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2015年1月30日 (金)

いよいよ監査等委員会設置会社に移行する上場会社が登場!

日経ニュースの記事を読むまで知りませんでしたが、1月28日、29日と相次いで監査等委員会設置会社に移行することを取締役会で決議した企業が出てきたのですね(すでに適時開示もなされています)。いずれも監査役会設置会社からの移行だと思いますが、「どこが移行第1号になるのか?」と私の周辺では話題になっておりました。

巷(ちまた)では私がネガティブキャンペーンを張っているものと噂されておりますが(笑)、いえいえ、ほんとに監査等委員会設置会社の趣旨を理解されたうえで「ガバナンス強化」を社長が決心されておられる会社であれば、素晴らしい決断だと思いますし、決して「やめたほうがいい」とは申し上げません。そもそもコーポレートガバナンスはもはや「仕組み」ではなく「運用」が評価される時代です。うまく運用されれば取締役会の権限の多くを執行者に委譲してスピード経営を実現し、企業価値向上に資する機関形態だと思います。

ただ、監査等委員である社外取締役(2名以上)の方々にとっては、これまで経験してこなかった未知の領域の職務が待っている・・・ということがなかなか興味深いところです。

Photo監査等委員である取締役さんは、これまでの監査役さんと同じような「監査職務」(正確には監査権行使への関与)、そして取締役なので、取締役会構成員としての「監督職務」、そしてもうひとつ「監査等職務」をこなすことになります。監査等委員である取締役さんは、直接株主総会から選任されますので、指名委員会等設置会社の監査委員の方々よりも独立性が強く、またかなり責任も異なります。この「監査等職務」というのが、まさに会社法改正のグレーゾーンでありまして、社長さん達の人事や報酬について監査等委員会には意見陳述権が付与されています(ほかにも利益相反取引に対する承諾権限など特有のものがありますが、取締役会構成員としての「承諾」とはどう区別して承諾権を行使するのか、いまだによくわかりません・・・)。この指名・報酬に関する意見陳述権というのが曲者(くせもの)でして、組織的権限行使なので各委員は意見陳述権行使に「関与」することになるわけですが「権利なのだから、別に意見がなければ何も言わなくてもいいのではないか?言わないことで責任を問われることはないのでは?」とも思えます。

しかし著名な会社法学者の先生方のご意見をみると、そんな生易しいものではないようです。たとえば東大のT先生は、監査等委員会の意見陳述権の法的性格として「条文上は「意見を述べることができる」とあるので(改正法361条6項)、必ず意見を述べなければならないというわけではない。しかし、条文上、意見決定は監査等委員会の「職務」と明記されているので(法399条の2、3項3号)、この「職務」を強く読めば義務のようにも思える」(旬刊商事法務2045号18頁)と述べておられます。

また法制審議会会社法制部会長のI先生も、「意見陳述権というのは、与えられた権限である以上、適切に行使する義務もある。意見がない、というのは本来ありえないはずであり、特に意見を述べないというのは、取締役が提案した人事・報酬議案について異論がないということ。株主総会で『そこはどう考えているのか』と株主から質問があれば、監査等委員はこれに対する説明義務がある。」と述べられ、同じシンポにおいて会社法改正に携わった法務省の方も「取締役会の議論において、監査等委員である社外取締役らが人事・報酬に関する協議の中心的役割を果たすことが期待されている、という点に大きな意味があります」と語っておられます(旬刊商事法務2040号22頁以下ご参照)。

こういったご意見、ご議論に触れるにつれ、私自身「監査等委員という職務はタダモノではないぞ・・・ぶるぶる」といった気持ちになってきましたので、この機関設計は社長さんだけでなく、監査等委員である取締役に就任する方々にも並々ならぬ決意が必要なのではないか、と考えるに至ったわけです。いえ、再度申し上げますが、その決意をもって機関移行を行うのであれば(もちろん法的には株主さんが決めることですが)、これはまさにガバナンス強化への熱意が伝わってくるものであり、機関投資家からも、また議決権行使助言会社からも好感度アップとなるのではないかと思います(たしかISSさんも推奨されていましたよね)。

そして、もし(仮にですよ!)、「監査等委員会設置会社って、社外役員が節約できる上、常勤が要らないとなれば経済メリット十分。そのうえ任期2年で役員の肩たたきもせずに人事に柔軟に対応できる。おまけに独任制と言う恐ろしい制度が廃され、コンプラおたくの原理主義者を排除できる。これに乗らない手はないよね!」と思って機関移行される社長さんがいらっしゃるとしたら、正直にそう開示してくださいね(笑)。ホンネで株主と建設的に語り合うことがまさにコーポレートガバナンス・コードのいう「株主との目的ある対話」なのですから。

 

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2015年1月29日 (木)

市場の番人・公益の番人論2015-その4 公益通報者

消費者庁が行っている公益通報者保護制度に関する意見聴取(ヒアリング)も全10回のうち8回目を終えました。いよいよ終盤です(3月末まで)。消費者庁の法制度アドバイザーとして、毎回板東長官はじめ消費者庁の皆様と一緒に有識者の方々へヒアリングをさせていただいています。著名な事件の内部告発者の方々からも、また企業や消費者団体、行政担当者、大学教授の方々からも有益なご意見を伺い、私自身も今後の立法政策、法理論の見地から考えをまとめる機会をいただいています。

さて、1月23日の各マスコミの報じるところでは、賃貸大手アパマンショップ系列会社の元契約社員の方が、同社に内部告発者探しの目的で郵便物を持ち去られたとして損害賠償を求めていた裁判で、福岡簡裁は「(郵便物の持ち去りは)内部告発に関する情報を得るためで、明らかに不法行為」と指摘し、同社に14万円の支払いを命じたそうです。同社が入居希望者に対して「事故物件」であることを事前説明をせずに物件を賃貸した、ということを、同契約社員が国交省に告発した、というものです。告発後、この元契約社員の方は契約期間満了で退職することになるのですが、会社側は「退職に伴い、社宅明渡しの意思表示はあったのだから住居への立ち入りは正当。郵便物も一時保管にすぎず判決には納得できない」とのこと(たとえば毎日新聞ニュースはこちらです)。なお、会社側が同契約社員に対して「郵便物の一時預り」であることを明示していたかどうかは報じられていません。

同契約社員が国交省へ内部告発をしたのが昨年4月、元契約社員が入居していたアパマン管理の社宅から、同社が同契約社員宛郵便物を持ち出したのが昨年5月、ということで、内部告発者探しであった可能性は否めません。もしくは内部で通じている社員の有無を同社が調べたかった可能性もあります(判決文で事実を確認していませんので、あくまでも可能性、ということです)。宅建業法は、公益通報者保護法において(法令違反が)通報の対象とされている445本の法律のひとつなので、国交省への通報が「外部通報」に該当する可能性があります。そうなると、会社側にとっては「決して不利益処分ではない」と主張していても、(告発への報復という意味での)不利益処分の対象者探し・・・と推定されることにもつながります(会社側が反証しなければなりません)。したがって、(外部通報の要件を満たせば)内部告発者は同法によって保護されることになり、この告発者に対する事実上の不利益処分は企業側の違法行為になることがあります。

私は企業のリスク管理を支援する立場なので、こういったケースをみると、アパマンショップさんの内部通報制度がしっかりしていれば、もっと早く自浄能力を発揮できたのではないか、まずなによりも内部通報制度の充実を優先させるべきである、と考えるのですが、「それは企業側からの理屈であり、いくら内部通報制度を充実させても、事実上の不利益処分のおそれは変わらない。よって内部通報と外部通報を同じ要件で法改正をして外部通報をした者を今以上に保護すべきである」との意見も有力に唱えられています。もちろん、そういった方向の法制度になれば、どんなに営業秘密の保護要件を厳格にしても「企業情報の社外持ち出し」が正当行為とされる範囲は広がるでしょうし、通報対象事実も緩やかな要件で認められますし、なによりも内部告発者に対する会社の不利益処分への罰則も課されることになります(あくまでも法の理屈の問題ですが)。まさに公益通報者には「市場の番人・公益の番人」たる地位が付与されることになります。

今年6月1日から適用予定のコーポレートガバナンス・コードの第3章でも、内部通報制度の充実、内部通報者の保護制度の確立が原則として規定されています。「1500兆円の貯蓄をリスクマネーに振り向けるための企業のコンプライアンス経営」を実現するためには、内部通報制度を充実させるべきなのか、それとも内部告発(外部への通報制度)を公益通報者保護法で奨励させるべきなのか、費用対効果を厳密に検証する最近の行政手法の発想から、制度間競争させる、というのも一考かもしれません。

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2015年1月26日 (月)

市場の番人・公益の番人論2015-その3 監査法人のガバナンスコード

市場の番人・公益の番人シリーズの第3弾はまさに「市場の番人」たる監査法人です。本日(1月25日)の日経ヴェリタスではCPAAOB(公認会計士・監査審査会)のS事務局長のインタビュー記事が掲載されており、英国で2010年に策定された監査法人のガバナンスコードに触れ、「日本で直ちに作るかどうかは議論があるが、我々はその方向で動き始めている」と発言されているのが印象的でした。

ところで「会計監査人の不正発見機能が上がっているかといえば、十分でないと考えている」とのご発言もありますが、これは結構、評価はむずかしいのではないかと個人的には思います。昨年、愛知高速交通事件の名古屋高裁判決が出て、同社の会計監査人の任務懈怠(善管注意義務違反)が認められていますが(高裁判決は最高裁HPで全文閲覧できます)、最近は会計監査人の法的責任がチラホラと認められる事件も出てきました。

私も会計監査人さんが不正発見機能を発揮していただきたいとは思うのですが、もし発見したとすると、今のご時世、発見した会計不正事件を早期に見抜けなかった会計監査人の法的責任が問われる可能性があります。したがって、たとえ社員が粉飾を(会計監査人に)内部告発したとしても、会計監査人には会社側に自発的な修正を求めて穏便に済ませてしまおう・・・と考える動機が生じるのではないでしょうか。だとすれば、会計監査人さんの不正発見機能が発揮される事例というものはこれからも増えるかどうかは疑問です。

もちろん過年度まで修正すれば、真実の過去情報を開示したことになりますので大きな問題とは言えないようにも思えますが、その会計不正がミスだったのか、故意によるものなのか、従業員マターだったのか経営者関与によるものだったのか、投資家は知りたいところですし、これがまさに全社的内部統制における重大な不備の判断につながるのではないでしょうか。会計監査人は適正意見を出すかどうか、ということが主たる業務ですが、193条の3を行使することもできますし、会社側と意見の相違があれば契約終了時に意見表明ができます。リソー教育さんの事件のときも、そのあたりが問題視されていたように記憶しています。

たとえ過去の有価証券報告書は真実を伝えたものに修正されたとしても、その会社の内部統制の欠陥はあまり問題とされません(もちろん形式的には内部統制報告書の訂正が行われますが、統制環境に問題あり、といった理由が会社側から示されることはあまり見受けられません)。結局、再び重大な会計不正を起こす可能性があるかどうか、その会社の期待価値は投資家には伝えられないのです。財務報告にはウソは書いていませんが、取引先には虚偽の数字を出している企業なども、私は内部統制に重大な不備を抱えているものと評価します。そういった会社の粉飾危険性を監査法人があぶりだすところに、これからの監査法人さんの「市場の番人」としての価値があるのではないかと思います。

日本の監査法人による監査を受けているからこそ世界から高い評価を受ける・・・と言われるためにも、監査法人さんの品質管理やガバナンスの向上は、「市場の番人」としてふさわしいレベルに到達することを期待しています。

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2015年1月23日 (金)

市場の番人・公益の番人論2015-その2 ヤマト運輸のメール便廃止

昨日の適格消費者団体に続き、本日は一般事業者自身の「公益の番人性」に関するお話です。本日の日経ニュースで報じられているとおり、ヤマト運輸さんが2015年3月限りでメール便を廃止することを決定したそうです。ご承知のとおりメール便では「信書」は配送できない(日本郵政の独占業務)のですが、2009年以来、法令を知らない委託者が8件も郵便法違反によって書類送検や警察からの事情聴取を受ける事態となりました。おそらくメール便の使い勝手が増すにしたがって、利用者が法令違反行為に至るケースが増えているものと思います。ヤマト運輸さんとしては、これ以上、ステークホルダーの法令違反行為を助長させることはできないとして、今回の廃止に踏み切ったそうです(もちろん報道にあるとおり、事業戦略とつながる点もあるとは思いますが・・・)。

昨年、このブログでもご紹介したDeNA(ディーエヌエー)の南場智子さんの「不格好経営」に、とても印象深い出来事が掲載されています。モバゲーが急成長を遂げていた2007年、モバゲーを「出会い系グッズ」として活用する人たちが増えたそうです。社長である南場さんは、健全に遊ぶユーザーを守ることを第一に、自主規制機関を設置し、ローラー作戦で「出会い系ユーザー」をつぶす作業を行いました。「健全性の確保が経営の最優先課題。当然、利益よりも優先せよ」と指示を出された、とあります。当時のDeNEといえばまさに急成長の最中であり、どんなことがあっても短期の利益を優先するのが当然・・・と思える時期ですが、「健全化に向けて努力をした事業者が報われる仕組みにするほうが、結果として業界全体の自浄能力が定着し、ユーザーを守ることになる」(同書124頁)との思いが強かったそうです。コンプライアンスを実現することで行政による規制強化を排除したわけで、まさに「闘うコンプライアンス」の一例かと。

私も過去に2度ほど、郵便法上の「信書性」について総務省と交渉をした経験があります。郵便法においては、郵便の事業は郵便法の定めるところにより郵便事業株式会社が行うものとされているところ(同法第2条)、郵便事業株式会社以外の者は、何人も、他人の信書(特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう)の送達を業としてはならず、運送業者はその運送方法によって他人の委託を受けて信書を送達してはならない、と規定されています(同法第4条2項、同3項)。さらに何人も、第2項の規定に違反して信書の送達を業とする者に信書の送達を委託し、又は3項に掲げる者に信書の送達を委託してはならない、と定められています(同4項)。このあたりの「信書性」判断のむずかしさは昨年12月の東洋経済さんの記事に詳しく説明がされています。

はたして「何が信書に該当するのか?」「配送業務のどこまでが信書の送達にあたるのか?」「どのような送達方法によれば信書性が解除されるのか?」という点はグレーゾーンが多く、総務省や地域の総合通信局によっても見解が異なる場合があります(担当者が変われば解釈も変わる可能性があります)。郵便法に詳しくない人たちからすれば、知らない間に犯罪に巻き込まれるリスクがあり、いわば現在のヤマト運輸さんは犯罪行為を助長する役割を担っている、ということにもなりかねません。ステークホルダーの利益を最優先に考える企業こそ持続的な成長が図られるべきとするならば、こういった利用者を犯罪に巻き込むおそれのある事業を「手直し」することこそ、「公益の番人」として果たすべき役割だと思います。

DeNAさんやヤマト運輸さんのように、今後は(自社の事業戦略を推進することを目的として)企業自身が「市場の番人」「公益の番人」の役割を務め、短期的な利益よりもステークホルダーの利益保護を優先する事業姿勢を打ち出す企業が増えてくるのではないでしょうか(上場会社の場合には、現在策定中のコーポレートガバナンス・コードの第3章でも、このあたりが明確にされているものと思います)。

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2015年1月22日 (木)

市場の番人・公益の番人論2015-その1 適格消費者団体

当ブログの年末のごあいさつで申し上げましたが、今年は「市場の番人」「公益の番人」に光が当たる年になると予想しています。企業活動の自由が最大限保証され、規制緩和や規制のソフトロー化が進む中で、行政に代わり(または行政とともに)企業コンプライアンスを担う「番人」の存在がクローズアップされるのは当然の流れかと思います。

すでにニュースでご承知の方も多いと思いますが、京都地裁において、適格消費者団体による景表法違反を根拠とした広告差止請求が認められています。被告は大手の健康食品会社です。まだ判決文を読んでおりませんので詳細はわかりませんが、適格消費者団体による差止請求は消費者契約法に基づくものがほとんどでしたので、景表法による差止というのは画期的ではないでしょうか。広告内容が虚偽である、と証明できなくても、有利誤認や優良誤認のおそれがあるとして広告禁止を求められる意義は大きいと思いますし、企業にとってはかなり脅威(景表法コンプライアンスに対する緊張感)になるかもしれません。

訴訟を提起していたのは京都の適格消費者団体ですが、まさに「公益の番人」の象徴的存在であることを示す事例かと。会社側は控訴されるでしょうから、また高裁での判断にも注目が集まるでしょうね。

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2015年1月20日 (火)

企業も肝に銘じておきたい-法の不知はこれを罰する

19日の朝日新聞夕刊(関西版)に掲載されていますが、無許可で中古車オークションを開催したことが古物営業法違反にあたるとして、ダイハツ工業系列のディーラー会社および同社社長さんらが書類送検されたそうです。そういえば2011年にはゲオさん、TSUTAYAさん等で盗品買取事件が続発し、2012年にはソフトバンクさんがiphoneの下取りキャンペーンを実施しようとしたところ、警視庁より「古物営業法違反のおそれあり」と警告を受け、下取りを実施する会社を変更したことがありました。古物営業に関する企業規制にはわかりづらいところがありますね。

このディーラーの社長さんは「古物営業の許可を持っていたので、市場主(いちばぬし)としての経営については別の許可が必要だとは思わなかった」と供述されているそうで、7年もの間、無許可で古物市場主を「業」として継続していたようです(今回はオークション会場に警察が立入り調査を行ったようなので、事前に告発があったのでしょうね)。

そもそも(営業市場主の許可という)法律の存在を知らなかったのだから、故意が必要となる古物営業法違反の罪は成立しないのではないか?とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、「法律の不知はこれを罰する」(刑法38条3項)ということなので犯罪はもちろん成立します。たしかに(犯罪が成立しない)事実の錯誤なのか、法律の錯誤なのか微妙な場合もありますが、本件では3回のオークション開催を容疑事実として、さらに手数料収入の事実も認定されているので、古物市場を「経営」していたことは間違いなく、単純に「市場主としての許可を得ていない」ということだけの錯誤のようなので、犯罪成立には問題ないと思われます。

大手自動車メーカーさんの系列ということなので、まじめに経営をされておられる会社だと思いますが、古物営業についての許可を得ている、ということからコンプライアンス上の問題意識は思い浮かばなかったものと思います。また「前任者の時代からやっているから」ということだけでリスク感覚が乏しかったのではないかと推測します。おそらく現場社員の方の中には、無許可ではないか?といった疑問を抱いていた方もいらっしゃるのかもしれませんが、そのような疑問も「今まで7年間も大阪府警から何も指摘されていないんだから、これって形骸化した法律なんだろう」といった認識を持たれていたのかもしれません。

ただ、たしかにペナルティの執行が緩い法律もあるかもしれませんが、本件のように執行されてしまえば大きな報道につながります。これがもし、この無許可市場で大規模な盗品売買が行われたとすれば、市場を無許可で開催していた企業は、さらに大きな社会的批判を浴びることになります。このような「ペナルティの執行が緩い」と思われている業法は多くの業界に存在します。だからといって業法違反を放置していると「法の不知はこれを罰する」ということで、経営者の犯罪だけでなく法人の犯罪につながります。

遵法経営に真摯に取り組む企業であることを全社的に浸透させることが経営者の役割であり、また、たとえ法の執行が緩い、罰則が形骸化している、といった業法が存在するとしても、社会の変化によって厳格に執行されるようになり、社会から厳しい目で批判されてしまう「リスク顕在化の可能性」を理解することは管理部門の役割だと考えます。法令を理解するだけでなく、法令を取り巻く社会環境の変化にも目を配ることがコンプライアンス経営の要諦です。

このたびのディーラーさんは、事実関係の調査と再発防止のために外部有識者委員会を設置されるそうですが、組織の構造的欠陥にまで踏み込んだ原因究明を期待しています。

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2015年1月16日 (金)

ガバナンス改革-社外役員と非常勤役員、その差はどこに?

最近、偶然にも3名の「社外取締役」の方、もしくはその候補者の方に別々にお会いする機会がありました。その方々に共通するのは、みなさん上場会社の社長経験者ですが、いずれも「会社法上の社外取締役ではない社外取締役」、つまり独立非常勤取締役(もしくは候補者)という点です。

会社法改正によって社外役員の「社外性要件」が厳格になります(猶予期間はありますが)。そこで今後は親会社から派遣される監査役さんが「会社法上の社外監査役」にはなれなくなるので、子会社の(会社法上の)監査役会制度を解消して「非常勤監査役さん」が増えることが予想されます。しかし監査役だけでなく、取締役にも「名刺の肩書は社外取締役」であっても、会社法上は社外取締役ではない非常勤取締役さんが増えるかも・・・という印象を持ちました。ただし監査役さんと違って、企業集団内部統制の一環ではなく、「業務執行に関与できるなら非常勤取締役をやりたい」という独立非常勤取締役への就任です。単純に業務委託契約を締結したアドバイザーというだけでは、たしかに聞く耳は持っていただけても社長への牽制までは期待できませんね。取締役会での議決権を持ち、さらに利害関係が一致するからこそ社長と本気でケンカできるのではないでしょうか。

会社法では社外取締役の選任が機関設計の要件となっていたり、社外取締役が取締役会において過半数を占めることの法的効果(権限を大幅に執行者に委譲できる等)が規定されているので、社外取締役の定義もあり、その身分では業務執行ができないことになっています。しかし、本当に企業価値を向上させるためには社外取締役が執行責任を社長と一緒にとる覚悟で業務に臨んだほうが良い、という意見の方も結構いらっしゃいます。そもそも執行に責任を負わないものが、なぜモノが言えるのか?会社の行く末に責任を負わない者が、なぜ社長の交代を進言できるのか?

理屈の上では「少数株主の利益保護のため」、「社長の暴走を止めて、コンプライアンス経営を図るため」、もう少し広く「株主利益の最大化を図るため」といった目的から社外取締役の意義を見出すのであればわかりやすいと思います。また海外から投資資金を呼び戻すため、という「株主の代弁者=社外取締役」論でも理解は可能です。しかし現在のように「持続的成長をはかり、企業価値向上を図るため」「稼ぐ力を取り戻すため」の社外取締役であれば、企業によってはむしろ、いま話題の「社外取締役さん」ではない(業務執行をガンガンやってもらい、その分、経営責任も一緒にとってもらう)非常勤取締役さんのほうがガバナンスの実効性が高まるのではないか、という意見にも一理あるように思われます(ただし現役の社長さんは、会社に迷惑をかけるリスクが高いので、法的責任制限の工夫をしないと実際には無理だとは思いますが)。

もちろん有事となれば社長と株主との利益相反状況になる可能性も高いので、執行の監督者という立場は重要ですが、平時における価値向上ということであれば一緒に業務執行にまい進する非常勤取締役という立場も十分に考えられるところかと。「社長と一緒に業務執行やらないで、なんで会社の将来の戦略なんて語れるの?実態のガバナンスは銀行と社員と株主によるガバナンスでしょ。監督者になんてホンネ言うわけないじゃないの」というある社長経験者の方の言葉が印象的でした。

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2015年1月13日 (火)

JA全中改革-監事監査の重要性を忘れていませんか?

年明けから多くのブログ等で取り上げられているJA全中(全国農業協同組合中央会)の農協監査権限廃止問題ですが、全中の会計監査権限が廃止され、公認会計士監査に移行することだけが専ら話題になっています(たとえば毎日新聞ニュースはこちらです)。一方で業務監査権限も廃止されることになりそうですが、こちらはあまり話題になっていません(農林中金さんが外部監査としての業務監査権限を受け持つ、という報道もされています)。このあたり、やはり監事監査(監査役監査)というものが、世間では話題になりにくいことを如実に物語っていますね。

平成4年の農協法改正により、農協組織のガバナンスは会社法上の株式会社組織とほぼ同じようなものになりましたので、会社法上の監査役に匹敵する常勤監事(常勤監査役)、員外監事(社外監査役)さんが各農協にいらっしゃいます(もちろん規模にもよりますが・・・)。私は過去にいくつかの都道府県JA中央会のお手伝いをしたことがありますが、農協監事監査の指導なども熱心になさっておられて、これが廃止されると各農協の常勤監事さんはお困りになられるのではないかと懸念しております。農協さんの中にはコンプライアンス意識にやや問題がある理事さんがいらっしゃるところもありそうでして、監事さんのレベルが高いのであればよいのですが、そうでないところは外部監査としての中央会監査にも意義があると思います。

農協監事といえば、当ブログでも2009年にご紹介したとおり、監事さんの監査見逃し責任を厳格に認めた大原町農協事件最高裁判決が有名です。農協理事長の暴走を止められなかった監事さんの損害賠償責任を認めた判決(逆転判断)です。会社法上の監査役と同等の監査権限を有するものといえども、「監事とは何をしたらいいの?昨年までの恒例どおりに監査をしておけばいいの?」といった方もいらっしゃるので、最高裁判決は農協監査実務に一石を投じるものとなりました。ということで、各農協の監事の皆様にとっては全中の(指導を伴う)業務監査には(批判はあるものの)現実的には助かっていたのではないでしょうか。

今後、全中の業務監査が廃止されるとなると、監事監査は一体どうなるのでしょうか?会計監査を担当する公認会計士の方々も、監事さんと連携をする必要があると思いますが、はたして連携するだけの能力が監事さん方にあるかどうか・・・・・、農協ガバナンスの将来を真剣に検討しなければ、ただでさえ不祥事が多いところへ、今後ますます関係者の責任が問われるような金融不祥事が増える気がいたします。ぜひとも全中改革においては、会計監査だけでなく、今後の業務監査の行方にも注目していただきたいと思います。

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2015年1月 9日 (金)

不祥事・重大事故の公表について企業が留意すべき3つの視点

昨日のエントリーに対しては、たくさんのアクセスをいただき、ありがとうございました。事務所のほうへ4社ほど、メディアの方々より電話取材の申込みがありましたが、あいにく出張続きのため、取材はなかなかお受けできないのが現状です。そこで、個人的な意見ではありますが、いま問題となっている食品事故に限定して、不祥事・重大事故発生の事実を公表する際の留意点などを、昨日の続編として書かせていただきます(不祥事公表における留意点は、業界や事業規模、上場非上場の有無等、企業ごとにポイントが異なりますので、すべての企業に妥当するとまでは言えません)。なお、拙著「不正リスク管理・有事対応」(有斐閣)でも、このあたりは「経営者の有事の知恵」として詳細に述べておりますので、詳しい解説はそちらの本をご参照ください。

1「消費者のために」ではなく「消費者の視点で」公表の要否を考えよ

1月7日、ベビーフードに虫が混入していたと報告を受けていた和光堂さんは、「商品の回収はしない」とコメントされていましたが、親会社の意向により一転「すべて回収する」と企業対応を変えています。「過剰反応ではないか」との声も聞かれますが、企業グループのレピュテーションリスクに敏感な親会社としての対応は、これが現実なのです。日本の企業はステークホルダーの利益保護には非常に熱心なので、消費者のために安全を最優先に考えることは誠実な企業として当然であり、それにふさわしい品質管理がなされています。

しかし、だからといって100パーセントの商品の安全は絶対に確保できないのであり、それは内部者不正事件などをみても明らかです。だとすれば、商品の安全に疑惑が生じた場合、それは企業だけで解決するのではなく、ステークホルダーと一緒に解決する姿勢を示すことが求められます。消費者との関係でみれば、どのような食品事故が発生したのかをHP等で速やかに開示し、同様の事故が別の消費者に発生していないかどうか確認し、また事故に対する注意喚起を行うことが大切です。ときどき「同様の事故は聞いていないので、固有の問題として個別対応で済ませた」という企業広報を聞きますが、これは「事故があれば消費者のほうから何か言ってくるだろう」という、かなり上から目線での対応であり、消費者に対するコミットメントを感じることができません。

異物混入は、企業にとっては何十万食のうちの1食です。しかも第三者による悪意による混入かもしれません。しかし消費者にとってはその1食が企業と結び付くすべてです。「消費者のための安全」と「消費者の視線からみた安心」、法令違反が問われない状況において、そのいずれに重きを置くかは企業自身が自己責任で判断すべきです。

2 被害者からの連絡にはファーストコンタクトで決める

これは拙著「不正リスク管理・・・」の中でも述べているところですが、今朝のニュースなどで、実際にマクドナルドや和光堂の異物混入を会社に申出た方のインタビューを聞いていると、「こんなものが入っているから気を付けて・・と、他の購入者にも教えたかった」という真摯な気持ちから会社に連絡をしたことが窺えました。異物混入の事実を会社側に申し出る消費者の気持ちを逆なでするような企業側の対応が、行政当局に訴える、SNSで会社側の対応を非難する、といった消費者の行動を惹起することも多いのではないでしょうか。つまり、被害を訴える消費者とのファーストコンタクトがとても大切です。

1で述べたこととも重複しますが、私は被害を受けた消費者とともに問題を解決する姿勢をきちんと示すべきだと思います。昨年発生したアクリフーズ社の農薬混入事件の第三者委員会報告書をご一読いただければおわかりになると思いますが、決して犯人とは結びつかないものの、あの農薬混入事件までに数件の異物混入事件が発生していました。その段階で、もし会社側が有事意識を高めていたとすれば、あの農薬混入事件の発生可能性は低下していたかもしれません(あくまでも推測の域を超えませんが)。今の時代、消費者がSNSを活用する等によって、自ら事故情報を広めることが容易ですが、逆に悪意による告発は偽計業務妨害や威力業務妨害等によって容易に摘発される時代でもあります(昨日、奈良県のコンビニで釣銭を多く渡されて黙って受け取った男性が逮捕されましたが、以前ではなかなか立件できなかったと思います)。消費者による情報提供には真摯に耳を傾けるほうが会社にとっては得策だと思います。

3 しかるべき部署に情報を集約する

全国展開をされている外食さんだとかなり難しいかもしれませんが、商品に対するクレームを、本部に一極集中させることができるかどうか、これが重要なポイントではないかと。たとえば和光堂さんのケースでは、7日の時点で「ほかに同様の異物混入の情報は入っていない」と公表していましたが、8日の夜、新たに別の商品で虫混入の事実(昨年夏の事件)が判明したと公表しています。店舗ごとですと、なかなか対応にばらつきが生じ、マクドナルドさんのように、大切な異物さえ紛失してしまう、という事態にも発展してしまいます。また、「異物混入があった」ということは、現場社員にとってはミスにつながるものとして、誰も報告したがらないはずです。しかし、重大な食品事故が発生して会見を開くや否や、同じような事故情報が後から本部の耳に入る、ということになると、「事故隠し」という二次不祥事を発生させかねません。

こういったことは企業風土に関わる問題であり、一朝一夕にリスク管理として体制が構築できるわけではありませんので、愚直に地道にふだんから取り組む必要があります。昨日のエントリーでも書きましたが、「当社の製品は100%安全だと確信している」と思えば思うほど、「これまで一回も事故など聞いたことがない」と誇りを持てば持つほど、クレームは「お客様のほうに問題があるのでは」というバイアスにとらわれてしまいます。昨日のエントリーで「ひろさん」がコメントを寄せておられるとおり、安全管理にはどこかで例外を許容する部分もあるのではないでしょうか。誰かのミスとかではなく、そういったブラックボックスが存在しうることを許容してこそ、「事故は当社でも発生する」という思想のもとでのリスク管理も可能だと思います。

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2015年1月 8日 (木)

不祥事・重大事故の公表ルールは柔軟に作るべきである

食品への異物混入事件の報道が連日続いています。ついにスーパーで販売する「ひき肉」から金属の刃まで見つかるような事態になってますね(読売新聞ニュースはこちら)。なかでもマクドナルド社(日本マクドナルドホールディングス社)の異物混入事件は連日のように伝えられ、本日、取締役の方が謝罪会見を開きました。各社の対応をみていますと、異物混入の原因が不明であるだけでは公表も回収もせず、第三者機関で混入経路が判明し、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)等で騒がれ始めた場合には公表するといった対応が目立ちます。マクドナルド社の場合は公表ルールに沿って判断している、といったコメントがありました。

不祥事や重大事故が発生した場合、当該事件を世間に公表すべきかどうか迷うところです。企業にとって本当に悩ましい問題ですね。行政当局に報告するケース、刑事手続きが進行しているケース、被害が拡大するおそれのあるケース等、公表の要否を検討するにあたっては、状況を把握し、「社外の目」をもって判断しなければなりません。食品事故の場合、消費者の生命、身体の安全にかかわるものなので、とくに「社外の常識」で判断することは大切だと思います。誠実な企業ほど、自社製品に対する安全への自負がありますから、これが有事には裏目に出てしまうケースが目立ちます。

以下は私の個人的な意見ですが、公表の要否を判断する基準が必要ですが、その基準は原則主義で策定すべきであり、あまり詳細なものはかえって問題を悪化させるのではないかと考えています。毎度申し上げることですが、会社が有事となった場合、どんな誠実な役職員でも会社を守ろうとするバイアスが働きます。かならず、なにか言い訳をして「これは公表するほどでもない」と考えます。「当社が公表することで、取引先にも迷惑をかけてしまう」といった言い訳も聞こえてきます。タカタのリコール問題に対してホンダ社が「調査リコール」に踏みきるべきかどうか逡巡していたところ、社長が社外取締役から「消費者の視線で対応せよ」と一喝されて決心がついた、という話が昨年12月12日の日経新聞に掲載されていました。社内の常識で判断することが、後でいわゆる「不祥事隠し」のレッテルを貼られる要因となります。したがって、公表ルールをあらかじめ策定しておくことは、こういったバイアスを少しでも減らすために有効かと思います。

しかし、一方で公表ルールが詳細なものだと担当者が思考停止に陥ります。品質問題が生じた場合には公表するが、異物混入の場合には公表しない、といったルールについて、常にこのルールに従ってよいものではありません。たとえば単発的に事故が発生した場合であればよいとしても、すでに事故が公表され、世間から対応が注目されている中で、二度、三度と事故が続くようなケースでは、たとえルール上は公表は不要と判断されるものであったとしても、これを公表すべきです。ご承知のとおり、JR福知山線事故の後のJR西日本のATS作動問題、大阪エキスポランドにおける遊技機事故の後の、別の遊技機の故障問題など、平時であれば公表せずにすむ程度の事故であったとしても、世間の目が向いている時期に発生したからこそ、「不公表」の判断が世間から大きな非難を浴びました。

また、SNSで騒がれていたり、内部告発や内部通報によって第三者による公表のおそれがあるケースでは、自社で公表することが「事故隠し」と評価されないためにも望ましいと思います。これも「当社では不祥事は必ず起きる」といった思想から出発しなければむずかしいところですが、不祥事や事故を公表するためのルールを平時のリスク管理として検討し、有事には柔軟な対応が可能になるように策定することが望ましいのではないでしょうか。公表ルールの存在は、インサイダー取引等の法令違反を防止する効果もあるかもしれませんが、有事における自浄能力発揮のための意識高揚・・・といったところに主眼を置くほうがよいと思います。

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2015年1月 6日 (火)

業務執行役員と非業務執行役員の区別は重要

5日、イオンさんが大規模なグループ経営体制の改革を発表されました。昨年10月に、当ブログでも取り上げました「イオン監査役アカデミー」は、この経営体制の刷新に呼応したものなのでしょうね。将来の幹部候補者が事業会社の監査役に就任し、非業務執行役員としてスピード経営、効率的な経営を習得するというもののようです。アカデミーは年間100時間ほどかけて監査役業務を学ぶそうで、監査役がキャリアパスの一環として位置づけられているのは画期的だと思います。

さて、年初のネタはガバナンス関連のお話です。社外取締役や監査役、取締役会長等、非業務執行役員としての地位にある役員は、(その名のとおり)会社法上は会社の業務執行は行えないことになっています。しかしホンネで言えば、現実的には「これって業務執行ではないの?」といった経営執行に一部関与している社外役員や監査役の方々もいらっしゃるのではないでしょうか。とくに独立性が認められない社外取締役の方などは、あまり意識もせずに業務執行に関与されている方もおられるような気がします。グレーゾーンに足を踏み込むことへの悩みを抱えている役員さんもいらっしゃるのでは。

このような問題が、会社法違反としてそれほど大事になることはないのかもしれませんが、これが最近のガバナンス改革、とりわけ株主による取締役評価という場面になると結構重要ではないかと思います。業務執行役員と非業務執行役員の区別を明確にしていなければ、「この社外取締役さんは、きちんと自分の役割をわからずに就任しているのではないか、ここの社長さんと適切なコミュニケーションがとれていないのではないか」と機関投資家が疑問を抱くことにつながるそうです(本日、あるアセットマネジメント会社の方との年始挨拶の場で、私がそのような感想を持ちました)。

たしかに、OECDガバナンス原則(和訳)のまえがきには以下のような条項があります。

このようにコーポレト・ガバナンスとは、会社の取締役会が何を行い、いかに会社の価値を設定するか、に関わるものであり、常勤役員が行う日常的な経営管理とは区別されるべきものである。

もちろん理屈の上では社外取締役に求められる役割はいろいろと意見がありますが、すくなくともスチュワードシップ・コードが策定され、機関投資家も中長期における企業の成長に関心を抱くことになった以上、機関投資家が社外取締役に求める役割という点にも配慮が必要です。外部のコンサルタントに求められていることが社外取締役に求められているわけではなく、もっと根本的な会社の基本方針の決定や、経営執行者の利益相反行動の監視といったことに関与して、できるだけ日常の経営執行には関与しない、という姿勢を示す必要がありそうです。質の高い意思決定が可能になるよう、経営会議を傍聴したり、監査役会との協議を行ったり、報酬や人事に関する委員会に出席することも大切とのこと(私自身、どこまで励行できているかは別として)。

元旦の朝日新聞ではトマ・ピケティ氏の独占インタビューが掲載されていましたが、ピケティ氏も(ドイツの労働者参加型ガバナンスを例に出して)資本主義社会の健全な発展のためにコーポレート・ガバナンス改革も一案だとされていましたね。自社のビジネスモデルが、直面する社会的課題をいかに解決することになるのか・・・といった視点も社外取締役に求められているのかもしれません。今後、社外取締役に就任される方のための研修や教育の機会が増えるのでしょうね。

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2015年1月 3日 (土)

謹賀新年2015

皆様、明けましておめでとうございます<m(__)m>

2006年1月1日の朝日新聞朝刊に、日本振興銀行関連の事件記事が一面に掲載されて以来、毎年1月1日は全国紙すべてに目を通すようになりましたが、今年は読売新聞のビットコイン不正操作事件、産経新聞の企業秘密管理体制に関する記事が面白かったですね。

2014年は上場会社の倒産が一件もないようですし、2015年にはIPOが100社を超える勢いのようで、経営環境も業績も改善される企業が多いようですが、さて、皆様にとってどんな1年になるのでしょうか。

当ブログも今年で丸10年。また皆様方に楽しんでいただけるような内容のエントリーを重ねていきたいと思いますので、どうか本年もよろしくお願いいたします。

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