刑事訴訟法の改正は企業法務にどのような影響を及ぼすか?
来年の法改正の予定といえば、債権法改正に関する話題が法律雑誌等で特集記事となっていますが、刑事訴訟法改正についてはあまり話題になっていないように思います。基本法の改正が同一の国会で二本通ることは、過去にあまり例がないようで、もうすこし遅くなるのかもしれませんが、紆余曲折を重ねて9月18日に法制審議会「新時代の刑事司法制度要綱・特別部会答申」がリリースされており、この刑訴法改正に関する企業法務への影響はかなり大きいものと思われます(朝日「法と経済のジャーナル」で西村あさひ法律事務所の弁護士の方も「企業実務への影響は大きい」と述べておられますね)。
独禁法違反、金商法違反事件にも司法取引(捜査・公判協力型協議・合意制度)の適用がある、ということですし、今後は適用対象となる経済犯罪(財政経済関係犯罪)が法令によって規定されるので、不正リスク管理という面においては気になるところです。組織ぐるみの談合や贈収賄、脱税、有価証券報告書虚偽記載といった事例では、部下の方々が「上司の不正を供述すれば免責」となるわけですから、とりあえず経営トップの方の訴追リスクは高まることになるでしょうね。他企業の関係者の不正を供述することも免責の対象となりますので、同業他社の不正といえども油断は禁物ですね。
ただ、法人処罰が免責されるかどうか、という点は(今のところ)明らかにされていないので、内部統制という面ではもう少し検討の余地がありそうです。あと、重大な医療事故や航空機事故等、業務上過失致死傷事件の真相解明に、刑事免責制度がとのように適用されるのか…という点にも関心がありますが、これもあまり論じられていないようです。重大事故の真相解明のために、事故調査委員会が調査を行うわけですが、黙秘権の壁に阻まれて、なかなか真相が究明できないわけでして、こういった刑事免責制度をもって供述拒否権を取り除き、再発防止のための施策に役立てる、ということはとても大切なことだと思いますが、いかがなものでしょうか。
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