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2015年2月 6日 (金)

グループ間取引の公正性については役員の勉強が必要かも・・・

物流サービス事業を展開するロジネットジャパンさんが、(誰かによって)監査法人に告発されたことを契機として、同監査法人からグループ間取引の適切性に疑義を呈され、第三者委員会を設置したことを公表しました。最近は大手の監査法人さんを中心に通報窓口を設置されていますので、内部告発が監査法人さんに最初に届くケースも多いと思います。過年度開示の訂正が必要な事例について、最近は監査法人さんも躊躇なく企業側に疑義の解消を求めてこられますので、こういった事例は今後も増えるでしょうね。

企業集団の内部統制といえば、野村證券孫会社株主代表訴訟事件や福岡魚市場株主代表訴訟事件等を中心に、親会社による子会社不正の見逃し責任がイメージされることが多いようです。しかし、親会社の忠実義務の履行という面においても配慮が必要です。グループ会社との取引、関連当事者との取引においては、親会社取締役の利益相反取引、一部の関連会社のみ優遇する取引(アームスレングス・ルール違反)、親会社の利益確保の機会を奪ってしまう子会社取引、関連当事者であることを隠匿する粉飾リスク等、いずれも親会社取締役の忠実義務違反(善管注意義務違反)に該当するおそれがあります。子会社不正の問題ではありませんが、親会社自身に損害を発生させないように、親会社の取締役が企業集団としての内部統制を適切に構築することは、こういった親会社取締役の不適切な業務執行を排除するためにも必要です。

昨年12月24日、コンタクトレンズ大手のSEEDさんは関連当事者との不適切な取引について、外部委員会報告書を開示していますが、同委員会は、親会社取締役の法令に対する認識不足が長期にわたる不適切取引の放置につながったと結論つけています(この報告書は、親会社取締役が認識すべきグループ企業管理の法的義務についてきわめて丁寧に解説されており、とても参考になるものと思いますので、ご一読をお勧めいたします)。こういった関連当事者取引に関するリーガルリスクというものも、ふだんあまり意識されていない役員さんも多いかもしれませんので、法的責任と直結するものである以上、研修等で勉強しておいたほうがいいかもしれませんね。

SEED社の事例は、社長さんが最初に不正の端緒に気が付き、社内調査が開始されたという珍しい事件ですが、だからこそ自浄能力が発揮されたものと思われます(社長さんが気づくまでわからなかった、という意味においては内部通報制度が機能していなかった、ともいえそうですが・・・)。

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コメント

グループ間取引の公正性に関しては、子会社監査役の立場としては親会社からの無理な(一般的でない)取引の押し付けにどう対応するかも一つのポイントになります。特に完全親会社の場合は、関連当事者との取引の注記で対応可能としても、実効性は小さいと考えられていました。
今回の会社法施行規則改正で親子会社間の利益相反取引に関する事業報告・監査報告への記載による規制が強化されました。いくつかの団体のパブコメ意見で、この中に完全親会社は含まない旨明記すべしと主張されており、法務省がどう回答するか注目していましたが、完全親会社との取引を含むことが明確化されましたね。実務的には結構重要なポイントになるかも知れません。

投稿: いたさん | 2015年2月 7日 (土) 01時53分

 今回の会社法改正により、企業集団の内部統制が法令に格上げ(?)されたことに伴い、親子会社間の通例でない取引についての開示が施行規則で求められるようになったことは、子会社監査役として、大いに歓迎すべきことであると思います。
 完全子会社であるか否かを問わず、親会社子会社での関連当事者間取引は、企業集団内部統制の要であると思います。企業集団全体での業務プロセスが適切に機能しているのであれば、通例でない取引の発生の余地はないはずであるのに、例えば、子会社に一方的に不利益となる取引が発生する状況は、企業集団全体での何らかの内部統制上の問題点があると推測されるものであると思います。(不正があるとまでは言い切れませんが)
 このような状況について、監査役として対処してゆくには、子会社監査役と子会社調査権を有する親会社監査役・監査委員等が連携して監査することが肝要ではないかと考えます。
 親子会社監査役が相互に連携するには、人的な結びつきが大きな要素であり、親子会社双方の監査役の指名にも関連してまいります。
 今回パブコメの募集が行われたコーポレートガバナンスコードで、監査役会設置会社での任意の指名委員会の設置推奨では、監査役の指名について、必ずしも明示的に述べられておりません。親会社監査役および子会社監査役の指名が、親会社の任意の指名委員会で議論されることも可能であるとは思いますが、企業集団全体での監査体制の整備という観点からは、社外監査役が多数を占める親会社監査役会自体が、親会社および子会社の監査役について指名を行うのが望ましいのではないかと考えます。

投稿: 法律しろうと | 2015年2月 7日 (土) 21時40分

意外と言っては法務省に失礼かもしれませんが、親子会社間の利益相反取引に限らず、今回公布された改正省令は地味ながらよく考えられていると思います。
特に監査役の監査の実効性を確保するための諸施策は、実態を踏まえた目配りがよく利いたもので、チーム内に現場を良く知る人がおられるのかも知れません。中でも監査役費用の支払い問題は、会社法で明確に規定されていながら、実際には経営側は何かと理由をつけて支払いを渋り、しかも裁判所がそれを正当化するというとんでもない実態がありました。当ブログでもお馴染みの「物言う監査役」のT社F監査役の事例が典型的ですが、今回の改正はこうした事案も踏まえて提案されたものと推察しています。補助使用人の指示の実効性や内部通報の保護の問題も、現実に存在する問題から発想された提起でしょう。
小生が所属する監査懇話会では、パブコメ意見で更に一歩進んで、常勤監査役の設置の有無(監査役会設置会社以外)や補助使用人設置の有無の開示を提案しましたが、予想通りあっさり却下されました。「内部監査部門と監査役の連携の体制」と「社外取締役による監督の実効性を確保するための体制」を内部統制システムの決議事項とすべきであるとの意見もこれまた却下されたものの、「現時点において、御提案の改正を行う必要はないと考える」という回答で、今後の対応に期待を抱かせるものでした。

投稿: いたさん | 2015年2月12日 (木) 10時12分

いたさん、法律素人さん、ご意見ありがとうございます。このたりのことは会社法改正だけでなく、ガバナンス・コードの第1章「株主の権利」でも問題とされておりますので、私がビジネス法務の6月号の特集で論稿を掲載する予定になりました。またご意見いただけますと幸いです。

投稿: toshi | 2015年2月20日 (金) 21時02分

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