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2014年8月25日 (月)

弁護士秘匿特権という経済インフラ

8月23日の日経朝刊「大機小機」に「秘匿特権という経済インフラ」なる記事が掲載されています。弁護士とのやりとりが情報開示の対象から除外されるという制度が、企業と弁護士とのコミュニケーションを深化させ、遵法経営義務を果たすことが可能となるばかりか、とるべきリスクの評価も明確になるため、積極的なスピード経営の推進にも役立つとされています。

弁護士秘匿特権は、米国法にもEU法にも類似の制度がありますが、日本では明確に規定されていません。独禁法違反規制などにおいて、当局による国際協調が強まるなか、秘匿特権が認められていない日本は非常に不利な状況に置かれるため、「経済インフラ」として国際水準に合わせていくべきだと主張されています。

私も同意見なのですが、そもそも弁護士秘匿特権が認められる場合と認められない場合とでは、たとえば独禁法違反事件の容疑を受けた場合にどの程度の差が生じるのか(どの程度の不利益が発生するのか)、わかりやすい事例が示されなければ理解が進まないのではないかと考えています。

ここからは広告になってしまいますが、もうすぐ「国際カルテルが会社を滅ぼす」(主題)という本を同文館出版から出します(国際カルテル事件の最先端で、海外の規制当局と、日々闘っておられるベーカー&マッケンジー法律事務所の井上朗弁護士らとの共著です)。その本の中でも、日本企業が弁護士秘匿特権(及びWork Product)を活用できた場合と、そうでない場合との比較、米国法上とEU法上での秘匿特権の範囲等についても言及し、秘匿特権がいかに企業にとって不可欠な道具であるかを解説しています。

大機小機では、日本国内における法整備の問題(インフラ)として秘匿特権を捉えていますが、まずは国際カルテル事件や民事訴訟のディスカバり手続きにおける「秘匿特権リスク」を日本企業が知ることが大切かと思います。上記の本は、9月ころに発売される見込みですので、また近日中に本書の「はしがき」とともに、正式にご紹介したいと思います。

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コメント

 実際に戦っている方々の感覚として弁護士特権が経済インフラであるとの主張は理解できるのですが、英米(特に米)に特殊な、しかも客観的に考えるとあまり適切ではない使い方がグローバル・スタンダードになってしまっているとの印象が拭えません。なぜ、弁護士だけがそのような特権を持っているのか、日本国内だけの感覚からすると理解しがたいところがあります。論点が少しずれるかもしれませんが、弁護士法23条の2の照会にしても、照会により何でも開示させろと主張される一方、それで得た情報が他に洩れた場合、特に弁護士の依頼者から洩れた場合、弁護士も弁護士会も責任はもてないと主張しているようです。そんな人々に、強い特権を与えてよいのでしょうか? 逆説的な主張ですかね?

投稿: marudome | 2014年8月30日 (土) 23時58分

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