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2016年5月16日 (月)

セコム会長・社長解職劇-指名報酬委員会の透明性について

好業績が続いているにもかかわらず、セコム社の取締役会は会長さん、社長さんの解職を決議して、その結果、おふたりは任意で取締役たる地位からも辞任されたそうです。役員会では、取締役総数11名中、過半数である6名の賛成(解職動議に関して)が得られたということなので、先日の大手流通グループさんの件と同様、かなり微妙な判断だったように思います。

一体どのような経緯で社長解任劇に至ったのか、周囲は真相を知りたいところですが、そこはさすがセコムさん、情報の流出を避けるため、会長・社長さん方のために特別ポストをご用意され、関係者間でかん口令を敷いておられるようで、こういった社長解任劇における紛争解決の模範的な対応がとられたのではないでしょうか(これはあくまでも私個人の推測の域を出ませんが)。いずれにせよ、こういった経営トップの解任に至る経緯には、到底外からはわからない内部事情がありますので、そのあたりは内部告発でもないかぎりは真相は闇の中、外からはうかがい知ることは困難かと。

ところで、日経新聞ニュースや新社長さんへのインタビュー記事で気になりましたのが「指名報酬委員会の構成員が誰だったのか公表されていない」という点です。セコムさんは監査役会設置会社ですが、数か月前に指名報酬委員会を設置されたそうで、この委員会が実質的には会長・社長交代の是非について審議をされていたそうです。ところが一体どなたが指名報酬委員会の委員だったのか明らかにされていません。新社長選任経緯がこれでは不透明ではないか、創業者の世襲制を正当化するための道筋だと受け取られてもしかたがなのではないか、といったご意見が出ても不思議ではないと思います。

たしかに次期経営トップをどのようなプロセスで選任するのか、いわゆるサクセッションプランについては、採用の有無、選任方法について外部から見える形にすべきだというのがガバナンス・コードの立場かと。とくに社外取締役がどのような立場で指名報酬委員会に関与しているのか、という点は株主の皆様方にも関心の高いところです。社外取締役さんについては、たとえ法律上の独立性要件を満たしているとしても、経営陣と親しい紹介者なしで選任されるようなことはほとんどありませんので、どの社外取締役さんが委員なのか(経営陣の誰と親しいのか)、ということも株主からは知りたいところです。そう考えますと、選任過程が不透明ではないか、ガバナンスが機能していないのではないか、という批判も出てくることでしょう。

ただ、先日の大手流通グループさんの会長退任騒動においては、(どなたが流したのかは存じ上げませんが)、まだ指名報酬委員会の結論が出る前から、誰が人事案に賛成、誰が反対といった情報が連日マスコミで報じられていたことは記憶に新しいところです。誰が指名報酬委員会の構成員か、外からわかりますと、委員に対する取材攻勢が過激になったり、また経営権争いの道具として委員側からマスコミへのリークなどが活用されることが想定されるのではないでしょうか。

あの大手流通グループさんのケースでも、事業会社重要人事案が(親会社取締役会において)賛成票、反対票、棄権票に分かれ、無記名投票による議決権行使方法まで採用されました。おそらくリークされた指名報酬委員会の審議の状況は、その後の取締役会の議決権行使の結果にも多大な影響を及ぼすことが考えられます。そうだとすると、社内の紛糾状況を極力事前にリークされることを防ぎ、「自由闊達な取締役会での議論を実現するために、あえて指名報酬委員の構成メンバーを社外には公表しない」というセコムさんの判断も、あながちガバナンス改革の方向性からは逸脱しているとはいえない、という理屈も成り立つように思えます。

指名報酬委員会というものを、仕組みの面から考えれば経営判断の透明性向上に有用だと考えられますが、その運用をひとつ間違うと逆に透明性を減殺させてしまう道具にもなりうる、ということです。いずれにしても、指名委員会等設置会社の取締役でもないかぎり、善管注意義務が問われるような場面ではなく、株主を含めた社内外のステークホルダーに対する説明責任が問われる場面なので、一連の会長・社長解任劇の内実が、公明正大に行われたことが論理的に説明できるよう準備を整えておく必要がありそうですね。

5月 16, 2016 商事系 |

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コメント

警備会社となるとテロリストなどの内外犯罪者やスパイ等が役員に接触する可能性を考えると透明性の度合いが難しそうな気もしますね

投稿: 流星 | 2016年5月17日 (火) 09時41分

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