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2015年4月 8日 (水)

証券市場の活性化に向けた「公益の番人論」の急速な進展

公認会計士・監査審査会は、平成27年度のモニタリング基本計画( 「平成27年度監査事務所等モニタリング基本計画(審査・検査基本計画)」の策定について)を公表し、今年度は監査法人のビジネスモデルやガバナンス体制のほか、監査を受ける企業が抱えるリスクを適切に評価して監査しているかなどの項目について、重点的に検証することを明らかにしました(ロイターニュースはこちら)。コーポレートガバナンス・コードの実施などに伴い、監査法人に対する社会的な役割が高まっているため、とのこと。当ブログでは昨年末から「今年の話題は『公益の番人論』です」と予想し、年初から何本も公益の番人論についてエントリーを書きましたが、ここへきて大きな話題になりそうな予感がしています。

すべてはアベノミクスを支える市場の健全化、活性化を図るために、市場関係者が少しずつ公益活動をしましょう、ということです。まず「市場の健全化」という視点からは、3月26日の日経新聞朝刊でも特集記事が盛り込まれていた「不公正ファイナンスのプリンシプル」です。昨年10月に、東証で初めて策定されたプリンシプルベースの規制手法です。当ブログでもご紹介しましたが、日本取引所自主規制法人理事長のインタビュー記事によると、すでに取引所の対話が功を奏した事例もあるようで、プリンシプル規制が証券市場においてグレーなファイナンス手法を用いる上場会社の行動を未然に防止する役割を果たしつつあるようです。そしてなによりも、記事にあるように「プリンシプルにより、疑わしい企業に弁護士や公認会計士、コンサルタントを近づけないことが大切」とのこと。つまり、そういったグレーなファイナンスに関与する専門職自身について公益の番人たる役割が期待されています。

つぎに市場の健全化と活性化のバランスを図るための施策としてIPO企業の審査の厳格化が挙げられます。こちらは3月30日、日本取引所グループから、証券会社や監査法人に対して新規株式公開企業への審査を厳格にするよう要請がなされました。ご承知のように、E社、J社、G社といったところが、不祥事や上場直後の業績下方修正で株価が急落し、このままではIPO市場の信頼性が一気に失われてしまう、といった懸念が生じました。これまで通り企業のIPOを促しつつも、不適切な開示から投資家を保護するという二律背反の使命をなんとか調和させるために、厳しい上場ルールを設けることなく(既存のIPO企業の競争力を低下させることなく)、市場関係者に市場の番人たる役割を期待することで乗り切ろうとするものだと思われます。つまり、ルールベースではなくプリンシプルベースによる規制が活用されるものと予想します(ただ実際には業績予想の開示制度があるかぎりは、同様の問題はなかなか解消されないようにも思えるのですが・・・)。

そして市場の活性化を図るための施策であるスチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードの施行です。企業の資本生産性向上のストーリー、つまりマージン率、資産効率、レバレッジに関する企業のストーリーだけでなく、そのストーリーを実現させるためのガバナンスをもテーマとする機関投資家(保有者および運用者)と企業との対話が促進される、ということで、機関投資家に公益の番人たる役割が期待されます。もちろんコーポレートガバナンス・コードは東証上場規則に含まれるものなので、上場会社の規制違反の有無を審査するのは取引所ですが、その実効性担保の主役は企業と株主とのエンゲージメントにあることは間違いないと思います。つまり、ここでも規制の主役は「コードを用いたプリンシプル」です。

競争するフィールドから「競争するに値しない企業」の参加資格を喪失させつつ、参加企業には思う存分フィールドで競争してもらうためには、市場関係者のほんの少しずつの勇気(公益の番人としての使命感)をもって競技を盛り上げていく必要があります。もちろん、企業の中にも、社外取締役や監査役といった「少しの勇気」を必要とする人たちがいることも忘れてはならないと思いますし、そのような番人が出すサインを見逃さない投資家のリテラシー向上も必要です。今度こそ日本の企業社会にプリンシプル規制が根付くかどうか、いよいよ試される時期が近づいてきました。

4月 8, 2015 商事系 |

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コメント

「プリンシプルにより、疑わしい企業に弁護士や公認会計士、コンサルタントを近づけないことが大切」

これは逆であるべきでは?「疑わしい弁護士・公認会計士・コンサルタントに企業を近づけないことが大切」です。証券取引所が、企業を悪の手から守るという姿勢じゃないとねぇ・・・自分の所で上場させておいて、あまりに他人事の気がします。

実際に、怪しいファイナンスを専門にしてる弁護士がいて、部下を証取に出向させていたり、かなり地位の高い元裁判官まで取り込んで一大勢力を築いているのは、市場関係者の間では公知になってますよ。彼らが、社外に入り込んで、巧妙に不公正ファイナンスをやってくるんですから、専門家のレッテル張りをしていくべきだと思うんですよねぇ。

投稿: 匿名 | 2015年4月 8日 (水) 09時02分

たしかにそういった面は否定できないでしょうね。また仲介する人達もいますし。私自身が懸念するのは、果たしてそういった専門職の人達にプリンシプルが本当に効果があるか、という点です。もしすでにレッテルを貼られているのであれば、それほど商売に影響がないのかもしれません(笑)

投稿: toshi | 2015年4月 8日 (水) 09時39分

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