会社法罰則の検証~会社法と刑事法のクロスオーバー
会社法上の規範が企業活動ルールの遵守にどれほどの効果を持つのか・・・、企業コンプライアンスに携わる実務家としてはとても関心のあるテーマです。このたび、会社法罰則の検証を主たるテーマとして、会社法と刑事法の学者の方々が中心となり、さまざまな視点から会社法罰則の在り方について論じた新刊書が出ました。
会社法罰則の検証-会社法と刑事法のクロスオーバー(日本評論社 山田泰弘・伊東研祐編 5,200円税別)
会社法秩序を取り巻く環境変化、刑事行政における経済犯罪の積極的な刑事事件化の方向性などから、①会社法の規制方法の変容と刑事法によるエンフォース、②会社法の規制対象の変容と刑事法によるエンフォース、③会社法規範のエンフォースの実際、そして④会社の規律方法の重層化と刑事法によるエンフォースという4つの視点で「会社法罰則」を検証するというものです。いずれのテーマも当ブログ開設以来、私個人としても関心の高いものでして、ブログ作成のヒントにも活用させていただいております。
実は私も、このうち「会社の規律方法の重層化と刑事法によるエンフォース」の中の1章を担当させていただいております。企業法務の実務家の視点から・・・ということで、内部統制やコンプライアンス経営が進む企業において、はたして刑事法による規律が必要なのか、必要であるとすればどのような場面か・・・ということについての問題提起をさせていただきました。
ちなみに著者の方々は左のとおりでして、格式の高い学術書であることを申し上げておきます(私も担当している、ということでかなり柔らかめ・・・といった誤解を招くといけないと思いまして)。この本を出版するきっかけとなりましたのは、法律雑誌「法律時報」2012年10月号の特集「(会社法改正から)取り残された会社法罰則の検証」が好評だったそうで、その特集を担当された法律学者の皆様が、一冊の本に企画されることになりました。「ひとりくらいはコンプライアンス経営を扱っている実務家を入れてもいいだろう」といったことから、お声がかかった次第であります。正直申しまして、他の第一線の先生方の本格論文とはレベルが違うかと思いますが(笑)、そのあたりは「コラムがひとつ混じっている」程度に大目に見ていただければ幸いです(^^;
ソフトローの効用が本格的に議論され、またプリンシプル規制などが本格的に導入される現在、「なぜ会社法に刑事罰が必要なのか」を問うことは、今後の法改正の本格的な議論にも活かされるものと確信しております。学際を越えた検証がなされた意味は大きいと感じます。ご興味のある方に、ぜひともお読みいただきたい一冊でございます。
| 固定リンク
コメント