不適切会計処理事件が違法配当事件に発展した事例-CHD
日本郵政さんが国内最大級の自社株買い(7300億?)をされるそうですが、特定の例外を除き、自社株買いは剰余金の範囲内で行うことが原則です。しかし剰余金の範囲を超過してしまい、ピンチに立たされている上場会社さんもあるようです。不適切な会計処理が行われていたとして、今年10月に第三者委員会報告書をリリースしているコネクトホールディングスさんが、それだけでは不祥事は終わらなかったことを公表されています(平成27年8月期の自己株式の取得に関するお知らせ)。適時開示のタイトルを読んだだけでは通りすがりそうなリリースですが、金商法会計の不正が会社法会計の不正を誘発してしまったという、かなりキビシイ事案です。
過年度の決算訂正によって子会社の売上高が減少、その結果として子会社株式の評価損が出たために、同社の剰余金も減少。訂正前の剰余金を基準として自己株式の取得を行っていたので、結果として約5000万円も剰余金を超過して配当してしまっていたそうです。
いやいや、関係者の方々はたいへんですね。同社リリースによると、自己株式の取得金額が剰余金合計額を超えている部分の補てん方法は今後検討されるとのことで、この違法配当になってしまったことに関する取締役の過失の有無、程度、責任については監査役会にて検討するとのこと。監査役さんにとっても有事ですが、1月5日に定時株主総会が開催され、そこで監査役の方々が交代されるそうなので、新しい監査役(会)において検討されるということでしょうか。
ちなみに会社と会計監査人との間で、剰余金減少の根拠となった会計処理方法についてかなりバトルがあったようですが、最終的には会社側が会計監査人の主張を全面的に受け入れたそうです(時期的に意見を出してもらうためには会計監査人の主張を認めるしかなかったのかもしれません)。ここでも(?)監査法人のドラマがあったようですね(なお、この会計監査人は来月の総会をもって退任されるそうです)。
おそらく、本件のケースだと、自己株式の取得に関する取締役会決議に賛成をしていた非業務執行取締役さん(取締役会に議案を提案している場合は別として)はセーフだとは思いますが、概ね違法配当事案では決議に賛成をした取締役さんも法的責任を負う可能性が高いので、やはり会計不正事件は「不祥事の芽」の段階から摘んでおく必要がありますね。コネクトHDさんが、今後どのように対処されるのか、注目しておきたいと思います。
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