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2015年5月12日 (火)

ファーマライズHD社の有事に求められる徹底した自律的行動

65歳で勇退されるドン・キホーテHD社の会長さんのインタビュー記事が5月11日の日経ニュースで掲載されました。出店を加速していた時期に、騒音問題で地域住民の猛反発を受けたときにも、法令違反をしていないことを客観的に証明して切り抜けたそうです。「なんとなく住民の理解を得るという曖昧な対応ではなく、法律を守っている、数値を満たしているという客観性が大切だ」とのこと。

東芝さんの不適切会計処理に関する事件、そして朝日新聞のスクープとなったファーマライズHD系列の薬局における調剤補助事件(たとえば産経新聞ニュースはこちら)などをみると、「会社として、あってはならないことが起きた」との印象を受ける対応です。とりわけファーマライズさんの謝罪文(HPで公開)を読みますと、薬剤師の監視のもとで薬の調合を事務職が行った場合は法令違反になるのか、ならないと考えているのか、会社としての考え方がよくわかりません。会社側は「あってはならないことなので是正した」としていますが、そもそも薬剤師を補助する行為が調剤行為として法令違反だと考えているのかどうかが最も知りたいところです。

消費者の理解を得るためには、曖昧な対応ではなく、自身が法律を守っているという客観性を説明する必要があります。たとえば無資格者の調剤行為は事前規制でも事後規制でも、厚労省が取締まることは事実上困難です(事務職による薬剤師への支援は当然必要でしょうし、だからといって調剤行為を事務職が行っていたことを事後的に確認することは困難)。したがって、もし疑惑が発覚した場合には、国民から限りなくグレーな印象をもたれてしまうことになるので、「この1,2件以外には同様の行為はなかった」ということを企業自身が消費者に対して客観的に説明しなければなりません。

普段から「当社でも事故や不祥事は起きる」と考えている経営者は、リスク感覚に長けておられる方が多く、そのような方は有事における損失を最小限度に抑える手法を心得ています。しかしながら、名門企業や一次不祥事を発生させること自体が企業の信用を毀損してしまいかねない企業の場合は様相を異にします。そもそも「不祥事は起こしてはならない、事故はあってはならない」という意識が経営者に強いので、誰がみても有事であるにもかかわらず「今が有事だ」という意識が乏しく、不祥事であることを認めたくないので曖昧な事後対応で終始し、公表することにも消極的です。しかしその対応が新たな不祥事(二次不祥事)を招くことになります。

ファーマライズHDさんの場合、いきなり「他の店舗では一切、調剤補助といった事実はありません」と断定されていますが、なぜ断定できたのでしょうか。朝日新聞の一面記事では録音に「うちはこうしないと回らない。ほかでもやっている」と残っているそうですが、これは事実と異なるということでしょうか(ちなみに朝日の記事では大阪版の社会面が最も詳細に報じています)。しかし調剤補助という行為を立証することが困難であればあるほど、逆にその証拠が残っているとされる場合には、証拠の存在を否定することも困難です。たとえば内部通報が存在しなかったことや、問題視する事務職に対するパワハラの疑惑もなかったこと、リスクが存在することを平時から承知していたからこそ行われていた措置などから客観的に説明を行う必要があるのではないでしょうか(そもそも会社側から「そちらの店舗では事務職が調剤行為を補助している、ということはないか」と問われ、「そういえば・・・」と回答が薬剤師さんや事務職から返ってくると考えるほうが非現実的であり、なんら説得力を持ちません)。

外からの規制がむずかしいコンプライアンス違反行為は、企業の自律的行動に期待するしかないので、もし自律的行動が期待できない状況だと行政が判断した場合、当該企業は厳しい営業上のハンデを背負うことになります。このような状況だからこそ、ファーマライズHDさんには徹底した自律的行動が求められるものと思います。

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