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2014年10月 6日 (月)

景表法改正(課徴金制度導入)をコンプライアンスから考える

現在会期中の臨時国会に景表法改正法案が提出される予定、と報じられています(たとえば朝日新聞ニュースはこちら)。商品やサービスの「不当表示」が認められる場合、事業者から、過去にさかのぼって売上の3%を課徴金処分としてはく奪する、というのが今回の改正の目玉です。不当表示を自主申告した場合の課徴金減額制度や自主返金制度(自主返金した場合には課徴金の金額を減額する制度)など、企業コンプライアンスの視点からも重要な制度が含まれているので、法案が成立した場合、企業側としても、その運用には多大な関心が向けられるものと思います。

ただ、その運用にあたり「コンプライアンス」の発想の違いから、企業に大きな影を落とすことが懸念されます。たとえば2週間ほど前、大阪の萬野畜産(事業者)が一般国産和牛を「飛騨牛」と偽装した事件が発生しました。関西の大手百貨店や通販会社は、この萬野畜産の商品をギフト商品として販売していたことから、購入者に謝罪の上、自主返金を行いました。もちろん、百貨店等が表示に関する決定権限を持っているわけではないので、自社が悪いことをしたわけではありません。したがって自主返金分は萬野畜産に求償しようとしたところ、萬野畜産は自己破産宣告の申し立てを行い、事実上、損失を小売業者や通販業者が負担せざるをえなくなりました。

おそらく、景表法が改正され、事業者に高額の課徴金が課されることになると、この萬野畜産と同様の事態が起きるのではないでしょうか。大手の小売業者、通販業者は、コンプライアンスを「社会からの要請に適切に対応すること」と考えていますので、事業者が行政当局から有利誤認、優良誤認といった「不当表示」を認定された場合には、消費者に対して何らかの対応をせざるをえないことになると思います(なお、小売業者が不当表示を行ったと解釈されるケースもありますので、詳しくは消費者庁のQ&A等でご確認ください)。牛肉偽装は詐欺罪に匹敵するような重大な商品偽装であるがゆえに対応したが、景表法違反の場合には何ら対応する必要はない・・・と割り切れればよいですが、おそらくそういった判断には至らない場合も多いと思われます。

一方、事業者にとって「課徴金処分」というのは、口頭での指導や排除措置命令とは異なり、事業継続上の死活問題にもなりかねません。だとすれば、コンプライアンスはあくまでも「法令遵守」として認識せざるをえないのであり、「売上の3%をはく奪されるくらいなら、不当表示ではないと最後まで争う」といったことも当然に考えられるところです。事業者の中には、いったん倒産手続きを活用して、課徴金や自主返金分の求償債務を免れて、再度別個の法人を設立して再開すればよい・・・と考えるところも当然に出てくるはずです。

課徴金制度に自主返金制度が新設される以上、「企業が景表法に違反すると消費者にお金が戻ってくる」といった感覚が、これから社会に根付く可能性があります。そうなりますと、小売業者、通販業者も、そのような社会一般の認識を無視できず、自社のレピュテーションリスクを考えざるをえないことになります。そこで、この「コンプライアンス」に関する認識の違いについて、小売業者、通販業者側はどう考えるのか、消費者への最終販売者として、全額返金は当たり前と考えるのでしょうか、それとも自分たちが不当表示をしたわけではないので、事業者の様子をみながら対応するのでしょうか、とくに個人情報保護法の関係から、販売業者にとって、販売履歴は保存期間終了後は消去せざるをえない場合もあり、明確な証拠なしにジャブジャブと返金をしていますと、株主に合理的な説明がつかない状況になってしまうおそれもあります。

「コンプライアンスとは、社会からの要請に適切にこたえることである」といった最近の認識を全面に出しますと、こういった事後規制的手法による行政対応が採用された場合に、企業が窮地に陥るケースもあるということを、あらかじめ理解しておいたほうがよろしいのではないかと。景表法における課徴金処分の運用は、誠実な企業だけでなく、不誠実な企業にも適用される「事後規制的手法」であることに注意が必要かと思います。

10月 6, 2014 コンプライアンス経営はむずかしい |

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