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2015年2月19日 (木)

大塚家具支配権争いにみる「社長解任の極意」

大塚家具さんの親子間における支配権争いが一般紙が報じるほどに話題になっています。現在進行形の事件なので、法務に関わる論点を語ることは控えますが、昨年出版した拙著「ビジネス法務の部屋からみた会社法改正のグレーゾーン」の第6章「社長解任の極意」で述べたことが、そのまま現実化した典型例かと思われます。以下、拙著でポイントとして書いた順に述べますと、

まず「資産運用会社」をどちらが牛耳れるか・・・という問題です。本事件でも、保有株式数は10%程度と小さいものの、創業家一族が株主となっている資産保有会社(ききょう企画)の経営権をどちらが握っているか、という点がポイントです。現社長の両親とお兄さんVS現社長とその妹、弟らという構図だそうですが、なかには大塚家具の仕事とは全く無縁なところで過ごしておられる家族もいらっしゃるでしょうから、このあたりは流動的ではないかなと。あまりマスコミが触れていませんが、実はこういった資産運用会社の支配権をどちらが握るかということが極めて重要だったりします。

つぎにファンドの存在です。アメリカのファンドが大塚家具の株式を買い増して、約10%を保有しているとのことですから、このファンドがどちらにつくか・・・ということがポイントです。報道では現社長側を支援しているということですが、それこそ「株主との対話」の時代、ファンドとしては(会社側に)要求を受け入れされる恰好の場面です。そういえば、最近、上場会社における支配権争いが表面化した場合、どこかともなくアクティブファンドが買い増しをしている、といった例が多くなったような気がします。

さらに「社外取締役の活躍」です。拙著では「社外取締役が取締役会議長を務めることの影響」について書きましたが、大塚家具さんの件では、現経営者を創業者がいったん解任したとき、現経営者に近い社外取締役さんが取締役会を取り仕切ったそうです(東洋経済WEBの記事による)。ただ、今回は社外取締役さんは辞任の意向を示しているようなので、このあたりの影響も出てくるのではないでしょうか。

また、拙著ではメインバンクや監督官庁、顧問や相談役不在ということが支配権争いを誘発すると書きましたが、大塚家具さんのケースでも、そもそも創業者が当事者ですから、そういった「村の長老」による円満解決は期待できません。

そして最後に「株主総会の活性化」です。取締役会を舞台に社長解任劇が増えるのは、実は株主総会を舞台とした支配権争いの事例が増えたことによると思います。関連書類の閲覧請求権行使、臨時株主総会許可申立て、委任状争奪戦や株主提案行使、ホワイトナイトによる経営陣支援、とりわけ昨年の10月には第三者割当増資が「主要目的ルール」の法理によって裁判所で差し止められる事件まで出てきました。こういった株主総会でのドンパチの法的効果が取締役会におけるドンパチの帰趨にも影響が出てきていると推測します。

典型例と書きましたが、社長解任事件の支援は結構むずかしいのです。状況がコロコロ変わりますと、その状況に応じた対応策を検討しなければなりません。おそらく大塚家具さんの事件でも危機対応コンサルタントの方々が(弁護士とは別に)支援されているものと思います。いずれにしても、上場会社の支配権争いが表面化することは企業価値の毀損につながってしまうので、ひっそりと企業内で行われ、何事もなかったかのようにクーデターが鎮圧されてしまうか、もしくは取締役会の直前に決着して(経営者が)「一身上の都合により辞任」として開示されるのがベストプラクティスかと。

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