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2014年7月10日 (木)

株主総会開催15分前に議案を一部撤回した上場会社

昨日(7月8日)は、日本公認会計士協会近畿会の主催行事「公認会計士の日 記念講演会」ということで、近畿会本部におきまして講演をさせていただきました。昨日の東京会主催のほうでは小泉純一郎元首相が講演をされていましたので、ずいぶんと格が違いますが(すいません・・・・)、おかげさまで満席の中で講演をさせていただきました。関係者の皆様には懇親会までたいへんお世話になりまして、厚く御礼申し上げます。

さて、(昨日の講演テーマとは全く関係ございませんが)今年も3月決算の上場会社の株主総会シーズンが終了しました。いろいろなところで総会の話題が総括されておりますが、大要としては株主との対話がさらに進んでいることが窺われました。社外取締役の導入企業が74%にまで及び(東証1部上場会社の場合)、買収防衛策の継続議案が否決された企業が現れ、さらに①独立性に問題がある、②役員会への出席率が低いといった理由から社外役員への極めて多くの反対票が投入された事例が目立っていました。ちなみに代表取締役や当該社外取締役が改選期にない会社の場合、新任の社内取締役さんの選任議案に批判票が投じられるケースもあるようで(たとえば2名の新任取締役候補がいらっしゃる場合には、どちらかの取締役さんに反対票が投じられるとか・・・・これはISSやグラスルイスの方針なのでしょうか?)、えらい「とばっちり」を食らった新任取締役さんもいらっしゃったようです。

総会ネタの中で世間の(というかマニアックな方々の?)注目を集めたのは、やはりソーシャルエコロジープロジェクトさんの総会のようですね。本日(7月9日)の日本証券新聞では、伊藤歩さんが「特報!上場会社で取締役がいない状態」と題して、ソーエコさんの特集記事を書かれており、たいへん面白い内容なので、そちらをお読みいただければ・・・と(相変わらず伊藤さんはよく勉強されていて、頭が下がります)。

そのような中で、私個人としては、今年の株主総会の特筆すべき事例として、セイノーホールディングスさんの6月26日付け「定款一部撤回のお知らせ」を挙げたいと思います。今後、タイムリーに無議決権優先株式を発行できるよう「定款の一部変更に関する議案」を上程していたところ、株主からの反対により、総会当日の直前(9時45分)に定款の一部撤回に関する議案を撤回したことが報じられています。もちろん特別決議を要する議案であり、可決されるハードルは高いわけですが、株主総会の当日に(しかも総会の直前に)臨時取締役会を開催して、議案の撤回を決議する(そして適時開示としてリリースを行う)というのは、おそらく総会担当者にしてみればたいへん神経を使う出来事だったと想像します。

無議決権優先種類株式の発行といいますと、2008年にソフトバンク社が種類株式発行に係る定款の一部変更議案を上程したのですが、こちらも総会の直前に議案を撤回しています。やはり現実的に議決権の価値が高いものと認識されていること、市場における流動性が極めて限られていること等から、この優先的種類株式を発行するための準備行為(定款変更)には合理的理由を見出すことはむずかしいということでしょうか。サイバーダイン社のように、新規上場の際に発行したケースはありますが、流通市場では(普通株式の株価への影響などから)賛同を得にくい、ということかと。

セイノーホールディングス社の場合、買収防衛策の継続についての承認は3分の2以上の株主からの承認(64.6%前日集計分)をスレスレのところで得られなかったので、想像するに、本定款一部変更議案にみる、無議決権株式の発行に関する株主の意思については、当日の朝まで賛否が判明しなかったのかもしれません。様々なエクイティの手法を駆使して資金調達を図りたいとの真摯なお気持ちで議案を上程されたものと思いますが、現在の日本の証券市場はまだまだ種類株式には厳しい姿勢のようです。

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