監査等委員会設置会社の補欠取締役選任状況について
またまた監査等委員会設置会社への移行に関する話題ですが(すでに130社ほどの上場会社が移行を表明しておられますが)、3月総会、4月総会の上場会社においては、すでに監査等委員である取締役の方が選任され、5月1日より就任されております。また5月総会の会社では、招集通知の発送もすでに行われています。したがいまして、5月総会までの上場会社において監査等委員会の構成状況について調べてみました(合計9社)。
集計の結果、監査等委員である取締役3名のみ選任(または選任予定)の会社が5社、補欠の監査等委員である取締役を選任された会社が1社、4名構成の監査等委員会設置会社として、そのうち3名を社外取締役としている会社が3社となっています。6月総会会社において、すでに適時開示で補欠取締役の選任予定をリリースされている会社もありますので、今後は監査等委員である補欠取締役さんが株主総会で選任されるところも多いのではないかと推測いたします。
監査等委員会は3名以上の取締役で構成されますので(うち過半数が社外取締役)、補欠を選任せずにきっちり3名のみ選任議案を上程する、というのがもっともシンプルです。しかし、監査等委員としての取締役の職務は相当に労力を要するものと思いますし、執行と監督の分離を促進するモデルと考えた場合、経営執行部と対立する可能性もあります。したがって欠員が生じることも予想されます。監査等委員会の場合、指名委員会等設置会社の監査委員のように取締役会で選定できるものではないので監査等委員会が事実上開催できないリスクがあります。
そこで補欠取締役の選任が考えられます。これは正式に選任された監査等委員の取締役が監督機能を存分に(安心して?)発揮できる体制になるので、社外からみても迅速果断な意思決定が期待されるところです。しかし、補欠といえども、監査役と異なり、監査等委員以外の取締役の指名や報酬の妥当性に関する意見を決定しなければならないという「経営評価l機能」を果たさなければ善管注意義務違反に問われる可能性があるので、会社経営に何ら関与してこなかった人がいきなり妥当性審査や妥当性監査をもって善管注意義務を尽くせるのか、というかなりシビアな問題があります。
ということで、すでにご紹介した上記3社のとおり、監査等委員会を4名体制として、うち社外取締役を3名とするのがベストではないでしょうか。この体制であれば「執行と監督の分離」による迅速果断な意思決定を支える監査体制と外部からも評価されるでしょうし、また監査等委員と経営執行部が対立した場合でも、監査等委員会が機能しなくなるというリスクを低減できます。ただ、監査役会設置会社と異なり、監査等委員会は組織監査が原則なので、4人が2対2に分かれるような意思決定となると監査自体ができなくなってしまうというリスクはあるかもしれません。指名委員会等設置会社の場合には取締役会でコントロールできますが、監査等委員会設置会社の場合には、株主総会での選任・解任となるので、やや問題が残るところです。
6月総会会社のリリースをみておりますと、監査等委員である補欠取締役を一気に2名選任する会社もありますし、「攻めのガバナンス」をどのように機関設計に活かしていくか、各社の工夫が感じられます。
PS リスクモンスター社も監査等委員会設置会社への移行を正式に表明されましたね。たいへん失礼いたしました<m(__)m>。
| 固定リンク
コメント