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2016年7月14日 (木)

監査等委員会設置会社の指名報酬委員会は経営者支配の隠れ蓑か?

コーポレートガバナンス・コードへの対応として、最近は(上場会社が)監査役会設置会社、監査等委員会設置会社において「任意の」指名委員会、報酬委員会を設置するケースが多いですね。5月18日の日経朝刊では475社の上場会社がこのような任意の委員会を設置していると日経新聞で報じられていました(現在は500社を超えているかもしれませんね)。最近の社内のゴタゴタ劇において、こういった任意の委員会が活用された事例も見受けられますし、セコムさんのように、委員会の透明性・公正性に疑問が投げかけられた例もありました。このような事例が増えているためか経産省の研究会では任意の指名報酬委員会の運営指針のようなものも検討されるそうです。

以前、私は新聞の取材に「監査等委員会設置会社に任意の指名委員会を設置することはあまり好ましくないのでは」とコメントしたことがあります。この考え方に対しては、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行に反対する機関投資家の方々は(たとえばRMBキャピタルさんのこちらのリリース等)「監査等委員会設置会社に移行するのであれば、過半数を独立社外取締役で構成される指名報酬委員会を設置することを条件だ」として、任意の委員会設置を好意的に受け止められておられることも事実です。

昨夜(7月12日)、比較的大きな上場会社の現役の取締役監査等委員の方と夕食をご一緒させていただきました。その方は、機関である監査等委員会の「監査等職務」についてもよく理解をされていて、指名委員会等設置会社の監査委員会以上に、経営面での重要な役割を果たさねばならないことを自覚しておられました。そして、その方は経営執行部が任意で指名委員会を設置する企画に強く反対されていました。社外取締役で監査等委員会の全員が、任意で設置される指名委員会の委員を兼務するように設計されているそうです。

CEOも指名委員会の委員として出席するところに監査等委員である独立社外取締役全員が含まれているということは、おそらくCEOの意向を中心にして議論が進むことは当然であり、そこで出てきた結論に対して監査等委員会としては「過半数を占める」社外取締役が指名委員会の意向に反する意見は出せないだろう、つまり監査等委員会の権限を骨抜きにするためには、任意で指名委員会を設置して、そこに社外取締役を押し込んでしまうことが一番良い方法ではないか、と考えられます。通常、指名委員会は取締役会の諮問機関であって、監査等委員会の諮問機関ではないと思われますので、任意の指名委員会の意見と監査等委員会による人事に関する形成意見との優先順位が明確ではなく、また双方に独立社外取締役が関与するとなると監査等委員の方々は監査等職務をどのように尽くせばよいのかよくわからなくなりそうです。

ひょっとすると、CEOは監査等委員会の負担を極力軽くするために任意の指名委員会を設置する、ということなのかもしれません。しかしながら、社内取締役の人事や個別報酬についての妥当性をきちんと判断するために監査等委員会を活用しようと考えている常勤の取締役監査等委員にとってみれば、実質的には監査等委員会の最大の権限である「監査等職務」を形骸化させることになる、と危惧することは間違いないところでして、やり方次第では、取締役監査等委員の皆様にとっては「会社法違反」として善管注意義務違反になる可能性も否定できないのではないでしょうか。

クックパッド社では、創業者と現経営者との間の内紛によって指名委員会の決定が事実上無視されたような結果となりました。当時の同社監査委員である社外取締役さんが、本件について監査報告で厳しく指摘しておられました。決定権限のある指名委員会等設置会社の指名委員会と、意見形成職務しかない(つまり指名権限はない)監査等委員会とでは、たしかに会社法違反とされるレベルに違いがありますが、それでも任意の指名委員会と監査等委員会の関係をきちんと整理せず、実質的に監査等委員会が意見形成職務を怠っているような事態だけは回避しなければならないと思います。

7月 14, 2016 監査等委員会設置会社 |

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