虚業-小池隆一氏が語る「企業の闇と政治の呪縛」
「こんな本、読んだら体に悪くないの?」とあきれられながらも、入院中に嫁さんに買ってきてもらい、夢中で読了した一冊です。弊職、最新の旬刊商事法務(10月1日、15日合併号)に「企業における反社会的勢力の疑惑解明に向けた内部統制の整備-近時の判例等を踏まえて-」と題する論稿を掲載いただきましたが、本書は(論稿でも触れている)企業の反社リスク管理を考える上でも参考になる話が満載です。
虚業 小池隆一が語る企業の闇と政治の呪縛(七尾和晃著 七つ森書館 1,700円税別)
拙ブログをお読みの方の中にはご記憶の方もいらっしゃると思いますが、小池隆一氏は1997年の商法違反(不正利益供与)事件で服役した「伝説の総会屋」であり、同事件では、第一勧銀、野村証券等、企業側で逮捕された者は32人にも及びました。本書は、小池氏と8年間にわたり交友してきた著者七尾和晃氏が、総会屋時代、そして総会屋から合法的なコンサルタントに転身した時代の小池氏の暗躍に焦点をあて、小池氏自身の言葉で「必要悪の数々」を語ってもらったところを綴ったものです。企業から必要とされて(バブル崩壊の後始末のために)総会屋として暗躍した前半部分もおもしろいのですが、合法的コンサルタントとして、これまで(表に出ずに)暗躍してきた後半部分の小池氏の活動のほうが私的には非常に興味深いと感じました。ここ数年の経済事件との関連で、企業名や政治家名も実名でたくさん出てきます。
上記論稿でも述べましたが、反社会的勢力との接触リスクについては、多くの本で「リスクの重大性」については周知されているところです。しかし「リスクの発生可能性(発生確率)」について語られた本はあまりありません。どうして企業は反社会的勢力とつながってしまうのか、そもそも反社会的勢力とつながってしまったことはどうすればわかるのか、という点です。我々は、どうしても頭の中で「反社会的勢力」とはこういったもの・・・という虚像を作ってしまいがちですが、本書を読み、その実像はもっと企業にとって「ありがたいもの」「役員、社員にとって個人的に身近なもの」そして語弊はありますが「親しみやすいもの」であることがわかります。
ここからは私の感想ですが、コンプライアンス経営が叫ばれる時代になればなるほど、反社会的勢力は「コンサルタント」の名を借りて暗躍するチャンスが増えるように思います。そういった実例が本書に登場します。また、小池氏は社会から「反社会的勢力」とレッテルを貼られてしまうわけですが、本書にはこの小池氏をうまく利用するフィクサーが前半、後半に一人ずつ登場します。このフィクサーの登場がまさにリアルであり、どこの企業も反社会的勢力と接触をもってしまう可能性があることを再認識させてくれます。さらに、東京オリンピック、ODA(政府開発援助)、地方分権が、今後の反社会的勢力を増幅させるきっかけ、そして御社と反社会的勢力とがつながる発生可能性を高めるきっかけになるのではないかと。
日本には国内外の政治家に圧力をかけるロビイスト、資金豊富なNPO団体が存在しないため、企業がグローバル競争に勝ち抜くためには、どうしても反社会的勢力の力を借りなければならない場面が出てくるのではないか。もちろん合法的なコンサルタントという仮面をかぶった反社会的勢力のことです。そこで足元をすくわれないために、企業は平時から何をすべきなのか・・・、役職員の個人的倫理観と社会のコンプライアンスの風潮が抵触する場面等を想定して、たとえ反社会的勢力とのつながりが生じてしまったとしても、最悪の状況だけは切り抜けられる企業の知恵を学ぶことが大切ではないでしょうか。(帯では佐高信氏も絶賛されていますが)不正リスク管理に関心の高い方々には自信をもってお勧めする一冊です。
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コメント
小池さんは、暴力団構成員といった筋モノの人ではないですね。
昔ながらの、刺青を入れて強面で・・・みたいなイメージの人はこの界隈には殆ど残ってないような・・・。安倍総理と極めて親しかった「永本壹柱」みたいなのは、最後の反社会的勢力だと思います。
不公正ファイナンス系統の人たちは、暴力団というよりはマルチ商法系統です。
誰が反社会的勢力かというレッテル張りでは、もう上手くいきません。反社会的勢力との関係を断ち切るという手法ではなく、一人一人が、何が企業として正しい行動なのかを考えるべきではないかなぁ。
投稿: 名無しさん | 2014年10月24日 (金) 16時40分