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2016年1月25日 (月)

取引所プリンシプルで第三者委員会制度(企業不祥事対応)は変わるか?

日本証券取引所は1月22日、「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」の原案を公表しました。パブリックコメントの募集期間は、本プリンシプルの早期実施を目指して、異例の短期間(意見募集は2月12日まで)となっています。取引所としては一昨年のエクイティファイナンスのプリンシプルに続き、二つ目のプリンシプルの策定・公表ということになります。

まず「不祥事やその疑惑が発生した場合の自浄能力」に光があてられているわけですから、経営陣に不正の疑惑がある場合、組織ぐるみと評価される可能性のある場合には、やはり社内調査委員会では対応できず、独立性が認められる第三者委員会の設置が強く求められるものと考えられます。従業員不正を早期に発見した場合等、社内調査委員会の設置で済むケースもありますが、経営者不正の疑惑がある場合や経営者による(従業員不正の)長期放置が問題とされる場合等では第三者委員会への社外役員の委員就任等も含めて、「どのような調査体制をとれば自浄能力を発揮していると評価されるのか」、企業側できちんと検討しなければならないと思います。

次に、上場会社において企業不祥事が発覚した場合、ご承知のとおり昨年の東芝事件をはじめ、多くの事件において「第三者委員会」が設置されるケースも多いと思います。昨年は東芝会計不正事件ばかりが注目されましたが、第三者委員会を3度にわたって設置し直し、その後に当局の立入調査が入って真相が究明されたケース、第三者委員会報告書の原因究明が甘いため、取引所からガバナンス問題が指摘された末、特設市場銘柄からの指定解除が大幅に遅れたケース、日弁連ガイドラインに準拠しているといいながら、報告書の全文が開示されなかったり、その独立性や客観性に多くの疑問が呈されたケースなどが散見されています。

やはり第三者委員会のベストプラクティスを議論しなければならない時期に来ているように感じます。不祥事が企業価値を毀損するものであるならば、早期の信用回復をめざすためにも第三者委員会の在り方を議論する必要があります。第三者委員会の設置方法だけが問題ではありませんが、有事の情報開示はそれ自体が取締役にとっては構造的な利益相反行動になるわけですから、上場会社の自浄作用全般にわたり見直しが求められます。

本プリンシプルが確定した後に、当ブログでも本プリンシプルの内容についてコメントしたいと思いますが、私が青山学院大学の八田進二先生とご一緒させていただく日本証券取引所の上場会社セミナー2016「形だけに終わらないコーポレートガバナンス」 (東京は2月25日、大阪は3月3日)においても、このプリンシプルの内容とともに、(私の経験に基づく)第三者委員会制度の課題、問題点や、「上場会社の自浄能力が発揮された」と評価される第三者委員会の活用手法について意見を述べる予定にしております(もちろん個人的な見解です)。どうか多数のご来場をお待ちしております。

原案の「趣旨」にも記載されているとおり、本プリンシプルへの充足度が低い場合であっても、取引所が根拠なく上場会社に対する措置を発動するわけではありません。しかし、このプリンシプルが策定されるに至った背景事情、会計不正事件によって過年度決算訂正に至った上場会社に対する取引所の膨大な質問が提出される状況等からみて、本プリンシプルへの充足度が低い場合には、上場企業には諸々の企業リスクが想定されます。不祥事に直面していない平時の上場会社こそ、有事における不祥事対応プリンシプルの理解が必要だと思います。

1月 25, 2016 ディスクロージャー |

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