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2014年11月19日 (水)

経営者関与による不適切会計処理未遂は公表する必要があるか?

ごく一部のマニアックな方々の間ではすでに話題となっております東証マザーズ上場「みんなのウェディング」社の不適切会計処理問題ですが、実態を伴わない売上が(ブライダル部門の売上として)計上されていたことについて、同社社長の関与が社内調査委員会の調査で判明した、とリリースされています(リリースはこちらです)。社員の親族の披露宴が行われていないにもかかわらず、行われたようにして、その売上計上分については社長の私財から入金されていた、というもの。社長及び担当取締役らとしては、業績未達を少しでもよく見せようとの思いから及んだ行為だそうです。

会社側は、「投資家向けの財務報告では訂正済みなので、これは粉飾決算や会計不正事件ではない」と反論されていますが(反論のリリースはこちら)、売上が伸びているように財務報告を行うつもりだった、という意味においては不適切な会計処理が社内で行われたことは事実でしょうし、その責任をとって代表取締役社長さんは、今年12月25日に辞任されるそうです。ちなみに「12月25日」といえば、1年前の12月25日、不適切な会計処理事件で第三者委員会が設置された小売業のマツヤさんの件で、監査法人さんに内部告発文書が届いた日です。このマツヤさんの事件も、過大な売上計上分を経営者らが自腹で補てんしていたことが印象的でした。私財を投入してでも業績を良く見せたい・・・という経営者の気持ちを察すると、これらの事件はなんとも切ない気持になります。

この「みんなのウェディング」社のケースでは、監査法人さんが「不正の疑惑」を発見し、同社の監査役会に調査依頼、その後監査役3名と社外取締役1名(いずれも非業務執行役員)で構成される社内調査委員会が設立され、この委員会が代表取締役社長による「穴埋め」の事実を確定したようです。他の業務執行取締役や幹部社員等も関与していたそうなので、不適切会計処理を早期に発見するためには、やはり非業務執行役員の存在は大きい、と感じます。

さて、ここからは私の個人的な意見であるため、関係者の方々にご迷惑がかからないように配慮したいと思いますが、どうもこの事例については素朴な疑問が湧いてきます。会社側が反論しておられるように、財務報告には訂正済みの数字が記載されているのですから、決算訂正の必要もなく、したがって監査法人から適正意見がもらえなかった、というわけでもありません。だとすると、実際にも提携先の結婚式場からの広告料等は増えていて、同社の業績は好調のようですから、(やや不謹慎ながら)社内における不適切な会計処理の事実については公表せずに、そのまま何もなかったかのように振舞う・・・という選択肢はなかったのでしょうか?(いえ、決して「公表しなければよかったのに」といった意見を持っているわけではなく、可能性のひとつとして考えなかったのだろうか、といった感想でございます)

これは本当に私の単なる推測ですので、真実は全く異なるかもしれませんが、監査法人が実態を伴わない売上計上の疑惑を発見した、とありますが、(上記マツヤさんの事例のように)監査法人に内部告発が届いた、という可能性は考えられないでしょうか。社員が関与していた事例でもあり、また内部告発が存在した場合には、そのまま公表しないでいると第三者(たとえば行政当局や大株主)から指摘される事態に発展してしまいます。

つぎに非業務執行役員の方々が、「いくら才覚のある経営者であったとしても、このコンプライアンス経営の時代に、これは公表しないわけにはいかない」と進言して、最終的には社長辞任を求めた、という可能性も考えられます。こういった場合は、同社のガバナンスが効いて、今後の大きな会計不正リスクを早期に低減させた、ということになりそうです。いわば会計監査人と監査役との連携が奏功し、かつ非業務執行役員によるモニタリング機能が効いた典型例かと思います。まさに「ダスキン株主代表訴訟の教訓」が活かされた例といえそうです。

最後に、取締役全員の総意により、「社外役員から指摘されるまでもなく、この事例は不公表などありえない」との気持ちから公表したとなれば、これは同社の企業風土としては立派なものだと思います。まさに、経営母体であったDeNAの南場智子氏の経営精神を受け継いだものといっても良いのではないでしょうか(ただ、不適切会計処理に関与していた取締役さんがおられたので、どうも可能性としては低いように思えますが・・・・・)。

KPMG-FASさんが今月7日に公表しておられる「日本企業の不正に関する実態調査2014」によりますと、経営者が関与する会計不正事件の発覚要因については、内部統制よりも圧倒的に内部告発等の通報によるものが多いとされています。もちろん、不正リスク対応基準が施行され、監査法人さんの職業的懐疑心の保持、発揮がモノを言ったケースかもしれませんが、(本件をあえて公表した、という事実を考えますと)本件に内部告発はなかったのかどうか、そのあたりについて事実を知りたいところです。

11月 19, 2014 企業会計 |

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コメント

興味深く拝読いたしました。

個人的には逆の見方を持っていまして、修正したから未遂ではなく「やってしまった」ものがバレて、代表取締役が主導して行い退任を伴う責任を取る以上、理由を明らかにせず、例えば「一身上の都合」などはあり得ないかと思います。
社内調査委員会が設立された時点で相当な疑惑があるはずで、なぜその時点で適時開示しなかったのか、というのがむしろ疑問です。
監査法人がどのような端緒で今回の不正を発見したかの経緯は明らかではありませんが、監査法人へのタレこみの可能性が高いのではないか、と見ています。

また、全社的な内部統制、監査法人指摘による修正ですから業務処理統制が機能していたとは到底言えないはずなので、内部統制報告書が開示すべき重要な不備なしとはならないと思われるので、そこでも理由を開示しないわけにはいかないような気もします。

なるべく表沙汰にしたくないという心情は分かりますが、そうした場合に、事業を推進する代表取締役が上場1年目で退任してしまうので、リスク情報にも抵触しますし、社内調査委員会の社外役員や他の取締役の責任関係はどうなるのでしょうか。。表沙汰にしないままスルーされれば損害はないとも言えるかもしれませんが。

投稿: ASK | 2014年11月19日 (水) 01時24分

askさん、早々にありがとうございます。
こういった事例で、「開示すべきにもかかわらず、あえて開示しなかったために二次不祥事に陥った」という場面に遭遇したことがありましたので、あえて「なぜ不公表にしなかったのか」という問題提起をしてみました。
内部統制の「開示すべき重大な不備」の問題について、統制環境に重大な不備があると思うのですが、修正を伴わない本件において、会社側に「このままだと有効とはいえない」と対峙するのかどうか、そのあたりが微妙ではないかと思いました(もちろんホンネとタテマエがあると思いますが)。
たしかにもっと早く開示すべきではなかったか、という問題提起もありますが、はたして自浄能力を発揮した事案なのか、それとも「やむなく」公表に至ったのか、そのあたりがよくわからないのですよね。
経営者関与かどうかは別として、社内でこのような不適切会計処理事案が発生した場合に、どのような対応をとるべきか、研修の題材になるような例ではないでしょうか。

投稿: toshi | 2014年11月19日 (水) 01時43分

全く虚偽報告がなされたわけではなく、不正を手掛けたものがいても、その結果が社外に出ることなく(会計監査人に把握されたとしても、それは会社関係者といえるでしょう。)、むしろ適切に修正したうえで開示がなされていた(ずいぶんと仮定を重ねているので、意味のある議論だろうかという疑問もでますが、それはさておき。)としたら、このような開示で会社関係者が自己の保身を図る(敢えてキツクいいますが、やることやってましたってアピール以上の意味があるのでしょうか?)コストが、株価下落という経路で株主を直撃するのは、法律論の解釈以前に、根本的な価値観として疑問が残るところです。

投稿: 場末のコンプライアンス | 2014年11月19日 (水) 13時11分

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