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2014年9月22日 (月)

スチュワードシップ・コードの実践と機関投資家のリーガルリスク

日曜日(9月21日)の日経新聞朝刊の一面に、「投資先と対話へ指針-外資運用大手、成長後押し」という記事が掲載されていました。フェデリティ投信など、外資系資産運用大手が、投資先企業と積極的に対話をするための指針を、今後共同で作成するもので、年内にも「投資家フォーラム」を立ち上げるそうです。経産省が事務局を務め、東証も活動に協力するとのこと。

いわゆる日本版スチュワードシップ・コードの実効性を高めるために、各運用大手が対話の内容等で歩調を合わせることが狙いということなのでしょうね。したがって、指針の内容は、企業の中長期的な成長を後押しするためのものであり、単に株式配当を求めるようなものではない、と報じられています。企業側が作った経営計画を着実に実行するための体制作りなども促すということで、たとえば割高のM&Aなども含め、企業価値向上につながらないと判断すれば、共同で見解を示すことも検討されるようです。

先日、各保険会社も、スチュワードシップ・コードを実践し、コードに沿った対話方針等を各社打ち出していましたが、このようなコードを受け入れ、実践する機関投資家が増えるにしたがい、上場会社に対するガバナンス改革は、今後ますます議論が深化していくものと思います。ただ、機関投資家が株主との対話を積極的に行っていくにあたり、リーガルリスクも高まることが懸念されていました。会社法との関係では株主平等原則違反、利益供与禁止規定違反など、金商法との関係ではインサイダー取引規制違反(とくに平成25年改正における情報提供行為規制等)、大量保有報告規制違反(とくに報告免除の特例適用の可否)といったところと、「株主との対話」促進との関係です。

ただでさえ、運用機関にとっては「中長期的な成長」よりも「四半期ごとの成績」を重視して運用業績を残したいにもかかわらず、スチュワードシップ・コードを順守することによって、これまで以上にリーガルリスクを背負わされるわけにはいかない、というのがホンネのところかと。そこで、ソフトローを活用することによって、業界あげてリーガルリスクをできるだけ低減させることが必要です。上記記事にあるように、業界の指針を作って、そこに経産省や東証等、行政当局にも参加を求めて、「こういった運用であれば会社法違反や金商法違反に該当するおそれに乏しい」という原則ルールを自主的に策定しよう、という流れになるのは自然のように思います。「あくまでも、これはスチュワードシップ・コードの実践行動である」という外形的な行動規範が求められるということかと。

ところで新聞記事では、(運用大手は)割高なM&Aや巨額の資金調達などでは、企業に詳しい説明を求める方針、とあります。社長さんの報酬が比較的低額、また任期が比較的短期であり、内部留保の蓄積に熱心だとなると、日本企業は中長期投資には消極的だとみなされます。したがって、M&Aや多額の資金調達等、大型投資が行われるということは、機関投資家にとってはとても関心が高い問題です。たとえば中央経済社「企業会計」10月号特集記事では、中長期の成長戦略がとりやすい非上場のサントリーHD社の財務戦略について、同社財務担当執行役員の方に、グループ企業戦略のプロでいらっしゃる松田千恵子先生が詳しい質問をされていました。とりわけ1兆6000億という、かなり割高と思われるビーム社買収に関するサントリーHD社の中長期の財務戦略には、いろんな角度から質問が投げかけられています。仮に上場会社に対して中長期的の事業計画を実施するための多額の投資が行われるとしたら、おそらくこういったプロの目から見た質問がとんでくるのではないか・・・と、たいへん参考になりました。

「うちはグローバル展開していない中小上場会社だから、スチュワードシップ・コードなど関係ない」とおっしゃる経営者の方も多いかもしれません。ただ、8月に公表された「伊藤レポート」(経産省HPで公表、9月には追加版で「要旨」も公表されています)などを参考にすると、資産の有効活用による生産性向上のストーリー、売上高利益率をいかに上げるかといった戦略、(個々具体的なものではなく、方針としての)資本政策、内部留保問題などが、おそらく対話の中心になってくると予想される中、株主との対話が「短期利益を狙う投資家の排除」という意味ではもっとも有効な敵対的買収防衛策ではないでしょうか。そう考えますと、スチュワードシップ・コードの実践を機関投資家が明確に打ち出した現在、企業対応というものも、私は一部の大手上場会社だけでなく、中小規模の上場会社にもそれなりに検討しておくべき課題だと考えています。

9月 22, 2014 最良のコーポレート・ガバナンスとは? |

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