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2015年3月27日 (金)

「社外取締役ガイドライン改訂版」が公表されました(日弁連)

先日、原案が公表されたコーポレートガバナンス・コードの第4章でも取締役、監査役のトレーニングの必要性が謳われていますが、このたび2年ぶりに日弁連「社外取締役ガイドライン」が改訂され、3月19日に公表されました(こちらの日弁連HPで閲覧できます)。このたびはタイムリーな改訂ということでマスコミからも注目されているそうです(ちなみに私は取材を受けておりません・・・)会社法が改正され、またガバナンス・コードが東証ルールとして策定される中で、新たに社外取締役に就任される方々に「ベストプラクティス」として参考にしていただくため、大幅に改訂されたものです。日弁連のお知らせから引用いたしますと、

(本ガイドラインについて)日弁連では、2013年2月に、弁護士会会員及びその他の社外取締役候補者、社外取締役を新たに選任する企業等を対象とした「社外取締役ガイドライン」を作成し、2015年3月に改訂しました。本ガイドラインは、取締役の善管注意義務の法的分析・整理を踏まえ、社外取締役の就任から退任までの役割等について、ベストプラクティスをコンパクトに取りまとめたものとなっています。社外取締役の方々や、社外取締役を迎え入れる企業等において、広く参考としていただければ幸いです。

ちょうど2年前、こちらのエントリーで解説本をご紹介しましたが、今回の改訂版につきましても新たに解説本を出版する予定でして、プロジェクトチームもいよいよ大詰めを迎えています。ちなみに私の担当は第8章の「監査等委員会設置会社における社外取締役」、第9章「その他社外取締役に期待される役割」です。いずれも今回の改訂版の要ですが、もちろん東京の企業法務に精通された弁護士の方々と何度も議論の末に出来上がったガイドラインなので、私の個人的な意見を示したものではありません。ただ、話題性の高いところ(監査等委員会設置会社、コーポレートガバナンス・コードから期待される社外取締役の役割)を担当させていただいたので、ぜひともご参照いただければと。

法曹の書いた「ガイドライン」というと、従来の「守りのガバナンス」中心の指針ではないか、といったイメージを持たれるかもしれませんが、本ガイドラインは経営者(OBを含む)、行政職OB、コンサルタント、会計士といった方々にも参照いただくための指針を示したものであり、ガバナンス・コードを意識した「攻めのガバナンス」実現に寄与する社外取締役を念頭に置いています。また、平時にも有事にも役に立つものとして、その行為規範を意識しながら指針を示していますので、「就任前」「就任直後」「日常の活動」「事業再編や不祥事など、有事の際の行動」等、状況に合わせて活用いただけるようになっています。

各企業の状況によって求められる役割も異なると思いますので、ガイドライン自体はどうしても抽象的な表現が用いられ、いわば「プリンシプル」な規範にならざるをえませんが、そのあたりは改訂版の解説本において補う予定です。社外取締役を迎え入れる経営者のホンネ、対話の時代といわれつつも、対話には限られた時間しかない機関投資家の悩み、そして制度について一般投資家が抱く懐疑心なども意識したうえで策定したつもりです(いや、このあたりは委員のひとりとしての思い入れかもしれませんが・・・)。冒頭に示したように、まさに「取締役、監査役の研鑽の教材」として活用されることを切に願うところです。解説本(改訂版)も商事法務さんから出版されますので、ぜひぜひよろしくお願いします。

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