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2014年7月16日 (水)

オムロン社画像情報無断使用事件における同社の説明責任

オムロンさんといえば、関西でも(日本でも?)有数のコンプライアンス経営推進に熱心な会社です。私のような者の講演にも、同社の関係者の方が頻繁にいらっしゃいます。CSR経営推進の会合等でも主幹事(?)的な役割を果たしておられるように記憶しています。そういったことから、同社子会社の不祥事を伝える7月12日の朝日新聞朝刊トップ記事には驚きました。同社子会社が、施設管理者の許可なく人物画像情報を無断で利用し、また商業施設において、人物画像情報処理システムの開発のために、無断で撮影を繰り返し、これを利用していたと報じられました。親会社であるオムロン社は12日付けで、この問題についてHP上で事実関係を説明し謝罪をされています(同文章はこちらです)。個人情報保護法違反という「法令違反」に該当するものではありませんが、いわゆる「不適切な画像情報処理」として、ここ数年問題になっているところです。

不審人物を割り出すためのセンサー開発、ということで、その社会的意義が高い研究だったようですが、総務省の外郭団体から2億5000万円を受領していたということで、やはり不祥事としては決して小さな事件ではないと思います。画像情報の無断撮影等の事実を確認し、この点について謝罪をされることは理解できるのですが、私としては本当に説明責任を果たすべき点は別にあるのではないか、という気がしています。

というのも、本件の発覚は朝日新聞のスクープ記事です。他の全国紙やニュースが、オムロンさんの事件を後追いするまで、かなりの時間を要しました。こういったニュースの出方をみますと、おそらくオムロンさん(もしくは同子会社)の社員による内部告発(マスコミへの第三者提供)が行われた可能性があります。オムロンさんは当初、朝日記者による取材に対して、無断画像情報使用の事実関係を否定されていました。しかしその後、どのような理由かはわかりませんが、一転して事実関係を認め、さらに時間が経過した後に、商業施設における無断撮影の事実も明らかにされました(たとえば、こちらの朝日新聞有料版ニュースの記事をご参照ください)。こういったケースでは、告発者の手元資料の存在が明らかになるにつれて、事実関係を認めざるを得ない状況に至ってしまったのではないか、との推測が働きます。

普段から、コンプライアンス経営に真摯に向き合っておられるオムロンさんの件なので、この事件がこれ以上大きく報じられることはないと思いますが、普通の企業であれば、これはツッコミどころ満載の「二次不祥事」として大いにマスコミに取り上げられる事態になるものと思います。不特定多数の人たちを、研究のために無断撮影して活用した、ということも不祥事ですが(一次不祥事)、むしろ、外部から指摘を受けて、これを否定し、その後更に追及されて一転して事実関係を認める・・・という経緯は、組織ぐるみで不祥事を隠ぺいしようとしたのではないか、と疑われてもやむをえない「二次不祥事」だと思います。もし自浄能力を発揮して、徹底した社内調査によって不祥事を発見した、ということであれば、約1カ月半もの間、新聞社から指摘を受けた事実をなぜ否定し、そして認めるに至ったのか、自らのHPにて明確に説明すべきかと。

こういったケースで、もっともおそろしいのが「取材を受けたけど、この程度のことで公表するに値するのか?」といった感覚です。いわゆる「社内と社外の温度差」というものです。わざと隠した・・・ということであれば再発防止は容易ですが、この程度で問題になるのか?といった感覚は、正直申し上げて再発防止には相当程度の組織体質の変革が求められます。

人は有事になると、平時では考えられないほど思考停止に陥ります。社内の暗黙知(社内力学)によって、意思決定できる人の方しかみえなくなり、その最終決定者が自分たちに好ましい判断を下してくれれば誰も文句は言いません。今回のオムロンさんの例がこれに該当するかどうかは不明ですが、同様のことは他社でもよく起こるところであり、まさに「コンプライアンス経営はむずかしい」といえます。有事に至った企業として、果たして社内と社外の温度差をどう埋めるのか、また埋めることができる人が存在するのか、そのあたりの問題解決の姿勢に、一次不祥事で止めることができ、不祥事企業と言われずに済む企業かどうかの境界があるように思われます。

7月 16, 2014 コンプライアンス経営はむずかしい |

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コメント

文意が取り辛いので確認をさせていただきたいのですが、

>普段から、コンプライアンス経営に真摯に向き合っておられるオムロンさんの件なので、
>この事件がこれ以上大きく報じられることはないと思いますが、
⇒「が」は逆接の意味でご使用になっておられて
>普通の企業であれば、
>これは立派な「二次不祥事」です。
と繋がると、
オムロン社は、普通の企業ではなくコンプライアンス経営に真摯であるので、
この理由により、
今回の件は二次不祥事ではない(若しくは二次不祥事であるとしてもたいしたものではない)とのことでしょうか。

投稿: 博多ぽんこつラーメン | 2014年7月16日 (水) 21時28分

文章が不明瞭な点、ご指摘ありがとうございます。ご指摘を踏まえまして、エントリーを修正いたしました。

投稿: toshi | 2014年7月18日 (金) 00時30分

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