コーポレート・ガバナンス・システム研究会の活動に期待します
すでに新聞等では報じられていましたが、本日(6月23日)、経産省HPにて「CSG研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)開催のお知らせ」がリリースされています。我が国の制度や実態を踏まえた取締役会の機能向上を図る場合の考え方や実務について検討を行うことが目的とのこと。政府が後押しする「稼ぐ力を取り戻す」ためのガバナンス改革の取り組みの一つですね。
検討項目としては①取締役会の役割・機能(いわゆるモニタリングモデルの在り方とか実践例の検討でしょうか、権限委譲と監督強化は喫緊の課題ですね)、②CEOの選定・後継者計画、インセンティブ付与(サクセッションプランや特定譲渡制限付株式報酬、パフォーマンス・シェアの導入等の現物株支給ですね。開示府令の改正も予定されているようです。)、社外取締役の役割、社外取締役の人材の質的、量的な向上(攻めのガバナンスにおける社外取締役の役割や任意の委員会における役割、業務執行性の回避といった問題は悩ましいところかと)、そして④監査等委員会設置会社の活用といったことだそうです。
私自身も社外取締役として取締役会議長を務めたり、ガバナンス委員会委員や報酬委員会の委員を務めたりする中で、サクセッションプランの実施や(近時の税務訴訟の判例等を参考にしながら)中長期業績に連動する報酬体系の構築に携わり、人に言えない恥ずかしい失敗や挫折も経験しておりますので(笑)、いずれも関心のある項目ばかりです。経産省の研究会ですから(当然といえば当然ですが)企業ニーズに応えられる取締役会の機能向上といったことが検討されるものと思いますし、金融庁のフォローアップ会議でのご議論とともに、コーポレートガバナンス・コードの実効性向上のために有用な成果が出されることを大いに期待しています。
ただ、取引先やグループ企業との信頼関係、従業員と役員との協働関係、社長と社内取締役との(業務執行上の)上下関係、監査担当者と役職員との人脈を活用した情報収集等は(日本の企業では)ものすごく強いもの感じます。一時的にROEを高める施策を検討しても、売上高利益率を向上させるような結果につながるかどうかは、各企業の従来からの暗黙知に依存するところが大きいですね。コードの趣旨をまじめに社内に浸透させようとすればするほど、「この会社の売上高営業利益率を高めるインセンティブは(ガバナンス・コードを実施しているところとは)別のところで生まれているのでは?」と感じます。
経営者性悪説と経営者性善説と、どっちのガバナンスを検討するかは個々の企業の歴史をよく理解してから・・・というのが正解だと思います。アメとムチによるガバナンスを意識せず、アダム・スミスの「道徳感情論」に出てくるような「共感」や「誠実性」に依拠するガバナンスのほうがパフォーマンスを発揮できる会社が多いようにも思えます(アメとムチはむしろ「守りのガバナンス」のために活用するとか・・・)。半澤直樹のように、抜群の能力を発揮しても「組織としてのパワー重視」の前では出世できずに飛ばされてしまうのが日本企業の「強味」ですから(企業の危機管理の仕事をしていても、これは痛感いたします)。
以前も書きましたが、(法律や取引所ルールの枠外になりますが)業務執行を積極的に主導する社外取締役さんのいらっしゃる会社は魅力的ですね。目標設定に向けての道筋が明確に共有できており、引き算の経営(目標に向かって何が足りないのか、その足りないことを社外と社内でどう分担するか)についてのコミュニケーションもしっかりととれているように感じます。私が「社外取締役に対して説明責任を尽くすことがモニタリングモデルの基本ですよ」といったことを偉そうに申し上げたところ、「業務執行もやらないような社外の人にどうして我々のやっていることが説明して理解できるの?そんな社外役員に説明して社外の人がわかるようなビジネスモデルなら、とっくの昔に儲けるチャンスは失っているに決まってるじゃない(笑)」と、社長さんに一蹴されたこともありました。
そういえば王将フードサービス社の社外取締役(弁護士)さんも、「このままではほんとにこの会社の企業価値向上には役に立たない」と考えた末、弁護士活動をすべて中止して同社の常務取締役に就任されるそうです(定時株主総会の選任決議を条件として)。「国策ガバナンス」が世間で議論されている間に、「ほんとに儲かるための当社独自のガバナンス」を一生懸命探求しておられる方々も結構たくさんいらっしゃるのですね、悔しいですが。。。
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コメント
アメリカのファンドの中に不適切会計を調査公表して空売り仕掛ける者もいると聞きましたがそういった者が「必要悪」な状況になるのは避けたい所です
投稿: 名梨 | 2016年6月29日 (水) 23時51分
なかなかキビシイご意見、ありがとうございます。私もほぼ同感でございますが、現実には・・・
投稿: toshi | 2016年6月30日 (木) 02時06分