生損保業界によるスチュワードシップ・コードへ対応はホンモノ?
先週の日経新聞(4月1日朝刊一面)では、第一生命さんが投資先企業のガバナンスへの審査を厳しくすることが報じられていました。社外役員の選任基準を厳格にすることや、対話のための特別部隊を設置するとのこと。また明治安田生命さんや日生さんも議決権行使基準を(対象会社にとって)厳格化するそうです。日経新聞が報じるところでは、(第一生命さんの場合)今年6月から適用されるコーポレートガバナンス・ルールに対応するためだそうで、とくに生損保業界では同じような対応が加速しているのではないでしょうか。
しかし、これは生損保会社がコーポレートガバナンス・コードに対応している、というよりも、すでに遵守を宣言しているスチュワードシップ・コードへの対応といえるのかもしれません。日本版スチュワードシップ・コードでは、「機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである」、さらに「機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすうえで管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである」とされています。
生損保業界といえば、どうしても投資先企業の株式保有について、政策投資ではないかといわれてしまうように思います。「純投資である」と明言しても、投資先企業の保険契約の獲得という政策的目標こそ優先されるのではないかと。また、現経営陣との良好な関係を維持したいがゆえに、どうしても現経営陣に厳しい意見が出せないのではないか、という点も懸念されます。
これまでも、スチュワードシップ責任を果たしているかどうか、ということよりも、スチュワードシップ責任をどのように果たすべきか、その果たし方の説明責任が尽くされていないということで批判を受けていたように見受けられます。そこで、このような批判にこたえるためにも、生損保会社として、責任の果たし方をわかりやすく説明していこう、という意気込みこそ一連の報道された事実にあらわれているように思います。
国策としてのガバナンス改革を企業の持続的成長に活かすためには「インベストメント・バリューチェーンの構築が不可欠」と言われているだけに、企業と運用会社だけでなく、金主である機関投資家の意識改革にも注目が集まっています。年金ファンドは比較的評判が良い中で、いよいよ生損保業界も動き出した・・・といったところでしょうか。
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