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2015年2月12日 (木)

エンゲージメントの重要性は「株主との対話」だけではない

みずほフィナンシャルグループ、りそなホールディングスに続き、三菱UFJフィナンシャルグループも委員会設置会社(改正会社法では「指名委員会等設置会社」)に移行されるようです。また、1月終わりには2社だった「監査等委員会設置会社」への移行予定を表明した会社も、2月10日現在は5社(バイテック、アンリツ、岩塚製菓、コスモ石油、ジャフコ)となり、今後もガバナンス改革を実践する会社が増えそうです。

昨今のガバナンス改革では、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの適用のもと、「株主との責任ある対話」が求められていますが、対話が求められるのはなにも株主との間だけではありません。たとえば先の金融機関のガバナンスは「金融庁との建設的な対話によるガバナンス強化」が「平成26事業年度金融モニタリング基本方針」の中で明記されていますし、また日本証券取引所自主規制法人が昨年12月に公表した「エクイティファイナンスのプリンシプル」のはしがきにも、エクイティファイナンスの品質向上に向けて、プリンシプルを採用することで上場会社と証券取引所との対話が可能となる、と述べられています。

要は、仕組みの善し悪しを評価するガバナンスから、運用の善し悪しを評価するガバナンスへと転換するのであれば、望ましい方向へと企業を動かす方策としてプリンシプル(原則主義)と対話(時間軸)を活用する、ということでしょうか。ルールへの適合は得意でも、プリンシプルへの適合はあまり得意でない日本企業にとって、望ましい方向性を関係者との対話の中で構築していこうといったところかと。したがって「スピード経営の実現と経営の透明性、説明責任のバランスを確保するために、監査等委員会設置会社に移行しました」として、システムを作っても、対話の目的はそのシステムが動くプロセスにあるわけですから、安心はできないということになります。

プリンシプルはルールではないので、適合するかどうかは企業自身が決めることですが、「エンゲージメント」は対話双方の信頼関係を前提としますので、その信頼関係が破壊された場合には、「事実上の制裁」が待っている、ということになりそうです。では、この「信頼関係」の前提となるものは何か、さらに信頼関係が破壊された場合の「事実上の制裁」が一体何を意味するのか、ということを考えてみると、いろいろと面白い現象が浮かんできますが、それはまた別途検討していきたいと思います。

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