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2014年8月20日 (水)

不正行為ガイドライン・世の中の紛争を回避する「重過失」の魅力-その2

STAP細胞騒動が激化した4月3日、当ブログで「STAP細胞-世の中の紛争を回避する『重過失』の魅力」と題するエントリーを書きました。文科省や理研の不正行為ガイドラインに「重過失」の文言がなぜ加えられていないのだろうか、「重過失」概念が明記されていれば、このような紛争をもっとソフトに終わらせることができるのに・・・と(感想を)述べました(4月3日のエントリーはこちらです)。

ところで、8月14日に読売新聞が報じたところですが、STAP細胞の論文問題など相次ぐ研究不正を受けて、「日本学術会議」(会長=大西隆・東京大名誉教授)は、不正行為の具体例や発覚時の対応方法について、初の統一基準を作ることを決めたそうです。基準には、論文の盗用や画像の切り貼りなどを不正の具体例として挙げ、故意でなくても「研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務」を怠った場合は、不正と判断するとのこと(読売新聞ニュースはこちらです)。文科省HPにおける議事録要旨にも、不正行為ガイドラインに「重過失」概念を採り入れるべき、と明記されています。

私のブログをお読みになったから・・・では(もちろん)ないと思いますが、不正行為の認定にあたり、当然「重過失」概念を導入すべきだと思います。たしかに「限りなくクロに近いグレー」と断定される方は不満が残るかもしれませんが、とりあえず早期に紛争を収束させるメリットは組織にも研究者にもあります。ましてや先端技術のように専門的分野における「クロかシロか」という問題は、事実認定や法律解釈だけではっきりするものではないと思います。いわばクロかシロかはっきりさせることができない(もしくははっきりさせるのにたいへんな時間を要する)という場合には、「重過失認定」でとりあえず決着をつける・・・という手法はとても魅力的ではないでしょうか。

ちなみに8月中旬に出版されました商事法務「会社法コンメンタール機関(3)」では、会社法429条1項(役員等の損害賠償責任)の解説として「悪意・重過失」の解説がなされています(吉原和志東北大教授によるご解説)。取締役の第三者責任を論ずるにあたり、結局のところは個別具体的な事案ごとに重過失の有無を検討しなければならないのですが、最近の民法学における過失責任主義の考え方の変遷に伴い、会社法429条1項の悪意・重過失の理論上の意味を再考する価値はありそうだ・・・と述べらています。実務家としても、なかなか興味深いところです。

※ 本文とは全然関係ありませんが、この「会社法コンメンタール機関(3)」に私の論文が初めて引用され、名前が登載されました(*^^)v

「重過失」がなかったということを、取締役のほうが積極的に立証(反論?)しなければならないとすると、結構むずかしい局面が考えられます。過失よりも悪質性の高いものが重過失という考え方から出発すると、取締役に有利に働きそうですが、「悪意に準じるものが重過失」というアプローチからすると、けっこう取締役に不利な場面も想定されそうです。いずれにしても、あまり学術的にも研究がされてこなかった「重過失」概念は、上記不正行為ガイドライン策定の場面のように、実務的には魅力的な活用が考えられますので、さらに研究課題とすべきではないかと考えています。

以前、取締役はどのような場面でどのような行動をとると重過失ありと認定されるか、ということを「企業不祥事」から学ぶ役員セミナーを募集させていただいたところ、おかげさまであっという間に限定5社のご応募をいただき、すべて対応させていただきました。好評でしたので、(テーマは同じものですが)また秋から冬にでも、あと5社程度ですがやらせていただこうかと思っていますので、また9月下旬ころに募集させていただきます。<m(__)m>

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