JR東日本社の「1口500円」野球賭博事件の違法性を考える
野球賭博問題といえば読売ジャイアンツの事件が記憶に新しいところですが、11月初めに100名以上の社員が賭博に関与していたとして、JR東日本福島支店が野球賭博の事実を公表しました。高校野球の優勝校を当てるもので一口500円、毎回15万円程度を集金し、当てた社員に配当する、というものだそうです(11月6日の福島民報のニュースはこちらです)。ニュース記事からすると、内部通報をもとに社内調査が行われたようです。
「一口500円なんて、遊びの範囲ではないの?」「それくらい、どこでもやってるじゃん」「そんなの摘発するくらいなら、もっと大きな不祥事の摘発をしろよ!」といった声が聞こえてくるようです。もちろん刑法の賭博罪に該当する行為ですから犯罪行為に間違いないわけですが、国鉄時代から行われていたようですし、余興の範囲内として、それほど批判の対象にならないのかもしれません。
たしかに個々の社員の犯罪行為の違法性は高いとは言えないでしょう。しかし、これを許す組織の違法性については調査をしてみなければわかりません。たとえ掛け金が500円だとしても、これが反社会的勢力との癒着を疑わせるような行為であったり、八百長など組織の社会的信用毀損につながる行為であったとすれば問題であり、これは実際のところ社内調査をやってみないとわからないのです。私が過去に経験した野球賭博事件の調査では、①胴元が存在するか、②ハンデがついているか、③背後に他の不正行為の存在を疑わせるか、といった点の判断がポイントでした。福島民報さんの上記ニュースでは、JR東日本さんがこれらのポイントをうまく説明しているように読めます。
①と②は、賭博の常習性や専門性が高まる可能性があり、いずれも反社会的勢力との癒着につながりかねないという点です。現に2011年には、キッコーマン食品さんの野球賭博事件において、胴元(賭場開帳?)とされた方が逮捕されたこともあります。③については読売ジャイアンツや大相撲事件でもおわかりのとおり、八百長が背後に隠れている可能性があり、慎重な調査が要求されます。今回のJR東日本さんでも、野球は全国大会等に出場するほどの名門なので、八百長問題への発展について調査を行う必要があったものと思われます。
そして最後は2013年の大阪ガスさんの野球賭博事件の際と同じように、社内調査の結果はきちんと所轄の警察署に報告をする必要があります(JR東日本さんも所轄の警察署へ報告されるそうです)。身内に甘い処分を行ったのではないとの姿勢をみせ、反社会勢力との癒着を疑わせる行為について、組織として徹底して排除していることを示さなければなりません(現実には数名の社員が書類送検される可能性はあります)。内部通報や内部告発の機運が高まり、また国際的にも賭博行為への規制が厳しくなる中で、「社内レクリエーション的な賭け事」への社内調査の要請が、今後高まるものと思います。
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