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2014年7月14日 (月)

もうひとつの不正競争防止法違反事件の立件-日本交通技術社事件

不正競争防止法に関する最新の話題といえば、もちろんベネッセコーポレーション社による顧客名簿情報漏えい事件ですね。刑事捜査が進行していますので、この後の展開が注目されるところです。ところでもうひとつ、不正競争防止法に関する重要な事例として日本交通技術社の外国公務員贈賄事件(不正競争防止法18条)の立件が挙げられます。政府のODA事業を受注する見返りにベトナム等の政府要員に不正にリベートを支払ったとされる事件です。私はどちらかといいますと、こちらの事件のほうに関心を抱いています。

7月10日、建設技術コンサルタント会社である日本交通技術社の前経営トップをはじめ、3名の幹部が東京地検によって(外国公務員贈賄の公訴事実によって)起訴されました。経営トップが外国の政府要員に対して不正な利益を供与した、と認定された内容は、以前当ブログでも紹介しました同社第三者委員会報告書を丹念にお読みいただくと、おおよそ判明いたします。「いまどき、こんな不正をやっている会社もあるのか」と驚かれる方も多いかもしれませんが、同報告書に付記されている社員アンケート調査結果などを読みますと、海外進出企業であれば、どこも同様のリスクを抱えていることがわかります。また、ファシリテーション・ペイメントに関する日本企業の理解を促進させるべきである、といったことも同報告書で提言されています。

ところで、この日本交通技術社事例が注目すべき点は、OECDや国連が、日本政府の不正競争防止法18条による摘発が少なすぎることへ不満を抱いていることです。2011年のOECD対日審査でも、当該改正法が施行されてから、わずか2件しか有罪確定事件が存在しないこと(九電工事件とPCI事件)が「重大な懸念」とされています。また昨年11月の国連腐敗防止条約締結国会議でも、日本政府の摘発への怠慢として厳しく質問が出ています。とりわけ(OECD対日審査では)日本における公益通報者保護制度が全く機能していないのではないか?との疑念が出され、今後の同法制度の改正への期待が寄せられているところです。

そのような状況の中で、(もちろん有罪が確定すれば、ということですが)3例目の立件が、この日本交通技術社の事例ということでして、とりわけ経営トップ(だった方)が起訴されることは大きな衝撃です。しかし、極めて摘発数が少ないことには変わりありません。OECDの条約発効後から2010年12月までに各国がOECDに報告した外国公務員贈賄罪による処罰者の人数は、アメリカ48人、ドイツ30人、ハンガリー27人、イタリア21人、韓国13人・・・とのことですから、いくら日本企業の海外ビジネスに対する姿勢が清廉だとしても、今後も海外からプレッシャーをかけられることは間違いないと思います。つまり、今後も日本交通技術社事件と同様、不正競争防止法の適用される事例が増えることが予想されるところです。

今回は国税調査が発端となって地検の捜査に至りましたが、今後は海外の現地法違反によって政府要員が贈賄罪で摘発され、その裏返しで日本企業の摘発が開始される場面が増えるものと考えられます。外国公務員への不正な利益供与を防止するための内部統制システムの構築等、ここでもコンプライアンスプログラムの実施が強く求められるところです。

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