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2015年2月23日 (月)

常勤監査役の責任限定契約締結は監査の実効性を上げるか?

監査等委員会設置会社への移行を表明した上場会社が順調に増えているようでして、20日現在で(私の知る限り)合計9社に上っています。サントリー食品インターナショナルさんのように、サントリーホールディングスや寿不動産という非上場親会社が存在することから、「うちの会社は決して親会社のほうを向いて事業をしておりません!一般株主のために事業をしていることを、監査等委員会設置会社に移行することで表明いたします!」と明確なストーリーを打ち出すところも今後出てくるのではないでしょうか。

さて、監査等委員会設置会社やコーポレートガバナンス・コードをとりまとめた東証上場規則案などが話題になっていますが、2月20日、JASDAQの共同ピーアールさんが常勤監査役の責任限定契約締結を可能とする定款変更議案を3月総会に上程することを表明しています(共同PR社のリリースはこちらです)。社外監査役さんが責任限定契約を締結できるところは多くの会社と同様だったと思いますが、このたびの会社法改正に合わせて、被業務執行役員については社内の常勤監査役さんでも責任限定契約が締結できるように同社の定款を変更されるそうです(もちろん株主さんの賛同が条件ですが)。

リリースを読むと、「取締役及び監査役が期待される役割を十分に発揮できるよう」責任限定契約を締結したい、とのこと。たとえば会長のような被業務執行取締役さんや、常勤監査役さん等が対象となるようです。常勤監査役さんの責任限定契約を認める定款変更議案はおそらく第1号ではないでしょうか。なお、このたびの改正会社法、改正会社法施行規則では、当該企業が監査役監査をどの程度重視しているか、という点について試金石となりそうな開示項目もありますので、今後の上場会社のリリースには要注意です。

この常勤監査役さんに認められる責任限定契約ですが、多くの監査役の方々が支持されているかどうかは明確ではないと思います。いま、私は日本監査役協会の講演で全国を回っている最中でして、この「責任限定契約」について意見をお聞きすることもあるのですが、この共同ピーアールさんのリリースにあるように「監査役に本来的に認められた権限を行使するためには効果的。監査環境の整備につながる」というご意見もあれば、ぎゃくに「監査役が責任ある立場からモノを言うからこそ社長が意見を真摯に聞き入れてくれる。責任が限定されているということであれば、言いっぱなしと思われてしまう」というご意見もあります。

なるほど、監査役さんの中でも意見が分かれているのだなぁと意外に思いました。ただ社外役員の責任限定契約とは異なり、会長さんや常勤監査役さんの責任限定契約締結を会社側が提案することについては、経営執行部が「監査」や「執行と監督の分離」の重要性について関心を抱いていることの証左でもあります。したがって対外的にストーリーを示す、という意味ではかなりインパクトはあるのではないでしょうか。監査等委員会設置会社への移行・・・という「監督重視」のインパクトはないかもしれませんが、取締役会の責務をどう考えているのか、経営陣のメッセージとしての意味がうかがわれますので、今後同様の定款変更議案がどれくらい出てくるのか、こちらも注目しておきたいと思います(実際に、このような責任限定契約を締結された監査役さんにとって、どの程度、契約の存在が監査業務への姿勢に影響を及ぼすのか、またお聞きしてみたいところです)。

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コメント

大多数の会社では常勤監査役は社内監査役でしょうから、このような緊張感のない議論が起きるのかな、と不思議に思いました。

私は、経営者に依頼されて就任した、社外常勤監査役です。

責任限定契約があるから責任のない発言となる恐れあり、との意見には、本当にそんな話が監査役協会の中で出ているのか?と笑止千万に思います。監査役協会にもいろんな方がおられるのは仕方がないことですが、一般化して頂きたくありませんね。

そう思う経営者は、そういう監査役を株主総会で就任させなければよいだけであり、そう思う監査役はさっさと辞任すべきですね。

責任限定といっても、年収の2倍の額は大きいですよ。私の場合、ようやく3年目で、頑張っているつもりですが、これまでの2年分が全部飛ぶということがどれだけの重さを持ち、また社会的なレピュテーションリスクをどれだけ負っているかについても認識しているつもりです。

集合論として、社内と社外、業務執行と「非(≠被)」業務執行の区分をきちんとしてから、ブログを書いて頂きたいものだとも思いました。

投稿: 社外常勤監査役 | 2015年3月 2日 (月) 14時32分

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