ついに出た!消費者庁・課徴金制度の衝撃(景表法改正案)
本日(8月26日)、景表法の改正草案(パブコメ案)が出ましたね(内閣府消費者委員会へ提出 消費者庁課徴金検討委員会のリリースはこちらです)。昨年のカネボウ美白化粧品事件、一連のメニュー偽装事件の総決算、といった印象を持ちました。
商品やサービスの不当表示(不実証広告も原則として含む)について、売上の3%(売上集計は過去3年分)を課徴金として賦課するというもので、自主申告した場合には半額を減算、被害者返金や国民生活センターへの寄付で3%を超える場合には課徴金免除。ただし不当表示防止のために相当な注意を尽くしていた場合には(例外として)課徴金は課さないことがある、とのことです。軽微基準(課徴金算定額が150万円以下の場合は除外)もあります。
今般の消費者行政の集大成のような草案です。自主申告した場合には半額に減算、ということは、内部通報制度の運用に努力した企業、消費者の声に耳を傾けた企業に有利ということになります。また、主観的要素については企業側からの立証が求められていますので、要するに景表法7条に基づく内部統制システムをきちんと構築していたことを証明すれば免除される可能性がある、ということになります(コンプライアンス・プログラムですね)。
また目玉としての自主返金制度の新設があります。他の省庁による課徴金制度と違い、消費者庁管轄の課徴金制度は企業の自浄能力の発揮によって(かなり厳しい条件が付されていますが)課徴金処分を免除されることになります。かなり思い切った制度なので、今後様々な意見が各界から寄せられるものと推測されます。つまり、企業はうっかり不当表示をやってしまうことはあるけれども、自浄能力を発揮できた企業と、そうでない不誠実企業とが手続きにおいてはっきりと区別されることになりそうです(もちろん、行政の判断は不当、ということで「闘うコンプライアンス」を選択することもできます)。
この課徴金制度が企業規制の上で理屈が通っているかどうかはまだまだ検討しなければなりません。しかしながら、これで板東消費者庁長官が、今後は消費者教育の推進を徹底すると就任会見で述べておられたこととつながってきますが、それはまた別途詳細に解説したいと思います。当ブログで毎度申し上げておりますが、この行政手法は、今後他省庁による企業規制にも多用されることは間違いないと思います。企業は「誠実な企業」から「不誠実な企業」に色分けされないためにも、経営者主導で速やかに内部統制システムの構築を見直す必要がありそうです。
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コメント
課徴金は不当な利益の没収ですから、売上高の3%が不当な利益額に見合っているのかが問題となりますが、例えば食材偽装についてみると、不当な利益額≒表示通りの食材の材料費ー実際に使用した食材の材料費となりますから、これを売上高比に変換すると売上高材料費率×偽装割合となります。平均的な外食産業の売上高材料費率を20%と仮定すると、課徴金を売上高3%とすることは偽装割合は15%と想定していることとなります。実際の偽装割合は昨今の牛肉偽装では返金額からみると15%~30%、エビの偽装では40%程度ですから、売上高の3%を課徴金とすることは、想定される不当な利益額の下限となっていると言えます。
投稿: 迷える会計士 | 2014年8月30日 (土) 21時31分