自浄作用が発揮されない企業には事後規制(刑事処分)が待っている
東洋ゴム工業社とその子会社が免震ゴムの性能データを偽装していた問題で、大阪地検特捜部は、取引先関係者から不正競争防止法違反(誤認惹起表示)容疑で告発状の提出を受け、これを受理する方針と各マスコミで報じられています(当時の担当者らの関与について捜査する方針を固めたとのこと)。
昨年7月、木曽路さんの不正競争防止法違反事件に関する こちらのエントリーでも書きましたが、やはり自浄作用が発揮できない企業不祥事には事後規制としての刑事処分が待っている、と考えるべきです。東洋ゴムの新社長さんは昨年11月、「旧経営陣には損害賠償請求は考えていない」と述べておられました(たとえば山陽新聞はこちら)。また、防振ゴムに関する三回目の偽装事件が発覚した後の外部調査委員会も中途半端な事実認定に終わってしまい、組織の構造的欠陥の究明がなされないままになっていると評価されています(たとえば産経新聞ニュースはこちら)。このように東洋ゴム工業さんにおいて、未だ自浄作用を発揮していないのであれば、もはや原因究明のために刑事処分が活用されることは十分予想されたところです(前にも述べた通り、最近は消費者取引においても不正競争防止法が活用される時代になりました)。
日本の両罰規定の法的性質から、関係者の犯罪実行を前提として法人が処罰されるわけですが、誰のどのような行為に問題があったのか、司法当局によって徹底的に究明されることが予想されます。ただ、不正競争防止法における法人処罰としての罰金(誤認惹起は3億円以下)は「ペナルティ」ではなく「サンクション」だといわれており、道義的責任を追及する(法人の消滅もやむをえない)ということよりも、再生のためにお灸をすえるといった意味合いが強いと考えられます。したがって、この機会にこそ、グループ全体としての不祥事体質にメスを入れて、不正に立ち向かえる自浄能力を備える組織になっていただきたいと願うところです。
他社さんにおいても、様々な社内力学によって不祥事の真相解明に消極的になってしまうこともあるかもしれません。東洋ゴム工業さんの事例は、組織の不正リスク管理の在り方に多大な教訓を残すものと思います。
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