監査等委員会設置会社移行表明会社のガバナンス(現状)について
(5月5日午後 5月9日午前 5月17日 修正あり)
迷える会計士さんに、本日(5月5日)現在、監査等委員会設置会社に移行することを表明した上場会社(及び既に移行した上場会社)のガバナンスの現状(移行済会社については従前のガバナンス状況)を集計していただきました(なお、その後さらに情報をいただきましたので、5月8日現在の分を追加しました)。そこで、その集計結果を参考に円グラフで示してみました。集計数字を右側に示しましたのでご参考にしてください。なお、迷える会計士さんが集計するにあたっては川井信之先生のブログを参考にされたそうで、川井先生にも御礼申し上げます<m(__)m>ちなみに私も30くらいまでは数えていたのですが、急激に増えたところでしんどくなってカウントをしておりません(笑)
このようなグラフの分析は人間の主観的な判断がどうしても入ってしまうと思いますが、遠慮がちに申しますと、「やっぱり社外取締役を探すのが億劫なのでとりあえず」といった企業が多いのではないかと。私の勝手な推測にすぎませんが、監査等委員会設置会社の理想である「執行と監督の分離」を目指すというよりも、監査役会設置会社の延長として活用する、といった上場会社が圧倒的に多いように思います(105社中、社外取締役がいない上場会社は70社)。ガバナンス・コード(2名以上の社外取締役の選任を要望)との関係で言えば「9割の移行表明会社がガバナンス・コードの影響を受けている」とも言えそうです。
なお、私のもうひとつの関心事は「監査等委員会設置会社への移行と共に、どれだけの会社が取締役会の権限委譲の定款変更を行うか」という点です。とくにこの「社外取締役0人」のガバナンスの会社の中で、どれほどの割合の会社が定款変更をされるのでしょうか。また興味深いところです。
PS 先日、取材を受けました弁護士ドットコムさんに日弁連社外取締役ガイドラインの記事を掲載いただきました。どうもありがとうございます<m(__)m>新たに社外取締役に就任される経営者や経営者OBの方々、専門職の方々にぜひとも参考にしていただきたいと思っております。解説本の第2版ももうすぐ出ますので、そちらもよろしくお願いします。
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コメント
101社は監査等委員会設置会社への移行予定会社数で、移行済み会社が4社で移行表明会社は合計で105社。
コーポレートガバナンス情報が更新されていて面倒だったので、4社ははしょりましたが、改めて過去の有価証券報告書でチェックしてみると、
①社外取締役0・社外監査役2名 2社
②社外取締役0・社外監査役3名 1社
③社外取締役1名・社外監査役2名 1社
でした。
投稿: 迷える会計士 | 2015年5月 5日 (火) 11時32分
なんどもすいません(^^; 修正しておきました。
投稿: toshi | 2015年5月 5日 (火) 20時12分
川井です。山口先生、迷える会計士様、大変興味深いデータのご紹介、ありがとうございました。私もリストを作るだけではなく、もう少し掘り下げた各社の状況を知りたいところでしたので、このデータは大変ありがたいです。今年の6月総会に関する適時開示が出揃うまでは、頑張ってリストを更新しようと思っておりますので、適宜ご参照下さい(笑)。引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます。m(_ _)m
投稿: 川井信之 | 2015年5月 7日 (木) 22時45分
重箱の隅ですが、折角の貴重な資料ですので一言。円グラフの右の図表の一番下の社外監査役は「2人」ではなく「3人」ではありませんか?
投稿: skydog | 2015年5月 8日 (金) 18時25分
skydogさん、ご指摘ありがとうございます。さっそく修正しておきました。川井先生、また私自身も先生のリストを参考にさせていただくかもしれませんので、どうかよろしくお願いいたします。しかし決算発表が続く中、結構たいへんですよね(^^;
投稿: toshi | 2015年5月 8日 (金) 18時35分
こうした客観的な資料があると「横滑り」の具合がよくわかりますね。ありがとうございます。
投稿: Kazu | 2015年5月 8日 (金) 19時10分
Kazuさん、別エントリーへのコメントもありがとうございます。本日(5月8日)も10社以上の上場会社が監査等委員会設置会社への移行を表明していますね。昨年10月の法律時報の江頭論文で、江頭先生が「こうして見ると、監査等委員の職は「経営評価権限」に関して相当に労力を費やすものになりそうである」と記しておられることに注目せざるをえません。監査等委員会が本当に社長の人事や報酬に対して意見決定義務を尽くせるのか、とても関心があります。
投稿: toshi | 2015年5月 8日 (金) 22時53分
5月7日、5月8日開示分の追加です。
①社外取締役0・社外監査役2名 6社
②社外取締役0・社外監査役3名 2社
③社外取締役1名・社外監査役2名 2社
④社外取締役6名・社外監査役3名 1社
投稿: 迷える会計士 | 2015年5月 9日 (土) 09時07分
迷える会計士さんの追加調査を受けて図表を修正いたしました。今回はグラフのほうも修正しました。
なお、社外取締役6名の会社はテレビ朝日ホールディングス社ですね。もともと取締役の数が多いですし、関連会社の役員を兼務されている社外取締役さんも多いようです。
投稿: toshi | 2015年5月 9日 (土) 11時04分
5月11日、12日開示分
①社外取締役0・社外監査役2名 6社
②社外取締役0・社外監査役3名 1社
③社外取締役1名・社外監査役2名 2社
④社外取締役1名・社外監査役3名 3社
⑤社外取締役2名・社外監査役2名 1社
取締役人数別、社外取締役人数別にも整理してみました。
取締役数 社外取締役数 会社数
(人) (人) (社)
① 3 0 3
② 4 1 4
③ 4 0 7
④ 5 2 1
⑤ 5 1 5
⑥ 5 0 21
⑦ 6 1 3
⑧ 6 0 10
⑨ 7 2 1
⑩ 7 1 8
⑪ 7 0 18
⑫ 8 3 1
⑬ 8 1 3
⑭ 8 0 13
⑮ 9 3 2
⑯ 9 2 2
⑰ 9 1 4
⑱ 10 2 1
⑲ 10 1 2
⑳ 10 0 3
㉑ 11 3 1
㉒ 11 1 1
㉓ 11 0 6
㉔ 12 2 1
㉕ 12 1 1
㉖ 13 3 1
㉗ 13 0 1
㉘ 14 1 1
㉙ 14 0 2
㉚ 16 0 1
㉛ 17 6 1
投稿: 迷える会計士 | 2015年5月13日 (水) 21時53分
いつもありがとうございます。最近、常勤監査役さんが退任されて、社外監査役2名と部長クラスの方が社内から1名選任されているケースが目立つように思いました。また分析してみたいと思います。
投稿: toshi | 2015年5月14日 (木) 18時35分
5月15日現在
①社外取締役0・社外監査役2名 72社
②社外取締役0・社外監査役3名 27社
③社外取締役0・社外監査役4名 2社
④社外取締役1名・社外監査役2名 21社
⑤社外取締役1名・社外監査役3名 16社
⑥社外取締役2名・社外監査役2名 6社
⑦社外取締役2名・社外監査役3名 2社
⑧社外取締役3名・社外監査役2名 3社
⑨社外取締役3名・社外監査役3名 2社
⑩社外取締役6名・社外監査役3名 1社
投稿: 迷える会計士 | 2015年5月17日 (日) 21時06分
5月22日現在
①社外取締役0・社外監査役2名 81社
②社外取締役0・社外監査役3名 32社
③社外取締役0・社外監査役4名 2社
④社外取締役1名・社外監査役2名 25社
⑤社外取締役1名・社外監査役3名 17社
⑥社外取締役2名・社外監査役2名 7社
⑦社外取締役2名・社外監査役3名 2社
⑧社外取締役3名・社外監査役2名 3社
⑨社外取締役3名・社外監査役3名 2社
⑩社外取締役3名・社外監査役4名 1社
⑪社外取締役6名・社外監査役3名 1社
投稿: 迷える会計士 | 2015年5月23日 (土) 22時03分
5月22日開示の明治機械さんは、開示の表題が監査等委員会設置会社への移行となっていたため集計に含めましたが、移行自体の開示が3月に行われていましたので、社外取締役0・社外監査役3の会社数から1社減じた訂正をお願いします。失礼しました。
投稿: 迷える会計士 | 2015年5月25日 (月) 16時54分
昨日は日本監査役協会主催の〈金〇庁のチョイ〇るおやじ ことS審議官〉の講演会「CPAAOBの活動状況と今後の方向性」に行ってまいりました。途中、本論から外れ、監査等委員会設置会社について、こんなことを仰ってました(記憶だけで書いてます)。
監査等委員会設置会社に移行する会社は160社くらいあるようですけど、ブログ等を見ますと「社外取締役の確保が難しいから、監査役会を監査等委員会にしちゃえ」などという不純な動機の会社もあるようです。しかし問題は「独任制,4年任期,常勤必須」の監査役会設置会社から移行するだけで、監査機能の強化ができますか?ということです。どういう工夫をするんですか?ということです。私は金融庁の検査局にも籍がありますから、銀行検査の際は必ず質問しますが、一般企業も考えておいた方が良いと思います。
投稿: skydog | 2015年5月29日 (金) 05時47分
5月29日現在
①社外取締役0・社外監査役2名 88社
②社外取締役0・社外監査役3名 31社
③社外取締役0・社外監査役4名 2社
④社外取締役1名・社外監査役2名 27社
⑤社外取締役1名・社外監査役3名 18社
⑥社外取締役2名・社外監査役2名 8社
⑦社外取締役2名・社外監査役3名 3社
⑧社外取締役3名・社外監査役2名 3社
⑨社外取締役3名・社外監査役3名 2社
⑩社外取締役3名・社外監査役4名 1社
⑪社外取締役6名・社外監査役3名 1社
投稿: 迷える会計士 | 2015年5月31日 (日) 09時22分
skydogさん、ご報告ありがとうございます。私もコーポレートガバナンス・ネットワークでの佐々木さんの講演、ストリーミングですが拝聴いたしました。すこし監査役協会での講演にも参考にさせていただきました。
迷える会計士さん、ありがとうございます。また修正させていただきます。週刊東洋経済さんで、持論を展開させていただきましたので、また記事になりましたらお知らせいたします。
投稿: toshi | 2015年5月31日 (日) 23時54分
監査等委員会設置会社への移行が完了した会社が出てきましたので、従前のガバナンス体制との比較をしてみました。
>やっぱり社外取締役を探すのが億劫なのでとりあえず
必ずしもそうともいえなそうです。
例えば、ケーヨーさんは、従前の社外取締役0・社外監査役2人から、監査委員である社外取締役3人となっています。(社外監査役からの横滑り1人、新任2人)
逆に、某社では、社外取締役1人・社外監査役3人から、監査委員である社外取締役3人と、社外役員数では純減となっています。
色々なパターンがありそうですね。
投稿: 迷える会計士 | 2015年6月15日 (月) 22時04分
迷える会計士さん、いつも集計いただいている数字をみても、監査等委員会設置会社への移行を表明している企業の1割程度は、ガバナンス改革のひとつとして移行を前向きにとらえているのではないかと思います。色いろなパターンがあることは好ましいことであり、今後も前向きにとらえる企業が増えてくればいいですね。
投稿: toshi | 2015年6月22日 (月) 11時00分
9割近くは「やっぱり社外取締役を探すのが億劫なのでとりあえず」というところのようですが、それでも株主からの賛成票がもらえたり、株を買ってもらえると、経営トップは考えているのでしょうか。
リリースを見ればやる気はわかるでしょう。
わかりやすい解説がありましたので、こちらをご参照いただければ。http://toyokeizai.net/articles/-/72300
投稿: Kazu | 2015年6月23日 (火) 12時39分
Kazuさん、ご指摘ありがとうございます。参考コラムを拝読いたしました。一点異論がありまして、弁護士が専門的な分野からしか意見を言わないというのは決めつけだと思いますし、経営経験があるからといって専門的でない意見を言うというのも決めつけです。これは私ではなく「取締役会の仕事」の著者ラム・チャラン氏も警告しているところかと思います。要は従来のガバナンスの時代には属人的な善し悪しが話題となりましたが、昨今の攻めのガバナンスの時代には時間軸とストーリーがなければガバナンスの善し悪しは語れないようになったと考えています。
投稿: toshi | 2015年6月28日 (日) 11時27分
その異論は、同感です。かなりビジネスに食い込まないと、適切な法的アドバイスができないことは多々あるし、多角的な見方をすることがそもそも仕事なので・・・・。他にも決めつけはありますが、言いたいことはわかるような気がします。
投稿: Kazu | 2015年7月 1日 (水) 13時31分