考えとしては、厳しい意見を書かれそうなメンバーに、あえて第三者委員会設置を依頼したのか、あるいは一時の逆風をしのぐためだけに、(信用性が十分に担保されていないような)ユルい報告書の作成を第三者に依頼したのか、そのあたりを広く議論することが、この格付け委員会の主たる目的ではないかと思います。所詮、第三者委員会制度はソフトローの世界ですから、その評価はステークホルダーに委ねられます。ただ、委員会報告書の影響力を考えた場合に、これを活用するステークホルダーの方々に有益な前提知識を持っていただくための取り組みは、ソフトローである以上は当然に誰かが行わなければならない、ということだと思います。

6月 9, 2014 独立第三者委員会 |

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コメント

格付け委員会を格付けする機関を設けないと、やがて取り込まれてしまうでしょう。弁護士の中でも権威のある先生や、大学教授が委員に入っていますが、言っちゃ悪いけど、いかにも馴れ合いが生じそうな面々です。

こういう格付け機関を弁護士が作ってもうまくいかないでしょう。第三者委員会が弁護士で、お仲間を非難するようなことはもともと難しい。将来的には、特定弁護士で村を作り、弁護士同士でお互いに褒めあうような気持ち悪い組織になると断言できます。村に入れない弁護士を排除する仕組みとしては有効に働くかもしれませんが、それでは単なる権力闘争ですよね・・・

市民や投資家が勝手連的に格付けを行うとすれば、多少は意味のある格付けになるかもしれません。

投稿: 名無し | 2014年6月10日 (火) 01時51分

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