企業価値向上を邪魔しない監査等委員会設置会社の条件-前編
いつも有益な情報をいただいている迷える会計士さんから、9月の定時株主総会を終えた上場会社のうち、今年度監査等委員会設置会社に移行した会社の取締役会構成に関する調査結果をご教示いただきました(いつもありがとうございます<m(__)m>)。以下に情報を列記いたしますと、
9月総会までに監査等委員会設置会社に移行した会社のうち、ガバナンス情報を更新していない会社を除く190社の分析結果
1 監査等委員会設置会社の社外取締役数
社外取締役2人 94社
社外取締役3人 64社
社外取締役4人 23社
社外取締役5人 9社2 常勤取締役監査委員の数
常勤取締役監査等委員3人 1社
常勤取締役監査等委員2人 14社
常勤取締役監査等委員1人 150社
常勤取締役監査等委員0 25社3 監査等委員会委員長の内訳
監査等委員会委員長が社内 121社
監査等委員会委員長が社外 65社
監査等委員会委員長なし 4社4 その他の情報
平均社外取締役数 2.72人
平均取締役数 9.55人
平均社外取締役比率 28.5%
社外取締役比率が三分の一以上の会社 60社
社外取締役比率が二分の一以上の会社 9社
監査等委員である社外取締役以外に社外取締役を選任している会社 30社
とのこと。監査等委員会設置会社の現状を示した拙ブログのエントリーでは、今年5月17日の時点で「監査等委員会設置会社に移行を表明した上場会社のうち、それまで社外取締役がゼロだった企業は66%」であることをお伝えしましたが、現状では190社中、160社において監査等委員以外の社外取締役さんがいらっしゃらない(実に84%!)ということなので、この傾向は監査等委員会設置会社へ移行する上場会社の増加に伴って、ますます顕著な傾向となっていることがわかります。
ちなみに、私が6月総会の上場会社の総会招集通知等から調査したところでは、監査等委員会設置会社への移行に関する定款変更決議を可決した会社のうち、約9割において会社法399条の13、第5項、第6項に基づく重要な業務執行の(全部または一部の)取締役への委任を可能とする定款変更も行っていることが判明しています。つまり監査等委員会設置会社のほとんどにおいては(対外的に)指名委員会等設置会社と同様、指名委員会や報酬委員会に準じる役割を社外取締役さんに強く求めるガバナンス体制を標榜している一方で、社外取締役は監査等委員以外には置いていない、というのが現状のようです。
来年6月の定時株主総会で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行を検討している上場会社もかなりの数に上り、私自身、移行を検討されている企業からの相談などを受けることも増えています。また、(私がこっちのほうが相談件数が多いのですが)すでに移行した企業の運営上の課題なども少しずつ明らかになっています。そこで、迷える会計士さんからご教示いただいた情報をもとに、私なりの「企業価値向上を邪魔しない監査等委員会設置会社の前提条件」について検討してみたいと思います(以下、後編につづく)。
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