委員の胆力に敬意を表します-OFS第三者委員会報告書
(3月30日午後 追記あり)
すでにご承知の方も多いとは思いますが、3月29日、王将フードサービスさん(OFS社、東証1部)は、反社会的勢力との癒着の有無を主たる調査委嘱としていた「コーポレートガバナンスの評価・検証のための第三者委員会」による報告書を公表しました(東証の適時開示リリースはこちらです)。報告書を読み、委員にも、委員補佐にも、加えてOFS社役員にも(?)、CFE(公認不正検査士)仲間がたくさん登場することを初めて知りました。
会社側は「委員会調査により、反社会的勢力との関係が否定されたことでホッとしています」とのことですが、報告書をお読みになれば重大なポイントはそこだけではないことはすぐにおわかりいただけるかと。委員会の名前のとおり、まさにOFS社のコーポレートガバナンスの脆弱性が浮き彫りとなる「新事実」が報告書で明らかにされています(たとえば朝日新聞ニュースはこちら)。
この第三者委員会は、会社側からは主として「当社が反社会的勢力と関係があるか否か」という点についての調査を諮問されました。そして調査結果としては「関係があるとは認められない」との結論に至っています。しかしながら、当社のコーポレートガバナンスの評価・検証に必要と思われる過去の事実については広く調査範囲に含める、として、これまでOFS社が開示してこなかった「不適切な取引」の存在を公表しています。その結果として「OFSが東証に報告していた内容と事実は異なる」ということも認定しています。
おそらくOFS社としては、このように諮問の対象とはしていなかった重要な事実が調査の対象となり、しかも現時点でも(ガバナンスに影響を及ぼす事実として)大いに問題あり、と公表されることは予想されなかったのではないでしょうか。このたび第三者委員会が認定した事実と(これまで報じられてきた)ほかの関連事実を組み合わせますと、うーーーん。。。一昨日のお話の続きではありませんが、これがまさに会社経営者のためではなく、ステークホルダーのために調査を行う第三者委員会の姿ではないかと思います。
以上は私の感想も含んでおりますが、なによりもこの報告書を詳細にお読みになった方であればおわかりのとおり、この報告書が公表した内容は、今後社会的に大きな影響力を有するものになるかもしれませんね(30日未明に報じられた こちらの毎日新聞ニュースでは、早くも新事実に基づく新たな展開の記事が掲載されています。委員の方々も、どこまで報告書に書くべきか、かなり悩まれたのではないかと)。第三者委員会としての調査の限界に迫った委員及び委員補佐の皆様の胆力に敬意を表すると同時に、私自身も不正調査のプロとして、この報告書を作成した委員の方々の姿勢を見習っていきたいと真摯に思う次第です。
(追記)30日、王将フードサービスさんの株式取引は通常売買が成立せず、昨年来最安値となってしまったそうです。うーーーん、ここまでの影響力を予想しておりませんでした。第三者委員会の役割をあらためて痛感するものです。
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