社外取締役からみた取締役会評価における重要なポイントとは?
10月20日の日経ニュースにおいて、社外取締役の貢献度は高いと評価している上場企業が半数以上に及び、とりわけ独立社外取締役が3名以上選任されている企業では「貢献度が高い」と評価している企業の割合が8割にも及んでいるということが報じられています(エゴンゼンダーさんの調査結果をもとにした記事だそうです)。日本コーポレートガバナンス・ネットワークの関係者という立場からすれば、素直にこの結果には喜びたいところです。ただ、そもそもコーポレートガバナンス・コードにおける取締役会評価の指針に「コンプライ」している上場企業が圧倒的に多いわけですから、そのような企業は「社外取締役は事業に貢献している」と回答したい(回答すべき?)はずです。したがって、この回答結果をもって、本当に社外取締役が企業価値向上に貢献しているか(貢献していると思われているか)どうかは、実際のところよくわからない、というのが私のホンネです。
ところで金融庁では「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」というのが開催されているそうで、10月20日に開催された第2回会議の資料を拝見いたしました。取締役会をめぐる論点、とりわけ社外取締役の活用をめぐる取締役会評価などが議論されたようです。アジェンダを拝見しますと「形ではなく実質のあるガバナンスとはどういったものか」「仏作って魂入れず等と言われるが、では魂とは何か」といったことを、真剣に考えようとされている雰囲気が伝わってきます(私のように社外取締役でありかつ取締役会議長を務める企業は17社ほど、全体の0.5%だそうです)。
私はこの有識者会議で議論されるような高尚なことは言えませんが、取締役会議長を務める独立社外取締役の一人として、私なりの取締役会評価のポイントを申し上げますと、取締役会を支える事務局の存在を一番に上げたいところです。なんといっても独立社外取締役の「わがまま」を支える事務局の存在は大きい。「インサイダー情報の巣窟」ともいえる取締役会に参加をして、付議案件や報告案件の整理を行い、直前変更の荒業にも耐え、社外取締役への事前説明もこなす人材がいるからこそ社外取締役の貢献が可能になると考えます。時には「経営会議」と「取締役会」の隙間にある情報なども社外取締役に教えてくれます(これはけっこう貴重です)。あまり光は当たりませんが、何社か社外取締役を経験された方なら、優秀な事務局のありがたさを身に染みて感じておられるのではないでしょうか。
そしてもうひとつのポイントは、コーポレートガバナンスに精通した(熱心な?)取締役さんの存在です。最近は社外取締役が(任意の)指名委員会や報酬委員会の委員を務めたり、または社内取締役の業績評価を行う機会が増えましたが、そのような社外取締役の監督機能の実効性を高めるためには、様々な情報を入手する必要があります。もちろんすべての執行部門に精通した社長から情報を入手できれば良いのですが、社長にそんなヒマはなかなかありません。したがって、多くの執行部門にまたがって情報を入手でき、社外取締役制度などにも理解のある取締役さんがいるのか、いないのか、これは社外取締役が監督機能を果たせるかどうかの分水嶺になります。次の体制において誰を執行役員に上げるのか、この判断をひとつ間違えると組織のバランスを失いますし、数字以外の定性的な業績評価も多くの議論が必要です。会社から見て「社外取締役が貢献している」と判断されるためには、このような活動が求められるのであり、だからこそ能動的・積極的な情報収集に応えてくれそうな社内取締役さんの存在が不可欠だと思うところです。
最後になりますが、自戒をこめて「社外取締役の熱意」が必要かと。この「熱意」というのは、企業価値向上に貢献したい、ということですが、「空気を読む場面」と「空気を読まずにあえて行動する場面」をどう使い分けるか、そのバランスへの配慮こそ熱意の現れだと認識しています。そういった意味では、独立社外取締役が3名以上存在する(私が社外取締役を務める会社はいずれも3名です)、ということはとてもありがたいですね。
| 固定リンク
コメント