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2016年3月30日 (水)

委員の胆力に敬意を表します-OFS第三者委員会報告書

(3月30日午後 追記あり)

すでにご承知の方も多いとは思いますが、3月29日、王将フードサービスさん(OFS社、東証1部)は、反社会的勢力との癒着の有無を主たる調査委嘱としていた「コーポレートガバナンスの評価・検証のための第三者委員会」による報告書を公表しました(東証の適時開示リリースはこちらです)。報告書を読み、委員にも、委員補佐にも、加えてOFS社役員にも(?)、CFE(公認不正検査士)仲間がたくさん登場することを初めて知りました。

会社側は「委員会調査により、反社会的勢力との関係が否定されたことでホッとしています」とのことですが、報告書をお読みになれば重大なポイントはそこだけではないことはすぐにおわかりいただけるかと。委員会の名前のとおり、まさにOFS社のコーポレートガバナンスの脆弱性が浮き彫りとなる「新事実」が報告書で明らかにされています(たとえば朝日新聞ニュースはこちら)。

この第三者委員会は、会社側からは主として「当社が反社会的勢力と関係があるか否か」という点についての調査を諮問されました。そして調査結果としては「関係があるとは認められない」との結論に至っています。しかしながら、当社のコーポレートガバナンスの評価・検証に必要と思われる過去の事実については広く調査範囲に含める、として、これまでOFS社が開示してこなかった「不適切な取引」の存在を公表しています。その結果として「OFSが東証に報告していた内容と事実は異なる」ということも認定しています。

おそらくOFS社としては、このように諮問の対象とはしていなかった重要な事実が調査の対象となり、しかも現時点でも(ガバナンスに影響を及ぼす事実として)大いに問題あり、と公表されることは予想されなかったのではないでしょうか。このたび第三者委員会が認定した事実と(これまで報じられてきた)ほかの関連事実を組み合わせますと、うーーーん。。。一昨日のお話の続きではありませんが、これがまさに会社経営者のためではなく、ステークホルダーのために調査を行う第三者委員会の姿ではないかと思います。

以上は私の感想も含んでおりますが、なによりもこの報告書を詳細にお読みになった方であればおわかりのとおり、この報告書が公表した内容は、今後社会的に大きな影響力を有するものになるかもしれませんね(30日未明に報じられた こちらの毎日新聞ニュースでは、早くも新事実に基づく新たな展開の記事が掲載されています。委員の方々も、どこまで報告書に書くべきか、かなり悩まれたのではないかと)。第三者委員会としての調査の限界に迫った委員及び委員補佐の皆様の胆力に敬意を表すると同時に、私自身も不正調査のプロとして、この報告書を作成した委員の方々の姿勢を見習っていきたいと真摯に思う次第です。

(追記)30日、王将フードサービスさんの株式取引は通常売買が成立せず、昨年来最安値となってしまったそうです。うーーーん、ここまでの影響力を予想しておりませんでした。第三者委員会の役割をあらためて痛感するものです。

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コメント

王将の調査書、興味を持って拝見しました。結局、A氏が絡んだ取引がなんだったのか、分からないということが分かってきました。フォレンシックを駆使して反社会勢力とのかかわりは(直接的には)ないとしていますが、このA氏の近辺を洗わなければ、総合的な関連性は見えないでしょう。ガバナンスのあり方、広報のあり方、問題点の指摘の仕方等、いろいろ参考になりました。

投稿: 工場労働者 | 2016年3月30日 (水) 10時08分

http://lite-ra.com/2016/03/post-2112.html

果たして、第三者委員会は反社会勢力に気づいていたのでしょうか?
それともAの名前を出すことで警察や世論が動くことを狙っていたのでしょうか?殺し屋はプロだったといわれています。気づいていて名前を出さなかった場合、プロの仕事と言えるか微妙かと。

投稿: 工場労働者 | 2016年3月30日 (水) 15時00分

ここは本文で書いたように、かなり委員の方々も悩まれたのではないでしょうか?リーガルリスクという面においては、最高裁まで争われた富士通元社長さんの裁判例を参考に、このような内容になったのではないかと。ただし警察や世論が動くことを狙ったということはなく、あくまでも第三者委員会の使命(ステークホルダーへの説明責任を尽くす)に沿って対応されたものと私は理解しています。

投稿: toshi | 2016年3月30日 (水) 15時41分

もやもや感が残りすぎるので、再度、王将の報告を読みなおしてみました。
一番の原因は前半の分析でA氏とB社が限りなく真っ黒だという報告をしているのに対し、51ページ目のフォレンシックで反社会勢力との取引の証拠は見つからなかったとしているところだと思いました。確かに社員のメールや資料から直接、反社会勢力との取引のメールは出てこなかったかもしれません。しかし、B社を調べずにフォレンシック結果だけを見て、証拠が出てこない、だからたぶんない、と結論付けていいのでしょうか。さらにB社のグループ会社についての分析がほとんどありません。これを記載せず反社会勢力との関係はない、と言っているところがよくわかりません。なぜ、このような報告になるのでしょうか。前半部分を書いた人と、後半部分を書いた人の意図が違うのでしょうか?また、考えてみます。

投稿: 工場労働者 | 2016年3月30日 (水) 17時08分

A氏は取引相手として不適切だったという点では前半はかなり踏み込んでいますが、後半ではマッシロだったとは認定していないと思います。当委員会も、業者調査によって48件のグレー取引先は認定しており、ただ継続審査がなされていなかったので、それ以上のマックロ認定はできなかったものと思われます。反社会的勢力の認定には属性要件と行為要件の双方が活用されますが、A社の場合には行為要件を満たすものではないので、明確な情報が得られない限り、最終的にはマックロとまではいえない、といった判断になったのではないかと思います。

投稿: toshi | 2016年4月 1日 (金) 16時38分

王将の第三者委員会の報告書に対する格付け委員会の評価が出ています。
実はこのサイトに以前、王将の報告の評価リクエストをメールで出しました。ほんとに評価があり、驚きました。中身は朝日新聞に次ぐ低評価でした。個人的には第三者委員会に銃弾2、3発食らってもいいので、A氏とか怪しい人物の調査をしてほしかったです。

投稿: 工場労働者 | 2016年5月29日 (日) 08時21分

格付け委員会でマイナス評価を受けている点については、私もビジネス法務8月号の論稿(来月出ます)で述べておりまして、ステークホルダーに対する説明責任(フォーカスすべき点)がやや世間とずれてしまっているのではないか、というのはご指摘のとおりかと。
ただ、委員会報告書の提言をここまでまじめに社長が実行に移している会社も珍しいのではないでしょうか。また、独立社外取締役が6月総会で常務取締役執行役員に就任するそうですが、「社外取締役」というだけでは第三者委員会の提言に応えることはできないとして、(弁護士の仕事を投げ打って?)業務執行役員になる方も出てきました。このような結果からみてもガバナンス評価・検証にフォーカスをしたことについては、私は前向きに評価しています。

投稿: toshi | 2016年5月29日 (日) 11時31分

FACTAに第三者委員会についてブログでコメント出ていました。

http://facta.co.jp/blog/

格付け委員会についても、甘いとか書いてあります。考えてもみませんでした。利権になっているとかボロクソに書かれています。そんな考え方もあるのかと思いました。たしかに、舛添さんの第三者委員はきついと思います。

投稿: 工場労働者 | 2016年6月 5日 (日) 19時37分

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