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2016年2月22日 (月)

シャープ再建支援策の選択と社外取締役の「特別利害関係者」該当性

Sharp0912社内の権力闘争を扱ったノンフィクションは大好きなので、さっそく週末に「シャープ崩壊~名門企業を壊したのは誰か」(日本経済新聞社編 1,600円税別)を読みました。

関西在住の50代のオッサンとして、あのシャープさんがこのような状況になってしまったのはいまでも信じられません。しかしコーポレートガバナンス改革が謳われる昨今、何が名門企業の価値を毀損していったのか、社内クーデターの勃発など、ガバナンスの側から眺めていくとナットクするところがあり、他社への警鐘(「形だけのガバナンス」への痛烈なる警鐘)にもなる一冊です。クーデターを起こす側も、また防御する側も、昨今の「ガバナンスコード」の考え方は自陣の行動を展開するにあたり、有利に援用できることがわかります(つまり「体制を変える」ということは理屈よりもパワーであり、勝てば官軍、勝利したら理屈は後からなんとでも言える、ということがわかってきます)。

そのパワーゲームの象徴が、なんといっても台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の存在です。ここ5年、シャープの権力闘争の中枢に存在した当該企業に、シャープのガバナンスが翻弄されてきたことがわかります。「決めきれない経営者」「過去の成功体験がもたらす誇り→奢りによる経営判断の遅延」「社内政治の末の宿敵サムスンへの接近」等、ホンハイの戦略に「正義」が宿る要因には事欠きません。本書はこの2016年2月初旬までの産業革新機構の動きとホンハイの動きまで追っていますので、大詰めを迎えたシャープの再建支援策協議の課題についても理解が進みます。

ところで先週末あたりからマスコミで話題になっているのがシャープの社外取締役2名の「議決権はずし」です。2015年6月に実施した債務の株式化による優先株の消却をめぐる産業革新機構とホンハイとの再建支援計画案の違いから、優先株を保有するファンド出身の2名(シャープの社外取締役)は再建支援策を決定する取締役会の議決には加わることはできないのではないか、との意見が出されているとのこと。当該2名の取締役は会社法369条2項における「特別利害関係者」たる取締役に該当するかどうか、といったことが問題になっています。おそらくこの2名の社外取締役が決議に加わることができるか・できないかによって、再建支援策の決定内容が左右されるからこそ問題になっていると推測されます。

シャープの社外役員には、私も存じ上げている著名な大先生(弁護士)がいらっしゃるので、たとえ地方弁護士による場末のブログ(このフレーズはひさしぶり・・・(^^; )の発言でも「何を偉そうに言うとんねん!」と叱られるかもしれず、以下の個人的意見は小声での「つぶやき」だけにしておきたいと思います(笑)。

おそらく弁護士による法律意見書にも記載されていると思うのですが、2名の社外取締役の方々の行動として問題となるのは再建支援策決定に向けての審議に加わることと、決議に加わることの適法性です。また、そのような「特別利害関係性」に疑義ある取締役が加わった取締役会の決議は無効になるのかならなのか、という点も考慮に入れて議論をする必要がありそうです。「提案内容」だけで考えるのであれば、当該2名の社外取締役さんは(おふたりともファンドの代表者たる地位にあるため)会社法369条2項の「特別利害関係人」に該当するように思います。

しかし、先の「シャープ崩壊」を読みますと、ホンハイのこれまでの行動から察するに、議論が必要なのは提案内容だけでなく、信頼に足るパートナーかどうか、将来的なシナジー効果はどうか、取引銀行との関係はどうなるか、といったことも含みます。そうなると、少なくとも審議についてはファンドご出身の2名の取締役の方々も参加すべきではないでしょうか(最近の会社法369条の解釈を前提とすると、「特別利害関係人」にあたる取締役は審議にも参加できない、といった説が有力なので、すでにこの段階で問題が生じていることになります)。

そして、当該2名の社外取締役の方々は、取締役会の再建支援策決定に関する議案については「特別利害関係者」には該当しないが(つまり審議には適法に参加できるが)、最終的な決議については実質的な利益相反状態が生じているものとして善管注意義務・忠実義務の一環として参加を控えるべきである、という解釈の余地が残ります。私的にはこの解釈が一番ナットク感が高いように思います。つまり、たとえ会社法369条2項の解釈問題をクリアできたとしても、不公正な手続きによって(忠実義務に反するような取締役による議決権行使があったとして)後日、取締役会の決議が無効になる、といったリーガルリスク(提訴可能性、敗訴可能性)を回避すべきではないかと。

2名の社外取締役の方々が「特別利害関係者」ではないとする点ではホンハイ側に有利な解釈ですが、最終的に「取締役の忠実義務」を持ち出して決議への参加を認めない点では産業革新機構側に有利な解釈です(取締役会議長はたいへんですね)。以上はあくまでも野次馬の私見にすぎません。結局最終判断はシャープ内部における権力関係(パワー)に依存するものであり、いまこそ内部権力が一枚岩になることがシャープ再建にとって最も大切だと(上記本を読んで)感じるところです。特別利害関係人であろうがなかろうが、忠実義務違反による不公正決議の可能性があろうがなかろうが、審議に参加する全員が一枚岩になることさえできれば、そもそもリーガルリスクはほぼ解消するものである(後で蒸し返すことは困難)、ということを忘れてはなりません。会社法が司法の場における権力闘争の武器として活用されるのではなく、ギリギリのところで組織が一枚岩になれるためのツールとして活用されることが最も大切だと考えます。・・・・・すいぶんと長い「つぶやき」になってしまいました。。。

2月 22, 2016 商事系 |

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コメント

登記先例(昭和41年民事甲第1877号民事局長回答)では、このような場合には、特別利害関係はないと考えていると思います。
また、最高裁判所の判決に照らせば、特別利害関係を有する取締役が議決権を行使したという一事をもって、決議に瑕疵があるとはされないようでして、逆に、特別利害関係がないにもかかわらず、審議から排除したり、議決権を行使させない方がリスクが高いといえそうです。

投稿: とおりすがりの商法研究者 | 2016年2月22日 (月) 22時25分

ご教示ありがとうございます。特別利害関係人にあたるかどうかは意見が分かれるところかとは思いますが、後段の最高裁判決については存じ上げなかったもので、もしお時間のあるときにでもどちらの判例かお教えいただければ幸いです。

投稿: toshi | 2016年2月22日 (月) 22時49分

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