テレビ会議システムにみる消費者庁地方移転問題への危惧感
本日(1月28日)、公益通報者保護法の実効性検討委員会(消費者庁)の第7回会合が開催されまして、私も委員として出席しました。今回から「試運転」としてテレビ会議が導入され(マスコミの方がたくさんお見えになっていましたので、またニュース等でも報じられるかもしれませんが)、河野担当大臣もテレビ会議でご挨拶をされました。
本日の委員会では公益通報者保護法の要件・効果の改正に関する議論が白熱しておりまして、議論の内容はまた別途お話したいのですが、おそらく消費者庁の地方移転に伴って委員会や有識者会議で多用されるであろうテレビ会議について気になることを述べたいと思います(日弁連の意見とは全く関係ございませんので、あらかじめ申し添えます 笑)。なお、私も日弁連の委員会にはときどき大阪弁護士会館のテレビ会議室から参加しておりますし、某社の取締役会議長として、テレビ会議出席の取締役さんの発言意欲を高める工夫もしておりますので、ある程度はシステムについては存じ上げているつもりです。
今朝の日経新聞(4面)でも報じられているとおり、政治家の方々は省庁の地方移転に積極的であり、官僚の方々は静観している状況だと聞き及んでおります。ただ正直申し上げて、テレビ会議を活用した委員会運営はかなりむずかしいのではないでしょうか。もちろん、「テレビ会議には故障が多い」といった物理的な問題ではございません(産経ニュースでは こんな記事もありますが、とくに私が出席した会議の進行に物理的な支障はありませんでした)。私が「むずかしい」と危惧するのは「コミュニケーションツールとしてのテレビ会議」です。
公益通報者保護法実効性検討会議は、座長の目を見ながら必死で手を挙げないと(笑)、発言の機会が与えられないほど活発な議論が展開されています(本日、私は2時間で3回しか発言できませんでした・・・(^^; )。委員会に直接出席していてもそのような状況なので、カメラの前に座っている出席者におかれては相当な努力をしないと発言の機会は付与されないのではないかと。とくに座長さんは(あいつ、何度も手を挙げているな・・・)といった「場の空気」を読んで発言者を指名することが多いでしょうから、そのような「場の空気」を共有できないテレビの向こう側の委員は大きなハンディを背負うことになります。
また、「人は見た目が9割」とまでは申しませんが、コミュニケーションをはかるためには言葉だけではなく、発言者の表情や話し方の認知も重要かと。とくに消費者庁の委員会等は、それぞれ立場の違う方々が出席して議論を重ねるわけでして、情報を単に伝達するのではなく、他の委員や座長、当局関係者を説得しようと努力するわけです。そのような重要な説得の場において、話し方や表情等がわからない(少なくとも遠くてわかりづらい)テレビ会議はほとんど機能しないと思うのです。現にテレビに映って挨拶されていた河野大臣が、その後、委員会に直接お見えになって再度挨拶をされたのですが、額に汗して黒光りするニコニコ顔で話をされている大臣を目の前にすると「ああ、やっぱりこの方は本気で移転を考えてるんだ・・・」と感じました。
そして、なんといってもテレビ会議では(良い意味での)「場外バトル」がないということですね。立場の違う人が根回し(意見のすり合わせ)をしたり、場外で「誤解を正す」、言い過ぎたことの反省をする、といったことは絶対に必要です(会議時間には限りがあるのです)。本日の委員会終了後も、いろいろと委員会ではバトルがありますが、それぞれ意見のすり合わせや誤解部分を確認しあったりするための「談笑の時間」が委員数名ずつ集まって盛り上がっておりました。みなさん、公益通報者保護法をよりよくしたい・・・という気持ちは一緒なのですよ。しかしテレビ会議参加者にはこのような機会が付与されないのですよね。コミュニケーション不足がそのまま人間としての信頼関係の補修不足につながってしまわないかと心配になります。
有識者会議の運営方法くらいで省庁移転の是非など論じることなどナンセンス、とお叱りを受けるかもしれません。しかし、消費者庁は消費者の意見、有識者の意見を国政・行政に反映させることも重要な役割ではないかと思いますし、その消費者の意見を聴く重要な場である有識者会議がテレビ会議中心になる・・・というのは、かなり危機的状況ではないかと考えるところです。帰り際「あなた、テレビ会議システムのカメラの前にひとりぼっちでも、この会議に委員として参加したいですか?」と、委員おひとりおひとりにお尋ねしたい衝動にかられました。
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