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2015年6月22日 (月)

注目される東洋ゴム工業社の社外調査委員会報告書(本日公表)

(訂正とおわび:当初「第三者委員会報告書」と表記しておりましたが、政府主導の委員会が正式な第三者委員会であり、東洋ゴム工業社が調査を依頼しているのは社外調査委員会なので題名及びエントリー内容を一部訂正いたしました。誤解を招く表現であったことをおわび申し上げます)

(6月22日午前 追記しました。)

東洋ゴム工業社の人事に関する6月19日の日経新聞記事には驚きました。このたびの免震ゴム性能偽装事件の責任をとって東洋ゴム工業さんの代表権を有する取締役3名が同時に辞任される方針と報じられています(おそらく19日の同社リリースから推測しますと、23日の記者会見で明らかになるのでしょうね)。しかも今回の不祥事にもかかわらず、当初は代表者は続投とされていましたが、一部の社外取締役、社外監査役の強い意向があり、全代表取締役が辞任の決断に至った、とのこと。いずれにしましても、本日(6月22日)の午後1時半、同社では一連の事件経過等に関する社外調査委員会報告書第三者委員会報告書が公表されるそうなので、その内容が注目されます。私も夜にはなんとか読める時間がとれそうなので、ぜひ拝読したいと思います。ちなみに私の関心事については4月27日付けのこちらのエントリーで述べたところと変わりがございません。

先週お伝えしたオリンパスさんの中国贈賄疑惑事件や大塚家具さんの代表取締役交代劇もそうですが、社外取締役や監査役(社外監査役を含む)の意見が経営執行部に強い影響を及ぼす事例というのは、これまであまり伝えられることはなかったのですが、最近はニュース等で報じられることが多くなってきたように感じます。攻めのガバナンスといわれて、最近では東証一部上場会社の9割以上で社外取締役が選任されることになったそうですが、攻めであろうと、守りであろうと、選任された以上、会社が有事となれば社外役員が前面に出る覚悟が必要とされます。

いま、上場会社ではガバナンス報告書の改訂が行われている最中であり、私も数社の報告書改訂のお手伝いをしていますが、各社とも「取締役会評価問題」に腐心しています。取締役会は経営執行部とどのように協力し、またこれをどのように監視するのか、さらに株主にどのように責任を負うのか、という点について、これまで以上に意識せざるをえない状況にあります。たとえば企業不祥事を起こした局面においては、(コードにコンプライした以上は)株主への説明責任という点では、情報の非対称性を解消するためにも社外役員に大きな責任が生じます。また、短期的な業績回復のためであれば現経営陣の続行ということを肯定できても、今後の5年、10年を見据えた企業の在り方を検討することを重視するのであれば、企業存立の正当性(倫理的な側面)からの大きな経営判断が取締役会に求められます。

タカタ社、LIXIL社、シャープ社等において代表者選任議案、社外役員選任議案に対してISS、グラスルイス等の議決権行使助言会社が反対を推奨していることが6月19日の日経ニュースで報じられています。いずれもROE基準の問題だけでなく、有事において取締役会が機能しないことが懸念されることに起因しています。平時においては経営執行部と取締役会がいかに協力してスピード経営を推進していくか、というところに関心が向きますが、業績の悪化、大型M&A、社内抗争、企業不祥事等、会社の有事の場面ともなると、取締役の利益相反が顕在化する状況において会社はどのように株主と向き合うのか、その取締役会としての評価について、今後は上場会社自らが意識せざるをえないものとなります。

追記:本日の日経朝刊に本日公表予定の報告書が300頁を超えるものであることが掲載されています。「要旨」が併せて公表されるのであれば、とりあえず要旨だけでも読みたいですね。

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コメント

同社の発表を注意深く見ていますが、本日発表されるのは外部の弁護士で構成されている調査チームの調査結果で、第三者委員会とは別の組織です。
第三者委員会は、国土交通省が設置した大学教授を委員長にした委員長の様です。

投稿: 山口 | 2015年6月22日 (月) 10時22分

たいへん失礼いたしました。さっそく訂正いたしました。ご指摘ありがとうございます。

投稿: toshi | 2015年6月22日 (月) 10時58分

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