社外取締役も株主総会で回答しなければならない時代到来か?
本日(6月25日)、これまで当職が2期(2年)取締役を務めてきた大東建託株式会社の定時株主総会において、取締役12名の選任に関する議案が承認可決され、私も再選していただきました。総会では10名の個人株主様からの質問がありましたが、いずれもレベルの高いものばかりであり、よく勉強されているなぁと感じました。なかでも二人目の株主の方は「○○社外取締役さんにお聴きしたい、○○さんからみて、当社の取締役会をどのように評価しているか、具体的な事例をあげて回答していただきたい」との質問でした。ちなみに私ではありませんが、○○さんは、議長からの指名を受けてこの質問に詳細に(約4分ほど)回答しました。
執行と監督の分離がガバナンス・コードで謳われ、また攻めのガバナンスにおける社外取締役の役割がクローズアップされる時代において、社外取締役に対する質問について議長である経営執行部が代わりに回答する、というのもなんだかおかしな話ではないかな・・・と思っておりました。大東建託の総会準備においても、もし特定の社外取締役を指名したうえで質問があった場合には指名を受けた社外取締役が直接回答しましょう・・・といった打ち合わせを社長(議長)としていました。「株主との対話」が求められる中で、社外取締役が取締役会をどのように評価しているのか、当該取締役会を通じて、社外取締役はどのように企業価値向上に貢献しようと考えているのか、株主の皆様が社外取締役から直接聞きたいと考えることも自然だと考えたからです。
本日の東芝さんの株主総会では、外務省ご出身の社外取締役の方が(不適切会計処理問題について)直接株主に陳謝されました(毎日新聞ニュースはこちら)。また、住友化学さんの個人株主の方からお聞きしましたが、6月23日の同社定時株主総会では、日本再興戦略に影響を与えた「伊藤レポート」で有名な伊藤邦雄先生でさえも、二つほどの株主からの厳しい質問に対して自ら回答されたそうです。会社側が単純に社外取締役を選任すればよい、というわけではなく、選任された社外取締役がどのような形で企業価値向上に貢献するのかが問われるのが今回のガバナンス改革です。ガバナンス改革は定時株主総会の在り方にも確実に影響を及ぼしているのであり、社外取締役は自ら質問に回答しなければならない時代へと変容しつつあるように思います。
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コメント
そもそも、議長が代わりにこたえることで、社外取締役の株主総会における説明責任が果たされる慣習そのものがオカシイわけで、これまでの常識が非常識だったと気づかされた、のではないかと思っていますが、いかがでしょうか。
社外取締役の役割期待を考えれば、日常業務執行については把握していないことが当然であって、そのような質問があれば、素直に把握していないと答えればいいだけであろうし、ガバナンスにかかる質問であれば答えなければ無用の長物であると自ら証明するようなものだと思います。
上場会社の総会対応をしていた時分にも、あまり難しい話ではないように感じていた部分です。
投稿: 場末のコンプライアンス | 2015年6月26日 (金) 10時12分
場末のコンプライアンスさん、ありがとうございます。「これまでの常識が非常識だったと気づかされた、のではないかと思っていますが、いかがでしょうか」たしかにそのとおりかと。ただ、現実にはこれだけでも実務的には大きな一歩かと思います。
元東芝さん、ご教示ありがとうございます。指名委員会委員長が回答する、という慣例はあったのですね。報道からはわかりませんでした。しかしこの質問からすると役員にとっては修羅場ですね。
投稿: toshi | 2015年6月26日 (金) 12時19分
田中社長によると、「当初は、当局から開示検査を受けていることの公表を控えるよう要請を受けていた」。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0P50DT20150625
2月12日に証券取引等監視委員会から開示検査を受けていますが、社外取締役はいつ知ったのか、適時開示すべきと意見をのべたのか、この辺りも問題になりそうですね。
投稿: 迷える会計士 | 2015年6月26日 (金) 12時39分
開示検査というのは、おそらく内部告発による検査開始ではないでしょうか。そうしますと、不確かな証拠資料による告発の可能性もあり、強制検査でもないかぎりは「自発的調査結果の報告要請」もなされているかと。もしこの段階で検査があったことを公表しますと、不適切な会計処理があったかのような印象を投資家にもたらし、かえって虚偽記載となる可能性もありますね。したがって、自主調査の結果が判明するまで公表を控えるべき、との経営判断にも合理性はあるものと考えています。
投稿: toshi | 2015年6月26日 (金) 12時49分