« 誠実な技術者の「誇り」が「驕り」に変わるときとは?-血液製剤偽造事件 | トップページ | 課徴金納付命令?-監査法人への制裁的行政処分の重み »

2015年12月 8日 (火)

東芝会計不正事件-残念だった監査委員会の会見

本日(12月7日)、東証ホールにおいて開催された「IPO経営者フォーラム」で講演をさせていただきました。2015年度、2016年度中に上場を目指しておられる企業経営者の方々向けに開催されるものでして、私とサイバーエージェントさんの藤田社長が「IPOの光と影」について語るというものです。たくさんのCEO、CFOの方々が(師走のお忙しい時期にもかかわらず)お見えになり、たいへん盛況でした。なお、東証さんは同じ内容のフォーラムを大阪(北浜)でも開催されるそうですが、上場を目前に控えた会社さんのためのフォーラムなので、一般の方の聴講は予定されていないようです。

当然私が「影」の部分をお話するわけですが、「光」といいましても、上場会社の社長15年選手の藤田さんのお話をお聴きしていると、サイバー社は決してこれまで順風満帆だったわけではなかったのですね。業績が好調のときには何をやっていても「やっぱり社長はスゴイ!」と持ち上げられ、業績が悪い時には同じことをやっていても「だから藤田社長はダメなんだ」とボコボコに批判をされてきたそうです。会社のステージが上がると、上がったステージにはそれなりの(海千山千の?)方たちが登場して、藤田さんのところにいろんな話が持ち込まれる。こういったところで浮かれることもなく、「(経営者は)言動がブレないことが大切。すぐには信用されないが、結果が少しずつでも伴って来れば、言動がブレないということが信用につながる」のだそうです。なるほど・・・、ちなみに私の言動は(当ブログの足跡をたどるかぎり)かなりブレてるかもしれません(^^;

さて、本日、SESCさんは東芝さんの有価証券報告書虚偽記載事件について、73億7000万円の課徴金処分を発出するよう金融庁に勧告を行ったと報じられています(SESCのリリースはこちら)。これを受けて東芝さんは社長さんや監査委員会委員の方々による会見を行ったとのこと。なぜ課徴金が73億円なのか、その計算の根拠等、よくわからないところもありますが、いずれにしても監査委員会はすでに会社が提訴している5名の元社長、財務責任者の方々に対する請求金額(3億円)を増額する予定であることを明らかにされました。

少し前の会見で、社長さんが「近々、監査委員会も会見に応じる予定である」と述べておられたので、実は勝手に期待をしておりました。責任判定委員会が元社長さんや財務責任者の方々5名に善管注意義務違反が認められる、との判断を下しましたが、では一体、この判定委員会の結果をもとに、被告とすべき対象者の範囲をどのような議論で特定されたのか、監査委員会としての独自の政策的判断はあったのか、これは監査役さんの善管注意義務にもかかわるものなので、ぜひともお聴きしたい、といった気持からでした。

しかしこれは私の空回りだったようです。日経ニュースのインタビュー内容からすると、請求金額の変更に関連するものばかりで、請求対象者の範囲に関連する話題はなかったようです。最近のニュースなどで、「東芝事件は刑事立件されない、なぜならば不正行為が組織のいたるところで行われており、故意を基礎付ける指揮命令系統が明らかにできないからだ」といった関係者証言も報じられていました。元社長さん方は、不正会計を容認していたとしても、具体的な不正会計の処理方針を自ら考えていたとは思えません。財務責任者の方々を含め、みなさん「社長月例」等によって発破をかけていたとしても、また「意図的な容認があった」としても、それは不作為による粉飾容認であり、元社長の意を受けて具体的にストーリーを描いておられた方の責任は不問に付されるということになると思います。また会計不正に一切関与していない人事担当の代表取締役さんの不正見逃し責任が認められた判決が出ている(ニイウスコー損害賠償請求事件判決 東京地裁平成26年10月21日)中で、他の取締役、執行役の不正見逃し責任は一切追及しないと判断したのはどのような理由なのか、どうしても知りたいところでした。

「責任判定委員会の結論に全面的に依拠した」というのであれば、それもまた監査委員会の判断かもしれませんが、まさか「請求額の増額をします」というだけで記者会見に監査委員会の面々が登場されるとは思っておりませんでしたので(増額の可能性があることはすでに責任判定委員会報告書でも書かれていました)、私個人としてはややガッカリいたしました。やっぱり提訴請求をされた原告の方々からの理由請求がないと理由は開示されないということなのでしょうね。うーーーん、残念。。。

12月 8, 2015 商事系 |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/62825997

この記事へのトラックバック一覧です: 東芝会計不正事件-残念だった監査委員会の会見:

コメント

 「元社長さん方は、不正会計を容認していたとしても、具体的な不正会計の処理方針を自ら考えていたとは思えません。」とありますが、元CFOだったり、過去の決算処理に具体的に関わった方が役員に出世して後輩の不正行為を・・・・というときは、ちょっと違うように思いますが、いかがでしょうか。

投稿: Kazu | 2015年12月 9日 (水) 13時25分

情報どうもありがとうございます。昨日は某社取締役会と重なってしまったため、欠席せざるをえませんでした。昨日から保護要件に関する議論が始まりましたので、欠席はとても残念です。NHKのクローズアップ現代の取材もあったようですね。

投稿: toshi | 2015年12月11日 (金) 00時28分

コメントを書く