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2016年3月 9日 (水)

監査等委員会設置会社への移行に反対する機関投資家登場

(3月9日午前11時30分更新)

消費者庁の公益通報者保護制度の実効性検討委員会も、いよいよ報告書案の審議入りとなりまして、大詰めを迎えています(本日の委員会を報じるTBSニュースでは、私も手前に映っています)。ただ、法制化についてはまだまだ検討しなければならないことが多いので、舞台はワーキングチームに移る予定です。

さて本題ですが、3月5日の日経ニュースで知ったのですが、米系運用会社(RMBキャピタルさん)がオプトホールディングスさんの定款変更議案に対して反対の意向を示しており、他の株主にも同調を訴え、委任状争奪戦も視野に入れていると報じられています。問題の定款変更議案は「監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行」に関する議案(特別決議が必要)で、反対の理由は

「社外取締役が少数株主の目線で役員の選任・解任や報酬に関与する仕組みを欠いている点を懸念」「企業統治の要諦は株主利益を毀損するような社長をきちんと解任できる仕組みにある、オプトの経営体制は株主保護の取り組みが不十分」

とのこと(あくまでも上記日経の記事からの抜粋、ということでのご紹介)。

「仕組み」という点から考えますと、監査役会設置会社よりも監査等委員会設置会社のほうが役員の選任・解任、報酬に(社外取締役が)関与する仕組みだと思われますし、これまで議決権を持たなかった社外監査役の方々が、議決権を有する取締役監査等委員に就任するわけですから、むしろ「社長をきちんと解任できる仕組み」と言えそうです。また、オプトさんは機関形態の移行のお知らせと合わせて敵対的買収防衛策の廃止についても開示しているのですから、ガバナンス・コードへの対応としても積極的だと評価できるようにも思えます。ではなぜ運用会社は委任状争奪戦を視野に入れてまで反対されるのでしょうか。

この話題のときは毎度申し上げるところですが、私はすべての監査等委員会設置会社への移行に反対しているわけではなく、迅速な経営判断と監査の重要性をいずれも重視する戦略をとる企業であればすぐにでも監査等委員会設置会社に移行すべきであり、ただ、「適当な社外取締役候補者がみつからない」とか「複数の社外取締役選任というコードへのアリバイ工作のため(制度対応のため)」といった後ろ向きの姿勢で監査等委員会設置会社へ移行することは企業価値を低減させてしまう、という考え方です。「形から実質へ」と議論が移っているガバナンス改革においては、このような考え方も次第に多数派となりつつあるのではないかと。

米系運用会社としては、「あるべき仕組」として指名委員会等設置会社を念頭に置き、指名委員会、報酬委員会の存在しない監査等委員会設置会社への移行について反対をされているのかもしれません。コーポレートガバナンス・コードにコンプライする企業であれば、監査役会設置会社であっても任意で指名委員会、報酬委員会を設置するであろう、そしてそこに独立した社外取締役が複数関与するであろう、そういった仕組も検討することなく監査等委員会設置会社に移行するということは企業価値を低減させる、という理屈ではないかと思われます。これまで上場会社の選択できる機関形態は二つしかなかったのですが、これが三つになりましたので、機関投資家としても「なぜその機関形態を選択したのか」といったことに関心が高まり、その分会社側の説明責任も重いものになります。

また、仮に「仕組み」自体には問題ないとしても「運用」について問題視している可能性があります。米系運用会社としては、監査等委員会設置会社へ移行すること自体に反対しているのではなく、たとえば①これまでの3名の監査役さんが全員、取締役監査等委員に「横滑り」していること、②監査等委員を構成する社外取締役さん以外には独立社外取締役さんを新たに選任していないこと、③補欠監査等委員も選任せず、必要最低限の人数の監査等委員のみ候補者として掲げているということは、そもそも社長とケンカをしてでも異論を唱える予定のない人たちばかりが監査等委員に選任されていると思われること、といったこと(制度の運用面)が原因で反対をされているのかもしれません。

いずれにしても、仕組みよりも運用に光が当たるガバナンス改革となれば、会社の施策については積極的に株主と対話を行うことで相互の理解を深めていく必要があります。オプトさんも、機関投資家と個別に「監査等委員会設置会社に移行する理由」「取締役監査等委員が、会社法399条の2、3項3号に基づいて個別取締役の指名や報酬決定に関与する仕組み」を説明することで、ある程度の理解を得られるようになるのではないでしょうか(少し甘いですかね??ちなみに、この運用会社さんは、日本株の運用実績を高めているようなので、他の監査等委員会設置会社移行表明企業に対する意見についても知りたいところです)。

3月 9, 2016 監査等委員会設置会社 |

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コメント

山口先生 おはようございます。本日の京都新聞のインターネットニュースには、「内部告発者名、市に伝える 京都、通報窓口の弁護士」が配信されています。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160309-00000005-kyt-l26 上記実行性検討委員会では、それぞれの立場の方々により「厳罰化の議論」が中心となっているのでしょうか?厳罰化を強烈に反対されている、または、ソフトに反対されている発言者は、背後に控えている武闘派の方の団体利益によるものなのでしょうか?消費者庁のワーキングチームでの活発な意見も密室ではなく、ストリーミングで配信されないと正確な力学関係がわからなくなります。すぐに、担当大臣が変わってしまう消費者庁なので心配です。アラシクステイ(60代付近)になった今、身体が不自由になり福祉・介護(業界)で、いつお世話になるかもしれない私自分を考えると、おちおちと老後をむかえることも心配になってしまいます。本日のタイトルから離れたお話になってしまい申し訳ございませんでした。

投稿: サンダース | 2016年3月 9日 (水) 09時27分

ありがとうございます。件の京都新聞ニュースは私も読んでおりまして、ビックリいたしました。同時に、私も委員会で何度も発言しているところですが(また記事のコメントにある升田副座長もおっしゃっておられるように)通報者の不利益禁止の趣旨を実現するためには匿名性への格段の配慮が求められるという点も再認識するところです。またブログで取り上げたいと思います。

投稿: toshi | 2016年3月 9日 (水) 11時13分

ありがとうございます。検討会もいよいよ最終回ですね。次回もたしか3時間ほど予定されていますが、私は次の予定がありまして最後までは在席できないかもしれません。でも頑張りますね。

投稿: toshi | 2016年3月13日 (日) 00時56分

指名委員会設置会社において指名・報酬委員を監査委員が兼帯して重複してるのがほとんどなので実態としては決定の強制力以外は監査等委員会と何ら代わりも無い様に見えますが。

一方で指名委員会設置会社だと株主総会では取締役を選解任できても指名・監査・報酬委員を選解任できない点

(社外取締役の3人以上存在する場合、都合の悪い社外取締役を指名・監査・報酬委員から追い出して平の取締役のままにできてしまう)

や指名・報酬委員に取締役兼帯の代表執行役がなれるので監査役会設置会社よりも完成された社長専制が実現できてしまう点は結構問題があるように見えます

(加えてクックパッドの様に取締役間の対立回避の調整の結果、指名委員会の決定覆しで会社法違反の可能性浮上する)

監査役でも監査委員でも監査等委員でも社長とケンカをしてでも異論を唱える予定のない人たちはダメなことには代わりないので組織変更反対理由としては弱い気もしますが

(取締役任期一年だと株主総会から配当などの決定権を剥奪できる定款設定ができるから反対するならともかく)

投稿: 流星 | 2016年3月13日 (日) 17時34分

オプトの株主総会決議があったみたいですが、どれぐらいの差で決定されたのでしょうか?ネットで探しているのですが、情報出てきません。それから関係ないかもしれませんが、オプトの社外取締役にワタミ出身者がいますね。この方以前の社長にものを申すような方だったのでしょうかね。

投稿: 工場労働者 | 2016年3月28日 (月) 20時43分

別の会社ですが、オプテックスで監査等委員会設置会社への移行が総会前日に撤回されました。機関投資家が反対することの多い剰余金配当の取締役会授権かつ株主提案権の排除が定款変更に盛り込まれていたので、監査等委員会設置会社への移行ではなくそちらが理由で反対票がつみあがった可能性があります。
取締役任期が2年だったので撤回して問題ありませんでしたが、任期1年だったらどうなっていたことやら…

投稿: ty | 2016年4月 1日 (金) 14時26分

オプテックスが6月に臨時総会を開催して、再度監査等委員会設置会社への移行をはかるようです。今回は剰余金決定の取締役会授権は盛り込まれていません。
#なお、取締役の任期は満了していたようです。私の勘違いでした。

投稿: ty | 2016年4月16日 (土) 11時18分

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