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2015年11月 8日 (日)

東芝会計不正事件-不提訴理由通知書の内容は如何に?

土曜日深夜まで仕事が続いていましたので、ようやく日曜日になって東芝会計不正事件の責任追及の訴え提起に関する会社側リリースを拝見いたしました。ちなみに同社責任判定委員会報告書(公表版)は9日(月曜日)にリリースされるそうです。東芝さんは元社長、元CFO等5名を提訴されたそうですが、請求額は内金請求として3億、今後10億超まで請求の拡張を予定しているとのこと。会計処理に直接携わらなかった、他の取締役さん方の監視義務や内部統制構築義務に違反したことを理由とする提訴はなかったようです。

新聞等では、「なぜ東芝は会見で(現社長を被告としない理由等)詳細な説明をしないのか」と批判をされていますが、これは提訴請求をした株主もしくは被告とされた元社長さん方からの請求がなければ明らかにできませんし、しかも明らかにするのは監査委員会(一部理由については取締役会)なので、やむをえないと思います。9日には責任判定委員会報告書が出るそうですが、この内容を読んでも、善管注意義務違反(もしくはその疑い)が認められた役員(元役員含む)について会社側がからなずしも訴訟を提起しなければならないわけではないので、会社側の判断はここでも明確にはわからないと思います。

とくに、今年7月24日付けで経産省「コーポレートガバナンスの在り方に関する研究会」から公表された「コーポレートガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」の「別紙3 法的論点に関する解釈指針」12頁以下では、「取締役の責任追及に関する提訴の判断」について、社外取締役を含めた監査委員会が、会社経営の見地から提訴すべきかどうか、その裁量権を広く認める解釈を妥当と判断しているので、「現社長は善管注意義務違反の疑いが強いとしても、企業のレピュテーションを確保するために、企業価値向上のために、東芝の建て直しのために経営に専心してもらう必要があるので裁判を起こさない(是非は株主代表訴訟に委ねる)」といった判断も十分考えられるのではないでしょうか。このような不提訴理由の判断基準が適切かどうか、私見はここでは述べませんが、日本の株主代表訴訟の制度は、欧米とはかなり異なっていまして、少数株主による(経営者の)法令順守に対する事後規制(欧米では自浄能力発揮の仕組み)という意味合いが強いので、そういった制度の趣旨と不提訴理由通知の判断基準の運用がかみ合っているのかどうか、という点は検討しておくべきではないかと。

いずれにしましても、東芝さんの会計不正事件に対する「自浄能力」を評価するためには、この不提訴理由通知書の中身をみなければわからないわけですが、これはリリースされませんので、なんとか知りたいところですね(7日付け会社リリースで引用されているのは法律家のみで構成された責任判定委員会の判断理由であり、経営をゆだねられた役員によって構成された監査委員会の判断理由ではありません)。

ところで、会社側から訴えられた5名の方には株主代表訴訟を提起することはできませんが、提訴請求をされた株主の方々は、請求を拡張するために会社法849条1項による共同訴訟参加(民訴法52条)をされるのだろうか?(株主代表訴訟とは異なり、裁判所に納付する印紙代はかなり高額?)、拡張された請求額が認められたり、高額な和解案を検討する場合、会社側の意思決定はどうするのだろうか?(だからこそ内金請求?)そもそも原告株主側の代理人弁護士の方は、もし勝訴した場合に果たして弁護士報酬はもらえるのだろうか?D&O保険はどこまで効くのだろうか?等、法律家としての興味は別のところに湧いてきますが、そのあたりはまた別の機会にしておきたいと思います。

11月 8, 2015 商事系 |

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コメント

「現社長は善管注意義務違反の疑いが強いとしても、企業のレピュテーションを確保するために、企業価値向上のために、東芝の建て直しのために経営に専心してもらう必要があるので裁判を起こさない(是非は株主代表訴訟に委ねる)」とありますが、現社長が退任したら、時効にかかっていない限り訴訟提起、という結論になるのでしょうか。

投稿: Kazu | 2015年11月 9日 (月) 15時53分

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