東芝会計不正事件の展開は(日米両国で)いよいよ本格化?
東芝の米国子会社がDOJ及びSECから情報提供を求められているとのことで、内容はこのたびの一連の会計不正事件について、第三者委員会が調査した件に関するものだそうです(長崎新聞ニュースはこちらです)。発覚したのは、海外子会社社員2名によるブルームバーグへの情報提供によるもの。ちなみに、リリースされた後、東芝さんの株価にはほとんど影響がなかったようですね。
昨年7月21日の拙ブログ「東芝不適切会計事件-第三者委員会報告書(要約版)への雑感」でも書きましたが、今後証券取引所法違反やFCPA違反(真正帳簿作成義務、内部統制構築義務違反)で刑事訴追や行政罰(民事制裁金)が課されるとなると、その影響はけっこう大きいものではないでしょうか。たしかに集団証券訴訟への対応だけであればそれほどでもないと思いますが、司法取引の合意が明確になるまでは刑事処分や行政処分の内容が開示されないと思いますので、ウェスチングハウス社を中心に、まだまだ事件の実態解明はこれから本格化するのかもしれません。とりわけ「監査法人に圧力をかけて不実記載に及んだ」ということになると、エンロン事件を経験している米国ではキビシイ対応が待ち構えています。
さて、昨年の上記ブログでも触れましたが、私的にもっとも興味があるのは第三者委員会が収集した証拠についてはDOJやSECに「捜査協力」として提出する必要があるのかどうか、という点です。現在は米国子会社に対する捜査協力を求めているにすぎないようですが、親会社にも協力要請があった場合、これを拒否できるかどうか。これまで「第三者委員会といいながら実は第三者委員会ではない」と批判されていましたが、東芝さんにとってはこれが吉と出るか凶と出るか、とても関心があります。
日本の証券取引等監視委員会の特別調査課も、東芝さんの元経営者の方を任意聴取したと報じられていますので、日米の捜査協力が本格化することも予想されます。さらに、本件記事がまさにそうであるように、海外子会社では今後ますます関連事件に関する内部告発が増えるものと予想します。私は以前、日経ビジネスさんの取材に対して「関係者が刑事処分を受ける事態にまで発展することはないのでは」と回答しましたが、ちょっと甘かったかもしれません(ひとつだけ言い訳をさせてもらえるならば、日経ビジネスさんや今月号の文芸春秋さんが掲載しているように、次から次へと証拠価値の高い内部告発が出てくるとは思ってもいなかったのです-たいへん失礼いたしました)。
現在係属しているノバルティスファーマ日本法人元社員の刑事裁判でも明らかなように、近時の企業不正事件の進展には傾向がみられます。自浄能力を発揮できず、組織の構造的欠陥がそのまま放置されていると看做された場合には、最終手段としての刑事処分が発動されることになりますが、東芝さんの場合はどうなるのか、今後の展開を見守りたいと思います。
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コメント
日本市場縮小を理由とした安直な海外進出が増加する一方で、海外市場から追い出されない為に海外政府の要求や圧力にどこまでも屈服する必要性が増してきそうな感じですね
終身雇用のメリット減退やヘッドハンティング常態化で転職先への手土産としての内部告発の価値も健在という感じですが
東芝の場合は原発を拡充したりカザフスタンと関係あったりでアメリカなり原発ビジネスで儲けるロシアの琴線に触れた部分
や米英型の指名委員会設置会社で不適切会計をやらかして、米英型の指名委員会設置会社を「米英型こそが最先端」と奢る海外投資家層からの私怨をかってる部分もありそうですが
投稿: 流星 | 2016年3月22日 (火) 02時42分
日経ビジネス自体が変質してきて、FACTA化してきています。
それからアメリカに一部上場している会社や取引のある会社は注意です。日本のようになあなあで済まされなくなってきています。東芝は今やもう、はっきり言って、ラオウに歯向かう雑魚のようなもの、死あるのみです。減損と米政府からの罰金、アメリカの投資家からの訴訟を含めると数年後にはあとかたもなくなっていると思います。経営者、取締役会と監査役会の責任が明確になっていいことだと思います。無能な経営陣には鉄の制裁を。
投稿: 工場労働者 | 2016年3月23日 (水) 14時01分
日経ではずいぶんと前向きな記事が出ていますが、日本取引所の清田CEOは開示姿勢が不十分でガバナンスは期待はずれだったと記者会見で述べています。ほんとに東芝のガバナンスはなんら変わってないですね。以下はNHKWEB。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160322/k10010452321000.html
投稿: とおりすがり | 2016年3月24日 (木) 10時24分