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2015年7月14日 (火)

東芝事件の第三者委員会調査は社内がひとつになってこそ価値がある

先週金曜日のエントリー「東芝社の不適切会計処理問題の原因分析は慎重にすべきである」にはたくさんのコメントをいただき、どうもありがとうございました。皆様方の東芝事件への関心の高さを改めて認識いたしました。有益なコメントが多いので、ぜひともコメント欄をご覧いただければ幸いです。

さて、7月20日過ぎに東芝社の不適切会計処理問題に関する第三者委員会報告書が公表される(予定?)とのことですが、ここ1週間ほどのマスコミ報道では「経営トップが粉飾を指示した模様」とか「●●は辞任は避けられない」「委員会は経営責任を厳しく追及する見通し」等、すでに報告書の内容が漏れているような記事が目につきます。ただ第三者委員会の委員や委員補佐は弁護士や会計士であり厳格な守秘義務が課されていますので、報告書が公表されるまでは関係者にも草案を開示しないものです。したがって、私は東芝関係者の方からのリークではないかと推測しています。

最近のマスコミ報道の中でももっとも気になりましたのが7月10日付けのこちらの読売新聞ニュースです。記事内容を一部引用をいたしますが、

東芝の不適切会計問題で、過去5年で営業利益(本業のもうけ)を過大計上していた金額が、最終的に計1700億円超に膨らむことが分かった。これまでは1500億円超になるとされてきたが、さらに200億円程度増えることになる。・・・(中略)・・東芝では、第三者委の調査と並行する形で、追加の独自調査をしており、そこで新たな利益のかさ上げが見つかったとみられる。

驚いたのが、第三者委員会の調査と並行して「独自の調査」を東芝さんが行っている、という点です。一般的には不祥事発覚時における第三者委員会調査が開始された際には、会社は全面的にこれに協力するため、独自の社内調査は(第三者委員会から委託される等がないかぎり)行わないはずです。しかしながら東芝さんの場合には並行して独自調査を行っているというのですから、その趣旨がよくわかりません(東芝さんの独自調査というものが、第三者委員会が既に把握している1500億円程度の追加の「利益かさ上げ」の事実を否定しているようでもなさそうです)。

「独自調査」で思い出すのが2011年の九州電力さんの「やらせメール事件」における第三者委員会調査と同社の社内調査です。九電経営陣は、第三者委員会による調査結果に納得ができないとして独自の社内調査を行い、「第三者委員会の認定事実のココが誤り!」と指摘した報告書を経産省に提出していました。ご記憶の方もいらっしゃるかとは思いますが、第三者委員会と九電側とが、認定事実の真偽につき真っ向から対立していました。

九電事件における第三者委員会の委員長のもとには、社内から多くの情報提供があり、この情報提供から、第三者委員会の委員長は証拠隠滅の事実を把握し、また「九電には有能な社員が多い」と認識されたようです(たとえばこちらの委員長のつぶやき)。このたびの東芝事件でも、中間報告の際には会社の独自調査の結果、36億円程度の追加の利益かさあげがみつかったとされていましたが、その後2000億円近い利益のかさ上げが委員会調査によって判明したということなので、第三者委員会の下へ多くの内部通報が届いたものと思われます。しかしながら、この通報事実に基づいた第三者委員会による事実認定とは別に、東芝独自の調査が行われているという点は、いまマスコミで報じられているように社内が一枚岩とは言えない状況を示している可能性があります。

これは第三者委員会としても、報告書を公表する際に、本当に東芝さんの独自調査というものが並行して行われていたのか、もし行われていたとすれば、何の目的のために行われていたのか、といった点について明らかにしていただきたいところです。やはり第三者委員会調査は、当該会社の自浄能力の発揮場面であり、企業としてステークホルダーへ説明責任を尽くす機会なので、認定事実や原因分析、再発防止策については信用性の高いものでなければならないはずです。しかし、調査対象となる組織内に支配権紛争等があり一枚岩になれない事情が認められると、第三者委員会への情報提供合戦となり、そもそも第三者委員会の認定事実の信用性にも疑問が呈されることになりかねません。

仮に課徴金処分の必要性があるために、証券取引等監視委員会の調査が開始されるとしても、やはり調査の端緒となるのは今回の第三者委員会報告だと思われます。第三者委員会報告書の信頼性を担保するためにも、ぜひとも東芝さんの社内抗争等が委員会調査には影響がなかった点を合理的な根拠をもって説明していただきたいと思うところです。

7月 14, 2015 独立第三者委員会 |

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コメント

東芝さんの件はFCPAに抵触しないのでしょうか?
米国NASDAQに上場しているので、れっきとしたIssuerになると思うのですが・・・
会計の部分でSECとかが動くと日本以上の騒ぎになりそうな予感がします。

投稿: Wada | 2015年7月15日 (水) 10時51分

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