« 自浄作用が発揮されない企業には事後規制(刑事処分)が待っている | トップページ | 旭化成建材社のデータ偽装問題にみる「平時型二次不祥事」の脅威 »

2016年2月 7日 (日)

外国公務員贈賄疑惑(FCPA、不正競争防止法違反)はどこまで開示すべきか

2月5日、オリンパスさんはHP上に「当社子会社に対する米国司法省の調査に係る追加の特別損失の計上に関するお知らせ」と題するリリースをアップしておられます。この海外不正事件は昨年5月に「米国医療事業関連活動に関して平成23年11月より米国司法省の調査を受けていた事件」としてリリースされた件の続編リリースですが、このように突然特損の追加リリースが出されるのが海外不正事件疑惑の特徴です。

ところでひとつオリンパスさんの事件で気になるのが、昨年6月に朝日新聞「法と経済のジャーナル」で報じられた中国国内における「コンサルタント契約問題」(海外公務員への贈賄疑惑)です。オリンパス社の社外監査役さんの要請で「中国におけるコンサルタント契約に関する事件」が社内調査の対象になりました。たしか当時の会長さんが取材に応じられて、社内調査が開始されたことが報じられ、さらに同ジャーナルでは昨年10月に調査報告書を経営陣に提供されたことが報じられました。中国税関当局への贈賄事件だと報じられていますが、外国公務員への贈賄は米国、中国、日本でそれぞれ現地法違反が問題となります。したがってFCPA、不正競争防止法違反事実の有無等、はたして社内調査の結果はどうだったのでしょうか?

FCPA疑惑の場合、米国司法省による捜査対象となり、弁護士秘密特権や弁護士作成文書保護の要請がありますので、社内調査には外部弁護士が加わり、報告書は米国の司法制度に耐えうるものとして作成されているはずです。したがって日本の第三者委員会報告書のように全文が開示されるということはありません。しかし中国における贈賄事件が事実だとすれば、(今後の捜査進展の状況次第では)制裁金の金額は投資家の損害につながる事件なので、社内調査の概要の結果だけでも開示する必要はないのでしょうか。それとも未だ中間報告ということなのでしょうか。このあたりは投資家への適切な開示という視点からとても気になっているところです。

経産省の外国公務員贈賄防止指針(平成27年7月改訂版)などでも、親会社による海外贈賄事件の調査はとてもむずかしいことが示されています。たとえば現地子会社のトップや担当者のヒアリングはできたのでしょうか、また代理店(コンサルタント会社)の担当者のヒアリングは可能だったのでしょうか。この現地の二者のヒアリングが困難ですと、たとえフォレンジック等を活用したとしても、そもそも違反事実は確定できないものと思われます。また、コンサルタント会社のオ社子会社との取引比率やコンサルタント委託事業の内容、資金の流れなども、ゼネコンによるわいろ疑惑と同じような「不自然さ」が認定のキモになります。さらに、調査委員会の結論が「真っ白」だったのか「真っ黒」だったのか、それとも「グレー」だったのかも注目です。先に述べたように、関係者ヒアリングがとても困難なのが実際のところなので、「真っ黒」というのはなかなか認定はできず、「社内調査の限界としてのグレー」という結果だとすれば、かなり疑惑が深まるということになるのではないかと。

本日、某研究会で、某メーカーの会長さんから、ロシアでの事業開始直前、同国公務員からわいろを要求され、これを拒否したことによって事業が1年以上停止し、たいへんな損害を被った話をお聴きしました。業界挙げて外国公務員への贈賄禁止に取り組む必要性を語っておられましたが、私自身も本当に海外贈賄への取り組みの必要性を痛感しています。当初から何らの開示もなければ問題にはなりませんが、中国における贈賄(と思料される)疑惑について社内調査が開始されたとマスコミ報道がなされたこをと前提としますと、オリンパスさんにとっても、何らかの追加開示が必要になってくるように思うのですが、いかがでしょうか。いずれにしましても、社外監査役から調査要請のあった「海外不正疑惑」を発生させたオリンパス社の内部統制には、かなり重大な問題があったのかもしれませんね。

2月 7, 2016 コンプライアンス経営はむずかしい |

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104680/63174793

この記事へのトラックバック一覧です: 外国公務員贈賄疑惑(FCPA、不正競争防止法違反)はどこまで開示すべきか:

コメント

コメントを書く