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2016年3月28日 (月)

企業の有事における「第三者委員会報告書」と「法律意見書」の境界線とは?

別にどの事例を想定して・・・とは申し上げませんが、最近の企業不祥事に関するマスコミ報道や企業側のリリースを読んでおりまして、「これは第三者委員会報告書だろうか?それとも企業側が依頼をした弁護士による(役員責任回避のための)法律意見書だろうか?」と悩むケースがあります。とりわけ著名な法律家の方が委員長として調査に関与して、その法的意見が述べられますと、司法機関による判断を得ぬままに、事実認定や法的評価が正しいものとして一人歩きしているように思える事例も散見されます。

組織の役員の法的責任が問われかねない場面において、「これは法的に問題がありそうだが、かろうじて民事・刑事を問われるほどではない(もしくは責任があるとは断定できない)として、組織としては猛省を促すが、個人的責任は不問に付す・・・といった趣旨が示されている報告書も気になります。一見、企業に厳しい姿勢で社外委員が臨んでいるようにみえて、実は個人の法的責任追及を回避するための巧妙な理屈が活用されているように思われます。まさに安宅の関における弁慶の勧進帳です。

もちろん企業不祥事発覚時における第三者委員会というものは法律上の制度ではありません。したがって「第三者委員会報告書」というものが、「こうでなければならない」といったルールもないわけですが、せめてマスコミが報じる事実認定やステークホルダーが責任認定の根拠として活用できるような有益な報告書かどうかは、区別する必要があるのではないでしょうか。すくなくともステークホルダーへの説明責任を果たすための報告書として作成されたのか、それとも不祥事を発生させた企業の役員の責任回避のため(つまり企業のリスク管理のため)に会社側にとってのみ有用な報告書として作成されたものなのか、明確にしなけば、国民に誤解を生じさせるおそれがあります。

たとえば(当ブログでも何度かご紹介している)第三者委員会報告書を任意に格付けする組織があります。これまでは第三者委員会報告書の出来栄えを絶対評価によって格付けをされていますが、ステークホルダーのための委員会報告書なのか、企業役員のための法律意見書にすぎないのか、そのあたりについて有識者による意見を述べる、ということも必要ではないかと。公式な機関がそのような評価を開示するとなると問題かもしれませんが、複数の有識者による意見ということであれば、マスコミや投資家が、評価対象とされた委員会による認定事実や法的評価について、どの程度信用できるか、といった判断を下すメルクマールにはなり得ると考えます。

私個人の意見としては、企業のリスク管理の一環として、企業側が法律専門家の意見を求めることは何ら問題があるとは思えませんし、役員個人の利益保護のために法律意見書を開示することも当然許容されるものと考えます。しかし、日本取引所から不祥事対応のプリンシプルが公表され、企業の自浄作用の発揮場面として、社会的に第三者委員会報告書の有用性が広く認知されるに至った現在、第三者委員会の独立性や公正性への信頼を逆手に取ってステークホルダーに誤解を生じさせるリスクも高まりつつあるように感じます。これは明らかに消費者や投資家、ひいては国民全体にとって望ましいものではないと思います。社外役員主導型の第三者委員会も形成されるようになり、第三者委員会制度の在り方を考えるにあたり、これは重要な課題だと認識しています。

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