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2015年7月 7日 (火)

社外取締役大増員時代に避けて通れない課題-会社補償制度とD&O保険

7月4日の日経朝刊一面に「役員の賠償、会社も負担-社外から迎えやすく」なる見出しの記事が掲載されています。会社法で明記されていない「会社補償制度(役員の対第三者賠償責任を会社が補てんする制度)」や「役員賠償責任保険」の保険料負担をすべて会社が負担することの是非について政府が解釈指針を示して、おおむね容認する方向にあるそうです。趣旨がほぼ同じような記事は こちらのロイターでも報じられています。社外取締役を迎える企業の環境整備については政府の成長戦略と関連性があることがわかります。

社外取締役の責任軽減のための施策については日本再興戦略改訂2015でも触れられていますが、経産省のコーポレートガバナンスの在り方に関する研究会の昨年12月の配布資料をみますと、すでに昨年12月ころから会社補償制度やD&O保険の実務見直しは検討されていますね。社外取締役が大幅に増員される時代を見据えて、その負担軽減を図ることが要請されているので、社外取締役さんを採用した企業には避けて通れない課題かと思います。いや、会社側は避けて通るかもしれませんが、社外取締役さんにとっては自己防衛の意味で重要ですね。D&O保険を導入している上場会社さんは9割を超えているものといわれていますが、そのほとんどが会社と保険会社との「おつきあい」の一環として導入されているようなので(笑)、社外取締役本人が「どんな場合に保険が下りるのか」きちんと把握しておかないといけません。

ちなみに、D&O保険の改訂や会社補償制度の解釈問題など、今後の改正を理解するにあたっては、まず現状を把握しておくべきですが、旬刊商事法務2032号~34号「D&O保険をめぐる諸論点(上・中・下)-役員就任環境の整備」なる座談会記事が、対第三者責任に関する会社補償制度、D&O保険制度、対会社責任に関するD&O保険制度に分けて問題点を検討されており、非常に参考になります(とくに東大の山下先生の法解釈が有益だと思いました)。ただ少し議論のレベルが高いので、社外取締役の皆様へはこの議論をややわかりやすく解説する「橋渡し」が必要かもしれませんね。

またこれらの論点を関連して、(当ブログでもしばしばとりあげている)「社外役員の職務と業務執行の区別」や「過失と重過失との区別」「社内取締役と社外取締役の間で紛争が発生した場合の保険の取扱い」「社外取締役就任契約」なども、今後は法律家だけではなく、一般の社外取締役就任者にもわかりやすく解説がなされる必要があると思います。社外取締役さんにとっては重大な課題であるにもかかわらず、社外役員を迎える環境整備などは会社側にとってはそれほど喫緊の課題と考えていないかもしれないので、当ブログでも、これから少しずつですが取り上げていきたいと考えています。大陸法系の日本と英米とは法制度が異なることは事実ですが、会社補償制度やD&O保険に配慮しているかどうか・・・、そういった取り組みがなされている企業こそガバナンスの運用が適切だと評価される時代が来るのかもしれません。

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