« 取締役が監査役に通報したことで不利益扱いを受ける場合とは? | トップページ | 東芝不適切会計事件への雑感(その2)-ガバナンス・コードとの関連で »

2015年5月18日 (月)

東芝不適切会計事件への雑感(その1)-第三者委員会調査に求めるもの

すでにご承知のとおり、東芝社の工事進行基準の不適切適用等に伴う会計不正事件について、第三者委員会の設置、およびそのメンバーが決まりました。本件についてはグループ全体における会計処理に関わる事件であり、厳しい時間的制約があるために、どこまで事実が解明できるかは不明ですが、ぜひとも第三者委員会には明らかにしていただきたい点が2点あります。

ひとつはやはり「故意による不正」なのか「ミスによる誤謬」なのか、という点です。粉飾といわれるものなのか、それともミスによる不適切会計処理だったのかということを明確にしていただきたいと思います。もし「故意による不正」だとすれば、これは東芝さん固有の事情に基づくものであり、内部統制の限界事例であり、他部門への影響も限定的です。しかしながら名門企業としての社会的名声には大きな傷がつくことになります。一方、「ミスによるもの」だとすれば、レピュテーションリスクは大きなものとは言えないかもしれませんが、ミスを発見できなかったということで、その監督責任が問われることになります。また、工事進行基準の不適切運用ということになれば、これはインフラ部門だけでなく、ソフト開発部門でも問題になりますので、内部統制の不備は多くの部門で問題とされ、その影響は全社的内部統制にまで及ぶことになります。会社側は第三者委員会の調査結果に委ねる、というところかと思いますが、いずれにしても東芝社のジレンマを感じるところであり、この点は事実を超えて評価になるかもしれませんが、ぜひとも第三者委員会に明らかにしていただきたい点です。

そしてもうひとつは「なぜ経営陣が不正を発見するに至ったのか」という不正発見の端緒です。どうしても世間的には2年前から表面化した東芝社の経営幹部の確執問題と会計不正問題との関連性について関心が向いてしまいます。とりわけ社長会見で「目標が高すぎたのではないか」といった発言が出ますと、支配権争いが原因ではなかったのか、といった憶測が飛ぶのも無理はないと思います。しかし、一方で不正リスク会計基準の適用や、工事進行基準に関する監査対応の厳格化、CPAAOB(公認会計士・監査審査会)による監査法人に対する審査の厳格化といった流れも無視できないように思います。いや、私個人としては世間の推測ということよりも、むしろ監査法人の対応の厳格化(今年初めから、私が強調している「公益の番人」の要素です)といったところが発端となって、東芝社の社内調査委員会設置につながったのではないかと推測しています。このあたり、仮に第三者委員会が日弁連ガイドラインに準拠して調査を行うということであれば、ぜひともステークホルダーへの説明責任を尽くし、また第三者委員会報告書の公共財としての使命を果たしていただきたいと思いますし、本件会計不正の発見端緒を明らかになることを願うところです。

しかし、コーポレートガバナンス・コードが適用される直前の時期に、東芝の社長さんから「内部統制に問題があった」との発言が飛び出し、またシャープの社長さんからは「ガバナンスに問題があった」との釈明が飛び出すというのも、なんとも皮肉なものに聞こえます。東芝社はガバナンスの理想である指名委員会等設置会社です。東芝社のガバナンスと会計不正問題との関係は、また(その2)で雑感を述べたいと思います。

PS 5月15日現在の監査等委員会設置会社移行表明会社(既移行会社)における従前ガバナンス状況を、こちらのエントリーで更新いたしました。いつもながら、迷える会計士さん、どうもありがとうございます<m(__)m>。

5月 18, 2015 不正リスク対応監査基準 |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/61605769

この記事へのトラックバック一覧です: 東芝不適切会計事件への雑感(その1)-第三者委員会調査に求めるもの:

コメント

その2も含めて、コメントさせていただきます。
1.指名委員会等設置会社は理想形と言われていますが、業務執行が大幅に取締役会から委譲されているので、伊丹先生を含めた監査委員が取締役会の付議事項、報告事項を検討されたり、経営委員会への陪席、決裁書のレビューなどをされても、今回のような執行部門であるカンパニーレベルでの会計処理問題には通常、関知できないと思います。ガバナンスモデルとして理想形と言えるのは、取締役の自己利益誘導に対する牽制や組織風土の改革等に限られると考えます。
2.工事進行基準に関しては、新規の技術を駆使したプラントやインフラ工事、海外工事になると、当初の原価見積もりで想定していなかった設計変更、仕様変更や追加工事、補償工事などが発生するため、これらを特定の個別工事原価に賦課するのか、研究開発費として間接部門を通じて関係工事に配布するのか、あるいは後続の同種の工事個別原価にも賦課するのかなど、判断の幅があり、一概にこれは適切、あれは不適切と断じることはできません。乱暴な言い方になりますが、大規模な工事が増えれば、100億円程度は誤差の範囲内と言えることもあります。不適切と断じるからには、意図的な歪曲処理が組織的に指示されていた事実認定が必要でしょう。
3.会計監査人の新日本は当然、リスクアプローチに基づいて、日立に対する劣勢挽回や内部抗争などの業績プレッシャーを評価し、大規模で新規性のい強い工事に対する工事進行基準の適用に監査重点を置いていたと思われます。監査委員会と協議を重ねて監査計画の策定や監査実施状況の報告を少なくとも四半期毎に行っていたはずで、それらの釈明を今後求められると思います。
4.第三者委員会にみすずとトーマツ出身の会計士2名が選任されていますが、短期間に少人数で上記2の判断の妥当性に関して結論を出すのはかなり困難が予想されます。個別工事の発生原価の精査に加え、現場部門や内部監査、ないしは社内調査委員会等からの積極的なネガティブ情報の提供があれば、可能かも知れません。

投稿: 森本親治 | 2015年5月22日 (金) 05時21分

森本さん、ご意見ありがとうございます。森本さんは当事者なので(?)、どこまでお聞きしてよいのかとまどいますが(笑)、いずれ監査法人さんの対応に問題がなかったかどうか、焦点があたるかもしれません。そのときはまた(ブログでも取り上げたいので)論点をはずしそうになればご示唆いただければ幸いです。

投稿: toshi | 2015年5月31日 (日) 23時57分

コメントを書く